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どこぞの国の辛いもの

 久保さんとの電話が終わって、気づいた。親が買い物に行っていてお昼が食べられないじゃないかと。

 そういえば袋麺があるのを思い出した。

 一階に降りて戸棚を見る。

「あ、あった……でも」

 これは某南の国の辛いラーメンだ。ラーメンと言っているのに汁なし。

 まぁ、いっか。

 フライパンを用意して、一袋の麺が入るくらいの水を入れ、コンロの火を付ける。

「よしよし」

 そのスキに袋から麺を取り出して、それから辛さの元であるソースとかやくを取り出す。カップ麺かな。ちなみに、このかやくはできた後に入れるらしい。具材だ。

 水が沸騰してきたら、麺を入れる。箸でわしゃわしゃとほぐしていくと、麺がいい感じになってきた。

 そして、お湯を捨てる。大さじ一杯くらいのお湯を残すらしい。そして、コンロに戻して辛いソースを入れて三十秒くらい炒める。火を止めて、かやくを振りかける。

 これで完成だ。

 コースターを敷いて、フライパンを置く。

 麺はソースと混じって真っ赤で、ただならぬ辛さをかもし出している。

「お、おぉ」

 思わず、息を呑む。たまに食べる辛いラーメンとは違う辛さを感じる。すげぇな。某南の国。頭に、白い国旗と赤い国旗が浮かぶ。一瞬、どっちの国かわからなくなった。

 ま、いっか。

 椅子に腰掛け、手を合わせる。

「いただきまーす」

 箸を持ち、麺を持ち上げて口を開ける。が、すんでのところで静止する。

 あ、これヤバいやつだ。食べれないかも。いや、作ったものを無駄にしてはいけない。

 呼吸を整え、麺をすする。

「ゲホッ」

 出てきたのは、咳だった。これ、すすっちゃいけない。三十秒くらい咳をして、二口目にいく。

 辛すぎる。ほっとくと、段々辛さが増してくる。

 またすすり、辛さに悶える。

 ダメだ。辛い。食べた瞬間はなんともないが、ほっとくごとに辛くなってくる。

 また食べないと。そう言い聞かせ、また麺を口に入れる。いや、入れ続ける。休む暇はない。休んでたら、辛さが狩人のごとく襲ってくる。辛い。でも、食べなければ。

 結局僕の顔は、涙と鼻水と汗でダラダラだった。

 食べ終わる頃には、無意識で麺を放り込んでいた。

 なにか、甘いものが欲しい。冷蔵庫を開けると、牛乳があった。神。

 疾風のごときスピードでコップを取り出し、牛乳さんを注ぎ、飲み干す。

「はぁ〜〜」

 口の中が生き返った気分だ。辛さに塗れて地獄となっていた口は、牛乳という聖水を注いだことで天国になった…………と思っていた。

 天国から一変、また地獄が蘇ってきた。辛さがまた来た。鮭みたいだ。

 また牛乳を注ぎ、飲み干す。

 だが、また辛味が襲ってくる。まさに生き地獄。そうだ、甘いものを食べよう。そうすればいいのだ。また戸棚から食べ物を取り出す。あったぞ。個包装のチョコレートだ。チョコレートだ。

 二袋食べて、少し落ち着いてきた。

「ふー……」

 だが、油断は付き物。僕はうっかり口元を舐めてしまった。

 また辛さが戻ってきた。もうだめだ。運も、何も守ってくれない。

 それから、しばらく辛いものを食べられなくなった。

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