表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/72

【正史】アンチの2人②

 俺たちはトイレに行くふりをして、廊下に出る。

「結構、いい感触だったよな」

 俺が成功を喜んでいる。

「な。森川も動揺してくれて良かったよ」

「でも、あの後なんて言おうとしたんだ?」

「森川も男だし、知らずに手を出してるかもしれないってな」

 聞くからに、森川がキレそうな言葉だ。

「危なかったな。あのままだったら殴られてたかもな」

「は。無理だろ。森川だぞ。痛くもないだろ」



            *


 まだ、僕の中であの言葉が引っかかる。

『なんか、都合のいいやつって思ってそうだよな』

 どうしても、気にしてしまう。僕は、友達失格かもしれない。

「拓くん」

 久保さんが声をかける。

「ん……」

「一緒に帰ろ」

 その笑顔に、邪な気持ちはなかった。

「……うん。そうだね」

 気にしすぎなんだな。周りの噂ばかりに流されて、僕は自分の思ったことを言えない。そうはなりたくない。

「帰ろっか。久保さん」

「うん。今日ね、和泉ちゃんがね――」


            *


「昨日見たけど、なんの問題なく2人は帰ってたぞ」

 山西が急ぎながら報告してきた。

「は?昨日、あんなに吹き込んだのに?んー……」

「じゃ、ターゲット変えるか?久保に」

「んー……女子って何かと面倒なんだよな」

 女子の力は底知れない。俺たちのことがバレて生活に支障が出ると面倒だ。

「でも、見る限り、久保と仲のいい女子なんて国木田と加藤くらいしかいないぞ」

 2人ともあまり友達は多くない方の女子だ。

「んー……なら、安心か」


            *


「んー……」

 昨日の拓くんの顔が気になる。なんか、顔が暗かったしやけに考え込んでた。

 ここは、甘いものを買わないと。お財布を開くと、ジュース一本を買えるお金しか無かった。

「げ……」

 拓くんの……分だけ買お。炭酸が嫌いらしいから、いちごミルクか……

 すると、話し声が耳に入る。

「森川?あぁ、久保の隣にいるやつか。いつも一緒だよな。席も隣だわ、行きも帰りも一緒だしな

 そうかそうか。拓くんも噂されるくらい有名になったか。なぜに誇らしくなった。

 でも、その後に聞こえたのは聞きたくもない言葉だった。

「なんか、友達の一線超えてるよな」

「それな。もう、1発くらいやってるだろ」

 何を言ってるんだろ……いくら噂してもいいけど、そんな言葉を言われる筋合いはない。

「いやいや。1発どころじゃないだろ。2人とも強そうじゃん。性よ……」

 大股で2人に近づく。

「ねぇ……」

 我ながら、冷えた声だと思う。その2人は肩を振るわせて私を見る。

「勝手な噂は、放課後にしてもらえるかな」

 そう言って、その場から立ち去る。


            *


「怖い怖い……」

 山西は震えるふりをする。

「まさか……久保が反抗するなんて思わなかった」

「な……森川とは違うのか…………これ以上噂したら何されるか分かんねぇな。しゃあね。怖いけど、森川を中心にするぞ」

 山西はニヤリと笑う。

「ま、久保よりマシか。あいつ、自分のことあんまり言わないもんな……ま、前みたいに机叩かれたらやばいから、陰湿に行うぞ。仕返しのできないくらいな」


            *


 平坦なつまらない授業を受けていると、机に紙が落ちていた。

「……?」

 久保さんからかな?と思ったけど、今彼女は熟睡中。

 くしゃくしゃな紙を開くと、そこには文字が書いてあった。

 “久保はお前をなんとも思ってない”

 そんな言葉が書かれていた。キョロキョロと、辺りを見回す。

 さすがに、あからさま過ぎた。先生に注意されて、久保さんも先生に起こされた。

 なんとも思ってないか。じゃあ、なんでこんな関係が5年も続くのが聞きたい。

 きっと、この前の人たちだ。

 えっと、山西くんと宮野くんだっけ。でも、そんな仲の良かった記憶はない。なるほど。僕たちの仲が気に食わなくて手を組んだのかな。

 まぁ、久保さんに被害がないなら良いかな。

 こんな低俗な嫌がらせ、すぐに終わる。やってることを指摘すれば、ぴたりと止むはずだ。


 授業が終わって久保さんがトイレに行った隙を見て、僕は後ろの山西くんの席にクルリと後ろを向く。

「ねぇ、山西くん……」

「ん?珍しい。森川が俺に話しかけるなんて」

「うん……この手紙、君がやったの?」

 僕はさっきの授業の紙を出して見せる。

「さぁ、知らね。なんで俺に言うのかが分かんねえ。俺と森川じゃ、接点ないじゃん」

 証拠あんのかと言うかと思った。そう言えば、犯人で確定だけど。

「……んー。そうなんだけど、ほら、僕が机を叩いた時、なんか言ってたでしょ?」

「あぁ、あの時か。ごめん。話に花が咲いちゃって……」

「そっか」

 目が違う。申し訳なさなんて、微塵もないようだ。

 今度は、宮野くんに聞いてみるかと立ち上がると、久保さんがトイレから戻ってきた。

「…………」

 また、後でやろう。久保さんに心配はかけたくない。

「ねぇ、拓くん」

「ん?」

「さっきの授業寝たからさ、もう、全部がスッキリして見えるの」

「そっか。授業中に寝るのも、悪いものじゃないかもね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ