【番外】森川拓
「はい。ホームルームは以上です。号令お願いしまーす」
いつも通り、担任としての1日の仕事を果たした。
「拓くん」
明るい声が響く。
……私は、この生徒が不思議だ。
彼の名前は、森川拓。知的な印象があるし、実際成績はいいし、雑学にも詳しい。漢検準二級を取ってる辺り、頭のいい生徒。
でも、彼の友人との交流は少ない。たまに話す朝霧くんと、よく話す人といえば……久保歩果という女子生徒くらいしかいない。
目立たない天才肌といったところ。
だが、そんな男子が女の子の友達を作るだろうか。いや、もはや友達ではなく彼女なのかもしれない。
「拓くん。今日もお家来る?お姉ちゃんいないんだけど」
「ん?それじゃ、行こっかな」
家にまで上がる仲…………?果たして、付き合ってるのか?
久保さんのお姉さん……なんか、いたな。とにかく変な人だった印象しかない。でも、成績は良かった。
そうこうしていると、二人が教室から出そうだったので、そっと後ろをついてくる。
お話をしながら廊下を歩いている。
「どっか寄らない?」と森川くんが言う。
「じゃ、お腹減ってるからコンビニ行こ。またシュークリーム食べたい」
「ダイエットしてるんじゃなかったっけ」
「なんのこと?」
かぁーーー。青い春じゃなくて甘い春か……なるほど。これが、私が経験しなかった青春というやつだ。
ところで、お家に行ってナニをする気?
*
テスト返しで時間が余ったので、とりあえず二者面談をさせることにした。
真っ先に指名したのは森川くん。
「森川くんは、成績。安定してるね」
「はい……意外とできるんです」
「なるほど……ところで、久保さんと仲が良いけど、お友達なの?」
それとなく私は聞いてみることにした。
「はい。誰がなんと言おうと、お友達です」
満点な笑顔でそう言われたら、もう何もいえない。
「いいね。その気持ちは大事だね」
地味キャラとして中高過ごした私からしたら、この子は羨ましい。
「大人になると会いたくても会えなくなるんだから、今のうちにいっぱい楽しんでね」
「はい……」
そう言って、私は彼との二者面談を終わらせた。
*
「もう付き合っちゃえよ!」
「酒ツバかけないでよ……あと、顔やめて。ちょっと似てるけどさ」
今夜は、アニメーターだか何だかの友達と飲んでいる。
「なんで付き合ってないわけ?」
「幼馴染なんでしょ?なら、お互いの良いところも悪いところも……て、聞いてる?おーい、寝るなー」




