鎮静
一方の久保家。
「どうして歩果になすりつけたの!怒られたくないからでしょ?」
歩果の家出で、若葉は罪を認めた。若葉にも罪の意識はあったようだ。
「う、はい……」
「責任もって明日、歩果が帰ってきたら謝りなさい。私たちの処分は歩果に決めてもらいます」
今すぐにしなかったのは、深夜なのと歩果以外に拓の家を知っているものがいなかったから。
また、着替えやスマホも持っておらず連絡もできなかったから。
*
お風呂に上がった僕は、久保さんと部屋で話している。
「なんでお姉ちゃんは疑われなかったんだろ」
「そんなものだよ。先入観みたいなのがあったんじゃないの?お姉さんは嘘をつくのはたまにだったから、いつの間にか“若葉は嘘をつかない”っていう感じが生まれたんでしょ」
「……なるほど。でもさ、理不尽だよ」
「うん。そうだね」
僕は頷いた。
「明日は帰りなよ。多分、出てった久保さんを見れば、お姉さんも反省してるだろうから」
「……だといいね」
久保さんはお姉さんを、少し信用していなかった。
「さて、長話だと時間があっという間だね。そろそろ寝てね」
そう言うと、久保さんは僕の部屋を出て行った。
*
私は敷いておいた布団に転がる。
「…………」
お姉ちゃんが、ほらを吹くなんて今までが初めてだった。
勢いで出て行っちゃったけど、拓くんもお母さんも優しくてよかったかもな。
後でお礼しないと……
目を開けると、いつの間にか朝になっていた。え、何時?
部屋を見回すと、壁に時計がかけられていた。朝の7時だった。
学校の習慣がここで来るとは思わなかった。今日休日だよ。
「…………あぁ」
そっか。今日が休日だからか。だから、拓くんの家に避難したのかも。
部屋を出て、そっと拓くんの部屋の扉を開ける。
まだ彼は寝ていた。
二度寝はするわけがない。リビングに出ると、拓くんのお母さんがいた。
「おはようございます」
「や、おはよう」
穏やかな笑顔で返された。
「どうするの?ここから」
「……さすがに朝食をいただくのは……ここから私の家は近いですし、帰ります」
「まだ朝は早いのに?」
「いえ、多分。両親は起きてます。早起きなんです。私以外」
少し、冗談よりの本当の話を混ぜた。
「私には、こうなった理由はわからないけど」
少し前置きして言った。
「仲直りできるといいね」
少し、言葉が詰まった。
「……はい。きっとできます」
「では、お邪魔しました」
私は靴を履いて、玄関に立つ。
「拓はまだ起きてないけど……」
「多分、彼は結果を聞ければいいと思います」
「……あの時は見送ったんだけどね」
「ん?」
「いや。こっちの話」
「はい。お邪魔しました」
もう一度言って私は拓くんの家を出た。
*
帰ってから、早速両親から謝られて、お姉ちゃんも謝っていた。
「で、私たちをどうしたい?歩果」
お母さんが聞いてきた。
「んー。お姉ちゃんは別として。二人はお姉ちゃんは嘘をつかないって思ってるんでしょ?」
「…………うん」
「拓くんが言ってた。それは、先入観だって」
「……?」
少し、ズレたこと言っちゃったかな?
「だから、二人は謝るだけでいいの」
「……そう。ごめんね」
「うん。さ、お姉ちゃん」
「…………」
「今ね、化粧水と乳液とシャンプーとリンスがないんだ」
「詰め替えね」
お姉ちゃんはビシッと親指を立てた。




