ケンカ
なんでもない日の放課後が、なんでもない日じゃなくなった話。
「ねぇ久保さん。ジュース飲み過ぎだってこの前も言ったよね?」
「え、うん。言ったよ?」
「じゃあ、なんで今日はコーラなんて飲んでるの?飲み過ぎだよ。昨日もおとといも」
その指摘にイラっと来たのか、久保さんは言った。
「私が何を買おうが勝手でしょ?」
「そうだけどさ。でも、体のこととか考えようよ。人間の体ってそんな万能じゃないし」
「なんで人類規模に持ってくるの?意味がわからない」
「意味がわからないって……あのねぇ、要するに」
「ジュースを控えろってこと?」
ガタリと久保さんが立ち上がる。
「そうだね…………できれば、控えてほしい」
「…………拓くんに指図される必要ないんだけど」
久保さんのイライラが上がってるのか、言葉が強くなっている。
「私は自分で買ってる」
「でも、飲み過ぎたよ」
「そんなの気にしてたら、何もかもが嫌になっちゃう」
「それはわかるけど、ちょうどいいってあるでしょ?取りすぎも取らなすぎもダメでしょ?」
「…………私のことを信頼してるのはわかったよ」
「…………」
「でも、ありがた迷惑」
しばらく、言葉が詰まる。
「あ、ありがた迷惑って……そんなことは」
「じゃあ言うよ。ウザい」
僕に、ぐさっと刺さったその言葉。
「え、ウザいって……」
僕の言葉で、言葉が強くなったのは認める。でも……
「い、言っていいことと悪いことがあるでしょ?」
「このくらい言わないとダメってことだよ」
「…………」
「じゃあね」
そう言って教室を出ていく久保さん。
僕は無気力になって、久保さんの隣の椅子に座る。
「え、大丈夫?森川くん」
久保さんとの言い合いを真後ろで見ていた国木田さんが話しかけてきた。
「ハ。久保さんが毎回ケンカを切ってくるのに、今回は僕だったね」
思えば、僕が喧嘩の発端になったのは初めてだ。
「ねぇ、和泉さん。僕はどうすればよかったと思う?」
「んー。クーちゃんって、意外と自分を持ってるんだよ。誰かに指図をされるのは少し嫌いかもね」
「……そうだよね。子供じゃないよね」
僕は机に肘をつく。
「ダメだよなー。子供みたいに心配しちゃって……もう、高校生なんだよな」
「明日にも謝りな。きっと、クーちゃんは許してくれるよ」




