甘えたい証拠
拓くんはいつの間にか私の家のソファで寝ていた。
「…………」
かれこれ、2時間。そんなに今日は疲れてなかったはず。体育もなかったし。
と言うか、寝相がなんか変。背中と足を丸めて、足の間に手を挟んでいる。
どうやって起こせばいいんだろう。というか、地味に寝顔がかわいい。
適当にテレビでニュースを付けてみる。でも、起きそうにはない。だから、すぐに消した。
「ん?歩果。これはなんだ?」
お姉ちゃんが現れて、拓くんのほっぺたをツンツンする。
「ダメだな。起きないな。何でこんなに起きないんだー?歩果。まさか、なんか疲れさせることやったんじゃないの?」
「なにそれ。ゲームしただけだよ」
「はーん。尻か腰に爪の痕ない?」
「んなもんないから安心してよ」
お姉ちゃんはしばらく頷くと、片手を高く掲げる。
「……?」
不思議に思っていると、お姉ちゃんは何を思ったのか、拓くんのお尻を高く掲げた手で思いっきり叩いた。
スパァン
無機質な音が響く。
「ちょ……お姉ちゃん……!」
それでも、拓くんは起きる素振りを見せない。圧倒的な不思議。
「なぜ起きないんだ?おかしいな……」
お姉ちゃんは不思議そうに言う。そりゃ、こっちもそう思ってるよ。さすがは姉妹なのか、考えてることは同じらしい。
「おかしいな。森川拓は、こう言う節度は守るはずなのにな……」
お姉ちゃんがつぶやく。
「まさか、この家に安心感を覚えたか!」
ピーンとお姉ちゃんが閃いたかのように言う。
「家に安心感って……まぁ、何回か来てるけどね……それにしても、全然お姉ちゃん邪魔しないよね」
「あぁ、しないぞ。なんせ、これは2人の時間だからな」
「……なにそれ」
少し私は笑った。
「さて、起こさないとね。門限はないらしいけど……」
私は拓くんの肩を掴み、グラグラ揺らす。
「うぇ……ん?」
お姉ちゃんに容赦なくお尻を叩かれたのに、これで起きるのは少しどうかしている。
「拓くん。もう6時だよ」
「えー?もうそんな時間ん」
思いっきり起き上がった拓くんの頭が、私の頭とぶつかりそうになる。あと、少し寝ぼけてる。
「わ、お姉さん……」
「お姉ちゃん。姿勢」
お姉ちゃんは屈んだ姿勢のため、胸が丸見えだった。
「あぁ、ごめんごめん」
寝ぼけてたから救われたかな……
「すいません。うっかり寝ちゃって」
「おう、無理すんなよー」
お姉ちゃんはニヤニヤと笑いながら言った。
「どうせだ。今日はここで食べていくと良い。帰っても誰もいないんだろ?だったら、若葉ちゃんが腕を振るうぞ」
「でも……」
食い下がる拓くんに、お姉ちゃんは少し、昔と同じ目をする。
「たまには甘えろ。人にな」
拓くんは、少し複雑そうな顔をする。
「……では、お言葉に甘えて。母にはメールしときます」




