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久保さんの忘れ物

「あ!教科書忘れた!」

「え?また?」

 大きな声が僕の耳に入ってくる。やれやれ。何で忘れるの?

「勉強したの?持って帰ったけど」

「してない」

 ここだけは取りに帰るスピードより速い。音速。

「じゃあ、早く取ってきなよ。まだ家出て2分だから」

「そうだね」

 回れ右をする久保さん。

「ダッシュ!」

「はい」

 走りに移行して、曲がり角に消えていった。

 やれやれ。月に3回は忘れるんだから。今日が1回目。あと2回は忘れるのか。

 大体、忘れる物は決まってる。消しゴム、筆箱、教科書。稀にお弁当。その癖、コンタクトは……いや、あれは習慣だからか。

 そして、久保さんがダッシュで戻ってきた。

「あった?」

「あった。ごめんね」

「よろしい。じゃ、行こっか」


            *


「ねぇ、卓くん」

「ん、どうしたの?」

「ごめん。お弁当忘れちゃって売店行くからお金貸してくれない?」

「え?自分の……まさか」

「そ。忘れちゃったの」

「今日は忘れ物が多いね」

 ロッカーを開けて財布を取り出して500円を渡す。

「カツ丼とコロッケが買えるから」

「わかった」

 小走りで久保さんは売店へと向かっていった。やれやれ。財布を忘れるなんて前代未聞すぎる。しかも教科書、財布、お弁当の忘れ物3冠王とは。

 そろそろ久保さん用の小銭入れを作った方がいいのかな。

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