拝啓
「ねぇ、美涼ちゃんからお手紙が来たんだけど」
久保さんは学校に関わらず、その手紙を見せる。
「なんで僕に見せるの?美涼ちゃん?WATS?」
「私の……うーん。ややこしいんだけど、私のお爺ちゃんの弟の娘のお姉ちゃんの子供。かわいい子」
「ふーん……」
「想像しないでね」
「なにを?」
「別に」
久保さんはしばらく黙ってから話し始める。
「それでね、どうやって返事をするかだよ」
久保さんは僕に手紙を渡す。
「どれどれー……」
『拝啓
歩果ちゃん。まだ寒いけど、元気にしててね。風邪を引かないように。寒がりだったからね。おじいちゃんの法事でまた会えるかもしれないね。その時はよろしくね。
かしこ』
「なにこれ……いい子すぎない?久保さんとは違う」
「お姉ちゃんって言ってよ。で、これをどう書けばいいかってこと」
「お返事?」
「そ」
久保さんは便箋を取り出す。コンビニで買ったらしい。
「まず、初めは“拝啓”それから、“敬具”か“かしこ”って言う手もあるね。かしこは女性が使える締めだね」
ある程度書いて、久保さんは僕を見る。
「どうしよ。『お友達がいる』って書いちゃったから、証拠のために写真撮らせて」
「久保さんも映ってくれると嬉しいかな?」
「えー……」
久保さんと僕は教室の端に行き、カメラに視線を合わせる。
そして、シャッターが押される。
「こんな感じでいいかな?」
「うん、いいと思うよ。これで写真をコピーすればいいよ」
「分かった」
「じゃ、コピーして一緒に入れる」
そして、久保さんは何かを思いついたかのように言う。
「卓くんは、写真に写るのが平気なの?」
「……ん?そうだよ。平気だけどね。でも、一人で映るのはちょっと嫌かな」
「ふーん……」
久保さんは頷く。
「どうしたの?」
「いや、なんか卓くんってあんまり恥じらいが無いんだね」
その言葉に僕は少し驚く。
「まぁ、そうだね。意外と話せるけどね……」
「わ、隠れ陽キャ」
「あのねぇ……」
*
数日後ーー美涼宅
「お、歩果ちゃんからの手紙だ……」
封を開け、中身を確認する。
「えー、歩果ちゃんメガネじゃなくなったんだ。変わってるし、お友達もいい子そう」




