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卓くんのお母さん

 なんだかんだ言って、卓くんのお家に腰を据えてしまった。

 猫アレルギーの一件から1時間半。コップ一杯のジュースでねばってお話をしている。それから、卓くんのことについて聞いた。

 親は仕事で帰りが少し遅いこと

 私と同じ高校に行きたいから、必死に進学先を推理したこと。

「え?卓くんって変態?」

「違うよ。久保さんだって僕がいれば安心はしたでしょ?」

「……うん、そうだね。意外と心強かった」

「じゃあ、僕の話はたくさんしたから、今度は久保さんのお話も聞こうかな」

「え?私、話せることなんてないよ」

「そう?叩けば埃が出るタイプだと思うけど?」

 その根拠はどこから出てくるのかな?

 すると、家の鍵が開く音がする。

「あれ?」

 卓くんは不思議がる。

「もしかして、お母さん?」

「そ。上がるまでまだ時間はあるはずなのに……早まったのかな?」

 すると、リビングの扉を開けて卓くんの母親らしき女性が入ってくる。

「あれ?卓……部屋にいるはずなのに……しかも、制服のまま……ん?」

 卓くんのお母さんは私を見る。

「お、お邪魔してます。久保歩果です……」

「どうして、ここに?卓が家に女の子……友達を連れてくるのは珍しいから。つまり、何かの理由があるってことね」

 お母さんは息子である卓くんを見る。でも、卓くんが私の話をしてないなんてあり得ない。多分、初めて会いましたって言う顔してる。

「で、片方はブレザー脱いでるけど……何かしてる最中だった?」

 お母さんの言葉に、卓くんが頭をかきながら言う。

「勝手な想像しないでよ。久保さん、猫アレルギーっぽいから、毛がついてると危ないしコロコロしたの。今は喋ってる最中だった」

「なるほど……じゃ、ついでに何か軽いものでも……」

 私は慌ててソファーから立ち上がる。

「あぁ、いえ。大丈夫です。そろそろ、おいとまするので」

「そう……」

 お母さんは少し残念そうだった。


            *


 僕とママさんで久保さんを見送った。一応、久保さんには「ネコに会っても撫でないでね」とは言っておいた。あれほど強く言っちゃったんだから、大丈夫だとは思うけど。

「……卓」

 ママさんが名前を呼ぶ。

「ん?」

「あの子が、久保さん……」

「そうだよ。本人も名前言ってたでしょ?で、なんで早く帰ってきたの?」

「シフトの時間を1時間間違えてたから」

「なるほど……」

 無理矢理話題を変えた

「でも、意外と可愛い子……」

「意外と?」

「あ、ごめん。案外ね」

 無意識に、ママさんを睨みつけてしまったらしい。

「4年もすると、人って変わっちゃうね。前より卓は明るくなったし、久保さんも、メガネを掛けてたんでしょ?」

「……なんで知ってんの?」

「え?言ってなかったけ?小学生の時、『久保さんが勉強を教えてくれた』って、私、『どんな子?』って聞いたでしょ?」

「ゴメン。全然覚えてない」

「でも、”リア充“って言うの?そう言うの」

「若者言葉はもうちょっと早いね」

 僕は時代が少し遅れている母を置き去りにしてリビングに戻っていった。

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