【過去回】久保さんの成長
私は家に帰ると、メガネを外した。
「…………」
『誇らしくしてていいと思うよ。謙遜ばっかりだと自信が持てなくなるよ』
私はその言葉をひたすら思い出していた。
美涼ちゃん。昔は「美涼ちゃんみたいになりたい」って思ってたのに今はまるで嫉妬の対象だ。
美涼ちゃん……
いや、彼女は彼女だから。不意に、そんな考えが出てきた。
私は夕方になって部活から帰ってきたお姉ちゃんを捕まえた。まだこの頃のお姉ちゃんは真面目だった。
「お姉ちゃん」
「ん?どうしたの歩果」
お姉ちゃんは少し疲れていた。
「メガネからコンタクトにしたいんだけど、お姉ちゃん持ってたよね?」
「あぁ、うん。持ってるよ。でも、どうしたの?急に」
「なんか、自分を変えたくて」
その言葉にお姉ちゃんは驚いていた。
「ふーん。なんか、振り向かせたい人でもできた?」
「……いや、そういうんじゃないけど」
「そ」
お姉ちゃんはリビングから自分の部屋へ行った。
「コンタクト持ってきたよ。付けてみる?」
「うん。付けてみる」
「じゃ、付け方教えてあげるから」
お姉ちゃんはカバンから折りたたみ式の鏡を取り出す。
「ほい。できた……おー」
お姉ちゃんは私の顔を見て驚いていた。
「メガネ一個でこんなに印象変わるんだね。なんか、地味目からチャラ目になった」
「チャラくはなりたくないんだけど……」
「まぁ、でも。コンタクトをしただけじゃダメだね。メガネから離れるなら、人の注目が行くところは変わるからね。顔なんて、小さなニキビがいっぱいあるよ。着いてきて。化粧水とニキビ隠しのものとか買うから」
「え、うん」
*
お姉ちゃんに連れてこられたのは、近くの薬局だった。
「化粧水は……あれ、歩果ってなに使ってる?」
「え」
化粧水の名前を言うと、お姉ちゃんは呆れたように言う。
「あのねぇ、自分の肌に合うものを選ばなきゃ。
『どれも一緒』なんて思っちゃダメ」
お姉ちゃんはじぶんが使っているのと、同じメーカーの違う種類の化粧水と乳液を買った。あと、お菓子も。
そして、コンシーラーも買ってもらった。
「……お姉ちゃん。私のお小遣いで返そっか?」」
私は帰り際にお姉ちゃんに言う。
「ん?あぁ、気にしないでよ。これも歩果をアップデートするためだから」
誇らしげにお姉ちゃんは言った。
「お姉ちゃんって不器用だよね。『可愛い妹の為』とか言わないんだね。なんか、遠回し」
「…………」
お姉ちゃんは私の頭を撫でる。
「可愛い妹って言われるようにコンシーラーもコンタクトも極めるべきだね。そうすれ可愛いい妹として認めてあげるよ。あと、水も飲みなさいよ」
「う……」
*
コンタクトに慣れた頃、森川くんが恥ずかしそうに私に話しかけてきた。
「久保さん……なにかあったの?」
「なにが?」
「いや、メガネがしばらく外してるから……どうしたの?メガネ壊しちゃったの?」
「……森川くんのおかげだけど、内緒」
「ん?」
不思議そうに首をかしげる森川くん。
「そうだ。久保さん」
森川くんはわざとらしく何かを思い出したように言う。
「ん?」
「あと二ヶ月後、修学旅行だったよね」
「うん……」
「だから、一緒の班にならない?」
「あれ?でも、次の席替えの班が修学旅行の班じゃなかったっけ?」
「え?そうだった?」
その後、席替えで森川くんと隣の席になった。もちろん、修学旅行は彼と同じ班だった。その修学旅行は彼と仲を深められてとても楽しかった。




