二つの駆け引き
ある休日の昼下がり――
僕は久保さんの部屋で、トランプをやっている。きっかけは単純。久保さんから「机の引き出しの奥にトランプがあったからやらない?」との電話をもらい、僕は彼女の家に行くことにした。
それから、部屋に入ってトランプをしている。でも、二人だけ。
山ほどあった手札はいつの間にか、あと三枚になった。久保さんはあと一枚で、僕は二枚だった。もちろん、僕の片方の手札にはジョーカーがある。そして、久保さんはあと一枚。つまり、僕が持っている片方のカードを取れば、久保さんか僕は、上がれるのだ。
久保さんはジョーカーを取る。内心、「しめしめ」とニヤニヤする。久保さんはムッと不服な顔をする。
次は僕の番だ。スッと手を伸ばす。すると、彼女はカードを持っている手を後ろに回し、回すような手つきでトランプをシャッフルする。なるほど。数字のカードを取らせない気か。
そして、シャッフルが終わると再度手を伸ばす。右のカードを取って見ると、ジョーカーだった。思わず、ため息がこぼれる。ダメだ。
僕も久保さんと同じく、両手を後ろに回してシャッフルする。でも、僕の方が一枚上手だ。シャッフルすると見せかけて実はシャッフルをしていない。完璧な作戦だ。ちなみに、カードは右にある。
笑いを押し殺していると、久保さんは手を伸ばす。だが、取ったのはーー左と見せかけて右だった。
「え……ちょ」
久保さんはパサりと数字のカードを山のように積もっている捨てたカードに重ねる。
「やったー!」
まるで、子供のように歓喜している。
「えー、ちょっとー……」
無気力に言って、トホホとする。
そして、僕は指を一本立てる。
「ねぇ、もう一回やらない?」




