久保さんのお姉さん②
近場のドラッグストアーー
「……あ」
「ん?お」
そこには、久保さんのお姉さんがいた。
「やぁやぁ。こんな夕焼けにどうしたの?卓くん」
名前言ってないんだけど。まさか、久保さんが口を滑らせた?
「最近、風邪をひいたので念のために風邪薬を買いに行きました。この前、買い忘れてたので」
僕はそう言いながら、店内を見回す。
「あの、久保さん……いや……」
「ん?歩果?今日はいないよ。今日は私だけで来た。化粧水を切らしてしまってね」
変なニコニコ顔で返すお姉さん。
「でもさ、病院の薬と市販薬って何が違うのかな?」
「はい?お姉さん。それ、知ってて言ってるでしょ?」
「お、鋭いね。じゃ、一応どうぞ」
「市販薬は、病院でもらう薬の成分の内容量とても少なくしているものなんですよね?」
「そう。さすがは雑学王」
「雑学王じゃないです。僕より詳しい人はたくさんいます」
「謙遜だね」
その言葉は、僕は久保さんと初めて話した日に言ったものだ。
「ところで、卓くんはなんの風邪薬を飲むのかな?」
「リリです。熱喉鼻に効きますよ」
「CMでそんなのやってるよね」
風邪薬だけ買って帰ろうとしたのに、お姉さんの方へ行ってしまう。
「お、何か用?」
「いえ、何を買ってるのかなと」
「化粧水を買ったから、あとはお菓子を買う。私も歩果お甘党なんだ。どれ、一つ買おうか?」
「大丈夫です」
「賄賂は失敗したか」
ニヤニヤ顔のお姉さん。だから、なぜいつもニヤニヤしてるんだ。んー。言った方がいっか。
「あの……」
「ん?」
「久保さん……妹さんから聞きました。あなたのこと……」
お姉さんは怒らなかった。ただ、じっと僕を見ていた。
「…………」
「随分、辛かったですよね」
「……そうだね。思えば、あの時の私は真面目すぎた。もちろん、真面目だったから良かったこともあったよ。でも、この性格になるとね。真面目にやってた自分がね、ちょっと……バカバカしくなるんだよね」
彼女の言葉には偽りが無かった。
「下手に真面目で、思いさえ伝えられなかったのにね」
「…………今のままがいいと思いますよ」
「お、その回答をするのは珍しいね」
いつもの、ニコニコな顔でお姉さんは笑った。
「ところで、私の名前を聞くかい?」
「じゃあ、せっかくなので」
「私はね、若葉っていうの。久保若葉」
「……かわいい名前ですね」
その言葉に、お姉さんはなにかを思い出したかのように目を見開く。
「鈴木くん…………あ、いや……」
「ん?」
「まぁ、いいや。アイス買おうか?」
「今は冬ですよ。食べたら凍死ですよ」
「お、突っ込むようになったね」
ニコニコな顔は、作り物じゃなくなっていた。




