期待の決戦
体育のドッジボール――
僕と久保さんは運がいいのか悪いのか、残ってしまった。
しかも、敵同士で。
周りのクラスメイトもざわついている。
「森川と久保ってどっちが強いんだろうな」
「でも、身体測定の時は同じチームだったよな。珍しい瞬間かも」
なんか、みんな楽しんでない?
「ねぇ拓くん」
「ん……」
「女の子だからって舐めないでよ。私だって、人並みに投げる力はあるよ」
久保さんは転がってきたボールを持つと、すぐさま僕に向かって投げる。
もちろん、僕にキャッチできる力はないからそのまま避ける。
当然、久保さんチームの外野に回ってボールが投げられる。それでも僕は避ける。
ボールを久保さんはキャッチし損ねて、そのまま僕のチームの外野に。僕にボールがパスされる。
せっかくだから投げるか。
思いっきり投げると、久保さんにかわされた。でも、ボールは僕のチームの外野に回った。
男子がボールを拾う。
「手加減しないで当てて!」
僕の声で、男子は久保さんにボールを投げる。
久保さんはギリギリでかわす。
「あぁ〜〜スリルだね〜」
そう言って小さく笑う久保さん。
そして、ワンバウンドしたボールを久保さんは陣地の線ギリギリで掴む。
すると、高く山なりに投げた。
外野に回す気か。
振り返ると、外野の人が投げたボールが少しだけ下に落ちてきた。足元を狙っていることはわかったから、横に飛んで回避する。
すると、ワンバウンドしたボールを久保さんがキャッチして投げてきた。
「やべっ」
ボールがふわりと浮いた。
久保さん。まさか、すっぽ抜けた?
僕はすかさずキャッチする。コツは、両手と体で抱き寄せるようにすればいい。
足を狙って投げると、久保さんは避けた拍子にバランスを崩しそうになる。
すかさず、外野が投げてくる。
久保さんは避けて、体制も立て直した。
完全回復しちゃったけど、少しだけ鼻息が荒い。意外と疲れてるんだな。
僕が取り損ねたボールを、久保さんチームの外野が投げてくる。
もちろん避けた。
でも、避けると久保さんが投げてくる。
「消えろー!」
物騒だなー。
速さはまぁまぁ。
キャッチできる。またあの、"抱き寄せ法"でキャッチしようとする。
「あ……」
こっちもすっぽ抜けて、上に跳ねた。
キャッチしないとアウトに……
その時だった。久保さんが手を伸ばしてボールをキャッチして、思いっきり僕に当てた。
陣地の線の近くに来たのがダメだった……
真っ暗になる視界で、そう思った。
「ハハハ。私の反射神経をなめないでね」
目を開けると、久保さんが立っていた。
「それにしても、僕に『消えろ』はないんじゃない?」
「え?いやいや。このゲームからって意味ね」
「えー……でも、凄かったね」
「拓くんは避けすぎ。もっと投げなよ」
「いや、僕は避け専だから」
「なにそれ」




