【過去作リメイク】低気圧
最近、曇りの日が多い。
特に今日に関しては……
「だるい、頭痛い、゛あ゛あ゛あ〜〜」
久保さんが低気圧で体調を崩している。
「拓くん。面白い話して」
「なにこの無茶振り。あー、そうだねー。ラプトルって、ラプラスを狙うんだって。同じ“ラプ”だから」
「そもそも、ラプトルってなに。ラプラスは分かるよ。ポ○モンでしょ。私が頭使うから、ダメ、却下。懲役4年」
「重くない?」
そうしていると、和泉さんが机に伏せている久保さんに近づく。
「クーちゃん。体調悪いの?」
「低気圧が続くとこうなるの」
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。いつもの調子じゃない。あー。寒気も出てきた」
「それ風邪じゃない?」
「違う。感染源はいないから」
さりげなく、僕を感染源呼ばわりしてる。もう、5日くらい前だよ。
「クーちゃん、授業受けれる?」
「授業……授業」
久保さんはガッと起き上がって、僕と和泉さんの肩を掴んで、グラグラと揺らす。
「私に頭を使わせるなーー‼︎」
「久保さん。落ち着いて」
僕がなだめるけど、久保さんは止まらない。
「落ち着けない」
「どうすればいいんだろう」
久保さんは疲れたのか、再び席について大きくため息をつく。
「あああーー。やる気ねぇなちくしょー」
「森川くん。クーちゃんはどうなの?」
なんか和泉さん、僕を医者だと思ってない?
「重症だね。機嫌もちょっぴり悪いからそっとしておこう」
授業が終わって――
「おいチビ」
「10センチも身長差があるわけじゃないでしょ。あと久保さん。体調悪いと口が悪くなるタチだね」
一応言っておくと、3センチくらいしか差はない。うん、僕が傷つくから触れないでおこう。
「お腹も痛いしぃ……生理の薬飲み忘れた」
「保健室行った方が良いんじゃない?」
「やだ。今日のお弁当は美味しそうだから……珍しくお姉ちゃんが作ったやつだから。おいしいから……」
これは、バグってるとかのレベルじゃない。
「じゃあ、保健室に行って少しでも体調を良くしないと。いっぱい食べたいでしょ?」
「うぅ……ほんとだぁ」
今は4時間目前の休み時間。1時間くらいは寝れるかな?
「じゃあ、いてくる……先生には言っといてね」
そう言って久保さんは教室から出て行った。すごいフラフラしてた。
「えー……大丈夫かな」
僕は心配になって着いていく。
「久保さん。大丈夫?」
「あーうん。大丈夫……気分が悪いだけ」
「大丈夫じゃないんだけと」
「でも、保健室は一階だから。ここは3階でしょ?」
「2階なら安心できたけど、3階は少し安心できないよ」
「えー、いいよー着いてこなくてもー」
「いや、でも」
「いいから」
結局、押しに負けて久保さんが階段を降りて行った。
「んーー……」
イライラして、頭をかく。無理矢理にでも着いて行った方が良かったのかなー。でも、さすがに過保護かー。
でも……
「は〜〜……」
せめて、久保さんが無事に保健室に着けるようには祈っておいた。
それから、授業とは別の先生が入ってきて、久保さんのカバンを持って教室を出て行った。
薄々僕は、彼女の早退を感じた。
*
家に帰って、僕はベッドに転がる。
頭がモヤモヤする。あの時、一緒についてきて「大丈夫?」の一言でも言った方が良かったのかな。
うーん。
「過ぎたことを悔やんでも」
携帯の着信音が鳴って、僕の体が震える。音、大きすぎない?
名前を見ると、久保さんだった。
「もしもし……」
『拓くん。久しぶり』
「6時間くらいで久しぶりか……」
声は元気そうだった。
「体調は大丈夫なの?早退したっぽいけど」
『あぁうん。低気圧もそうだけど、風邪も引いてたみたい」
「風邪……やっぱり、僕も一緒に行った方が良かったのかな」
『え?大丈夫だよ。あの後、ちゃんと保健室に着いたよ。今は風邪薬飲んでだいぶ楽になったよ。』
「……そっか」
『あぁそうそう。今の私さ、お姉ちゃんに好き勝手されてる。ネコのカチューシャ付けられたり、私の目の前でゼリー食べたり』
「あぁ……若葉さんらしいね」
簡単にその様子が想像できる。多分、久保さんイライラしてるだろうな。
『あとさー。お姉ちゃんのお弁当さ、忘れてたみたい。早退しなかったら、拓くんを殴ってたかも』
「僕の扱い酷くない?」
悪態を吐きつつ、少し安心した。
「久保さん。寝ないでいいの?学校に行きたいなら早く寝て治さないと」
『そうだね。じゃあ、お風呂入ってくる。元気なうちに』
「うん。おやす」
電話が切れた。
「……はぁ。しょうがないなー」
全部が消えたわけじゃないけど、少しだけ心が軽くなった気がした。




