言葉づかい
「拓くんって口悪くないよな」
「え、え……どうしたの急に」
帰り道でアイスを食べながら久保さんは言ってきた。
「怒ってても敬語か、いつもの調子だし。私と喧嘩しても悪口言わないじゃん。なんか、こう……男子校生なら『死ね』とか言うのに」
「言う方がおかしいんだよ。作者だって一回も言ってないし」
確かに、僕は口は悪くない。別に育ちがいいわけではない。ただ、ふざけられるような友達が久保さん以外にいないだけ。
昔は……父親のせいで勉強ばっかりで友達が離れて行ってたから。
ふざけ口を言ったりする人はいなかった。
「ふーん。拓くんって荒れたりしなかったよね」
「ま、そのせいで思ったことを引っ込める癖ができちゃったけど」
「おーう。じゃあ、私に何か言ってみてよ」
久保さんは自分を指さして言う。
「えー……気が引けるな」
「いいからいいから」
僕は一つ咳払いをする。
「だらしない」
「ほうほう。その程度で私は怯まないよ。お姉ちゃんにも言われてるし」
「大食らいのくせに胸は育たないって」
「…………」
久保さんは無言になった。
「え、あ、久保さん……ごめん」
「見事に踏んだね地雷」
「ホントごめん」
「そうかそうか。つまり君はそんなやつなんだな」
「久保・エーミールは引っ込んでよ」
久保さんは僕の頭に1発、チョップをしてみせる。
「拓くんは悪口で人の地雷を踏む才能があるのかも」
「あってたまるか」




