↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
102/122

ミニ喧嘩

「久保さん」

「ふしーーー」

 絶賛、三毛ネコのぬいぐるみを震わせて威嚇されている。でも、顔がグデーンってしてるからあまり怖くはないな。

 時は数分前に遡る。

 若葉さんにもらったお菓子を僕が食べちゃったから。いや、正確には久保さんが食べたかったお菓子を、僕が食べちゃったから。

 ちなみに、何やら高そうなお菓子。

 事前に「これ私が食べたいから食べないで」って言われてたのに……疲れてたのかな?いや、それは免罪符にすらならないか。

 で、食べちゃった。

「え、拓くん……それ、私が食べたいって言ったよね」

「え、あ、ごめん」

 そうして、久保さんはベッドに座り込んじゃった。


「久保さん」

「しゃーー」

 シマエナガのぬいぐるみで殺意マックスの威嚇。だから、威圧感がないんだって。

 これだと、今までのプロセスも通じないか。

「……食べちゃったのは」

「しゃーー」

「ごめんね」

「しゃー」

「謝っても、戻ってこないのは知ってる」

「しゃーー」

「だから、謝ることしかできない」

「ふしーーー、わあああ」

 そう叫ぶように、シマエナガのぬいぐるみを投げる久保さん。

 僕は少し体を倒して、ぬいぐるみをキャッチする。

「食べたかったの。ちゃんと言ったよね。なんで拓くんは食べちゃうの?」

「ごめん……記憶が抜けちゃって」

「なにそれ」

 久保さんはクマのぬいぐるみを掴む。

「ちょっと、ぬいぐるみがかわいそうだから」

「言える立場か」

 クマは投げられて、僕の顔に当たる。

 すると、ガチャリとドアが開く。

「私の貰い物は美味いかー……あ?何やってんだお前ら」

 入ってきた若葉さんは、ぬいぐるみを抱えている僕を見る。

「なんだ拓。歩果よりぬいぐるみが好きになったか?」

「違いますよ…………僕が久保さんが食べたかった味のお菓子を食べちゃって……」

「はーん。ま、食べ物の恨みは怖いよな。若菜のお菓子がこんな争いを生むとはな」

「え?」

「いいや。私が入る話じゃない。お前らで話しあえ」

 そう言って若葉さんは久保さんの部屋を出て行った。

「……ねぇ久保さん」

「しゃーーー」

 威嚇……再燃しちゃった。

「続きだけど、記憶が抜けてたのは本当にごめん……」

「ぐるるるるる」

「それで……んー」

 うまく言葉が出てこない。

「拓くんも言うんでしょ?『まだいっぱいあるから』って。お姉ちゃんも昔、そうだった。私が食べたかったポテチ、お姉ちゃんが食べてた。でも『まだ売ってるから。買うから』って。そう言う問題じゃないの」

 今度は三毛ネコのぬいぐるみを投げそうだったけど、踏みとどまった。

「…………」

 後で聞いたけど、三毛ネコのぬいぐるみは猫アレルギーの自分に、若葉さんがあげたものだったらしい。

「久保さん、ごめんね。何回も言うけど、謝ったってお菓子が戻ってくるわけじゃないし、久保さんも許してくれない」

「…………」

「なら、僕に何か出来ることはない?食べたものは戻らないけど、僕に出来ることはある」

「…………明日の帰り、アイス買って」

「うん」

「許す」

 久保さんはベッドから降りて、僕の隣に来てくれたと思ったけど、ぬいぐるみを回収しただけだった。

 もしかして、アイス買ったら許してくれるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。