久保さんのお姉さん
この古着屋の中には、服や状態が良くて安いものが多い。古本屋と同じで、自由に売値を決められるのかな?
「……ん?」
いいのがないかと服を片手にウロウロしていると、見慣れた人を見つけた。
「あ、久保さんだ」
声かけ気味に言ったら、久保さんと目があった。久しぶりに、メガネをかけた姿を見た気がする。
「あ……」
僕が近づくと、久保さんは顔を背けた。
「ちょっと今お姉ちゃんと来てるから……」
「お姉ちゃん。何者なの?」
「変人女」
「いたずらっ子って言おうか」
「この前買ったドーナツを食べられた。私のなのに。そこにあるから食べたって。脳内変換どうなってるんだか」
すると、僕らの目の前に僕らとは頭ひとつ背が高い女性がいた。
「妹よ。これどう?」
灰色のパーカーを持っている。おそらく、久保さんのお姉さんか。多分、2つ離れてる。色々違うし。
「ん?」
お姉さんは一目僕を見る。
「……怒ると怖そう」
「え?」
「そうだよ。怖いから気をつけてね」
久保さんがありもしないことを言ってる。いやいや。久保さんにイラッとすることはあるけど、怒ったりはしないけど。
「ふーん。で、歩果。どう?このパーカー」
「いいと思うよ。なんでも似合うよね」
「ありがとう。じゃ、これの白を買ってあげる」
「ありがとう」
そう言ってお姉さんは白いパーカーを取りに行った。
そして戻ってきて久保さんに白いパーカーを当てる。
「うん、似合うね。どう?そこのお友達」
あれ?って思った。久保さんはお姉さんに僕の話をしないのだろうか。
「似合う……」
「おっけー。お友達記念で買ってあげよう」
お姉さんは二つを持ってレジに持って行く。その隙に久保さんと話すことにする。
「……ねぇ、久保さん」
「ん?」
「お姉さんに僕の話しないの?」
「するけど、名前は出さない」
「案外、ドライなんだね」
「ドライというか、普段からこれだよ。私とお姉ちゃん」
お姉さん。確かに不思議な人だなと思う。
「姉妹ってすごいね……」
「え?うん……」
急に振られた話題に、慌てて返す久保さん。
「うぉい歩果。買うもんないなら帰るけどどうするー?」
少し遠いとこから聞こえるお姉さんの声。
久保さんは少し小さな声で返す。
「わかったよ。じゃあ帰るよ」
僕に顔を向ける。
「そういうわけだから、また」
そそくさと、久保さんはお姉さんの元へ戻って行った。




