↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/20

「泉では、息ぴったり。」


リリアとエルシアは、水音がする泉に向かって慎重に歩いていた。


ぱちゃぱちゃと聞こえていた水音が突然止む。

リリアとエルシアも、同時に動きを止める。


リリアたちに気づいた小鳥は、濡れた身体をぶるっと震わせると小さく鳴いた。


「ちゅんっ……!」


小鳥はそのあと、奥へぱたぱたと力なく飛んでいった。


リリアたちは鳴き声が聞こえた場所へと近づく。

泉の水面には、小さな羽根が波紋を残して浮いていた。


「……驚かせちゃったかな」


エルシアが羽根を見つめていると、腕の中でネムが身じろぎした。

前脚を伸ばして足元を見ている。


「降りたいの?」


エルシアは腰をかがめ、ネムをそっと地面へ下ろした。


不意に、すぐ近くで水音がする。


ぱしゃ、ぱしゃ。


エルシアは顔を上げる。


そばにある岩には、脱いだ外套とキュロットが重ねられ、その上に黒いリボンが置かれていた。


浮かべていた白い光は、水音のした方へゆっくりと移動していく。


光に気づいたリリアが、泉の縁にしゃがんだまま振り返る。


リリアの瞳と、エルシアの視線が重なる。


ほどけた長い黒髪が肩から背中へまっすぐ流れている。

リリアが頬にかかった髪を濡れた指で払う。

揺れる黒髪が、水面から返る淡い光を細く弾く。


「エルシアも一緒に、泥を落とす? 水、少し冷たいけど」


リリアは、ほんの少し頬を緩める。


「……え」


エルシアの返事は、一拍遅れた。

そのあと慌てて視線をそらす。


「わ、私は……先に周りを見ておくね」


リリアが不思議そうに首を傾げた。

岩のそばにいたネムも、同じように首を傾ける。


(そういうときは、息ぴったりなんだ……)


リリアのそばに白い光を一つ残し、エルシアは手のひらにもう一つ灯した。


白い光を浮かべて辺りを見てみると、鳥の子が消えた道とは別に、もう一本の細い道があった。


エルシアは、自分たちが来た道を仮で南と決めて、順番に覚えていく。


北には、子鳥が消えた道。入り口には岩のくぼみがある。

西には、泉へつながる細い水路。人は通れそうにない。

東には、まだ確かめていない細い道。

南が、自分たちの来た道。


そのあとは、リリアが着替え終えていたのでエルシアも泉の水で泥を落とした。


岩の上で座って待っているリリアに、周辺の事を伝える。

エルシアはもう一つ、大事な事を思い出した。


「この空洞には、他にも二つの道があったよ。……それと、ね」


エルシアは視線を足元へ落とす。

さっきまで伸びていた背中が、少しだけ丸くなった。


「どうかしましたか?」


「地図、なくしちゃったの……」


エルシアはぎゅっと目をつむる。


リリアは岩から立ち上がった。


「道なら、ありますよ。ここは、もう湿地帯じゃないので」


エルシアは恐る恐る目を開く。


「……え?」


リリアは何も言わず、空洞の奥へ目を向けた。

白い光の届くぎりぎりのところで、ネムが岩のくぼみの前に座っている。

うっすらと光る青い瞳は、こちらを見ていた。


「……なるほど。たしかに、鳥さんも同じ道へ飛んでいきましたね」


リリアは納得したようにうなずき、エルシアへ手を差し出す。


「行こう」


エルシアはその手を取り、そっと握り返す。

伏せていた顔を上げ、小さく笑った。


「……うん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。