#3 初仕事
「では、会議を始めましょうか」
数分後、会議室にはルカを含めた3人が集まっていた。司会を務めるらしい女性が配った資料をめくりながら、ルカは挨拶を返す。
「先ほど配ったのが大罪人についての資料です。暗記する必要はないけれど、顔とコードネームが一致するくらいには読み込んでほしいわ」
「はい」
「次に、これからのあなたの処遇について説明します」
指定されたページを開くと、そこには地図があった。2つの国が更地を挟んで描かれている。
「あなたにはA地点の偵察に同行してもらう。表……機械国との接敵は確実ではないけれど、偶然かち合う可能性はかなりあると見ている」
女性がもう1人の参加者に目配せをした。
「今回はそこの彼、〝力〟と後1人の計3人で動いてもらう訳だけど……〝戦車〟はどこに行ったのかしら」
〝力〟と称された青年が居心地悪そうにため息をつき、口を開く。
「〝戦車〟は倒れて医務室に運ばれました。原因は魔法の使いすぎによる魔力枯渇です」
「彼の血の気の多さはいつになったら治るのかしらね」
司会の女性も深く息を吐いた。まあとにかく、と仕切り直すように彼女がルカの顔を見る。
「あなたの身の安全は同行者が守るけれど、軽々しく動き回らないほうが安全です。くれぐれも気をつけて」
「分かりました」
「これで伝えることは全て話したけれど、私から2つ忠告させて」
「なんでしょう」
視線が交わり、思わずルカは背筋を伸ばした。
「一つ、戦場では彼らの指示を聞くこと。法王があなたの検査結果を見せてくれたけれど、あなたは魔力が少なく安定もしていないそうよ。戦場は魔力の濃度がここより不安定だから、魔力にあてられるかもしれないと言っていたわ」
もう一つ、と彼女は続ける。
「大罪人との距離の縮め方を考えたほうがいい。あなたはまだ実感がないようだけど、私たちは平気で人を殺せる罪人。それに気付かないでいるといつか痛い目を見ることになる」
「でも皆さん、なにか理由があったんじゃないですか」
昨日案内をしてくれた女帝、今日話をした法王と皇帝。そして目の前の2人。ルカは彼らが根っからの悪人であるとは思えなかった。
「理由があっても、人間は基本命を奪わない。もし奪ったとしてもたいていの犯罪者は反省や後悔をするの」
彼女は穏やかに微笑んだ。まるで感情の起伏を悟らせないような微笑だった。
「私は反省も後悔もしていない。だから10年以上も〝正義〟としてここにいる」
くれぐれも、と彼女……正義は、念を押した。ルカは何も言うことが出来なかった。正義は最後に一度ルカと目を合わせてから部屋を出て行った。
残されたルカと〝力〟はしばらく黙っていたが、ふと力が独白のように呟いた。
「僕の所感ですが、あの人のように忠告をしてくれるだけましだと思っています。皆さん話してみれば案外普通ですが、それでも罪人だ」
「……あなたも人を殺した事があるんですか?」
目の前の彼は、とてもそんな事ができるように見えない。巻き込まれた、とかそういう事のほうがあり得そうな雰囲気をしている。
「ありますよ。数は少ないですが、悪質な殺し方をしました」
「どうしてか聞いていいですか」
彼は数秒考えたあと、ルカを見て言った。
「言えませんね」
それから彼は〝戦車〟の様子を見に行くのについてきてくれませんか、と話題を変えた。ルカは何も言えないまま、立ち上がって彼のあとを追った。
大罪人紹介
・コードネーム〝正義〟
性別:女性
罪状:不正・汚職(オブラートに包んだ表現)
術解名:「虚言溢れる法廷」
・コードネーム〝力〟
性別:男性
罪状:詐欺(オブラートに包んだ表現)
術解名:「始まりのない黙認」




