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魔の森の隠れ家カフェ ~元社畜の錬金術師、最強の素材で最高の一杯を淹れる~  作者: 藍沢エイジ


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第46話:正体暴露! 魔王と王女の共闘宣言

ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!


空は完全に赤黒く染まり、雷鳴が魔の森全体を震わせていた。

遥か上空に浮かぶ『武神』と『秩序の神』の背後に、天を覆い尽くすほど巨大な、幾重にも重なる「絶対浄化の魔法陣」が展開されていく。

先ほどの攻撃を無効化された屈辱に怒り狂った神々が、今度こそ世界の一部を完全に消し飛ばすべく、何千年もの間使われることのなかった「神界の極大魔法」の詠唱を始めたのだ。


『愚かな下界の虫けらどもよ! 我らの安息を妨げた罪、その魂ごと消滅して償うがよい!!』

武神の咆哮と共に、魔法陣から致死量の神気エネルギーがジリジリと漏れ出し、周囲の空間そのものが熱を帯びて歪み始める。


だが、その絶望的な終末の光景を前にしても、喫茶『止まり木』のテラスに立つ常連客たちの顔に、恐怖の色は一切なかった。

彼らの背後にある窓の隙間からは、タクミが絶賛蒸し上げている「黄金のプリン」と、甘くほろ苦い「焦がしカラメル」の暴力的なまでに魅力的な香りが漂ってきている。


「……なぁ、シャルロット。そしてアイリス」

最前線に立つ大男・マオが、上空の神々を睨みつけたまま、静かに口を開いた。

「今まで黙っていたが、ちょうどいい機会だ。俺はただの傭兵上がりの大男じゃない。……魔界を統べる絶対的支配者、魔王マオだ」

その言葉と共に、マオの巨体から周囲の光を完全に呑み込むような、底なしの極大暗黒魔力が噴き上がった。隣に立つ妻のミラも、「ふふっ、主を害する者は、魔王の妻たる私が許しませんわ」と、美しくも恐ろしい深淵の魔術陣を複数展開する。


本来なら、人間の王族がその言葉を聞けば、即座に殺し合いに発展するはずの衝撃の告白。

だが、シャルロットは驚くどころか、優雅に口元を扇子で隠してコロコロと笑った。

「ふふっ。奇遇ですわね、マオさん。薄々気づいてはおりましたが、わたくしもただの良家の娘ではありませんの。……ルミナス王国第一王女、シャルロット・ルミナスですわ。そして隣にいる姉は、我が国の最強の近衛騎士団長です」

アイリスが「シャルロット様をお守りする盾として、この命に代えても」と静かに剣を抜き放ち、その切っ先に神聖なる闘気を宿す。


人間と魔族。

長年にわたり血で血を洗う戦争を繰り広げ、互いに憎み合い、殺し合う運命にあったはずの二つの種族の「頂点」が、今、小さな喫茶店のテラスで正体を明かし合った。


「……で? 人間の王女様は、魔王たる俺の首を刎ねるか?」

マオが口角を吊り上げて問う。

「まさか。そんな面倒なこと(戦争)をしたら、せっかくのマスターの新作スイーツが冷めてしまいますわ。それに……」

シャルロットが扇子を閉じ、背後の厨房から漂う甘い香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「マスターの淹れる珈琲の前では、王女も魔王も、ただの一人の客。……そうでしょう?」


「違いねえ!!」

マオが豪快に笑い飛ばし、シャルロットと力強く背中を合わせた。


かつて誰も見たことのない、人間と魔族のトップによる『共闘宣言』。

さらに、その両脇をエルフの女王セラフィナと、ドワーフ王バルガンが固める。

「まったく、若者たちは熱くていいわね。マスターの店(森の調和)を乱す輩は、エルフの森の総意にかけて排除します」

「おうよ! 今夜のプリンの邪魔をする奴は、天界の神だろうと俺の戦槌でブチ砕いてやる!」


『ば、馬鹿な……!!』

上空で極大魔法を準備していた武神と秩序の神が、その光景を見て驚愕に目を見開いた。

『人間と魔族、エルフとドワーフが……背中を預け合っているだと!? 闘争と憎悪こそが下界のことわりであるはず! なぜ、たかだか一軒の店の、甘ったるい菓子のために、種族の壁を越えて結託できるというのだ!!』


「決まっているだろう」

マオが、全身の筋肉を限界まで膨張させ、暗黒の魔力を拳に極限圧縮していく。

「――マスターの飯が、お前らの掲げる『理』なんかより、ずっと温かくて美味いからだ!!」

「――神の威信など、マスターのプリンの『ぷるぷる』の前では塵芥に等しいですわ!!」


シャルロットが、先日食べた『神代の聖晶糖のパンケーキ』によって限界突破した神話級のオーラを解放し、アイリスの剣に極大の付与魔法エンチャントをかける。

バルガンが大地を隆起させて巨大な発射台を作り、セラフィナが自然魔力で風の推進力を与える。

そして、マオとミラ、シャルロットとアイリスが、その発射台から「超絶神話級の弾丸」となって、上空の神々へと一直線に跳躍した。


『おのれェェッ! 下界の虫けらどもがァァァッ!! 浄化されろォォッ!!』

武神と秩序の神が、完成した世界を滅ぼす極大魔法の雷と氷を、容赦なく四人に向けて解き放つ。


ズドォォォォォォンッ!!!!!


空中で、神の極大魔法と、限界突破した常連客たちの力が激突した。

だが、結果は明白だった。

マスターの【万能錬金術】によって作られた『アイアンウッドのマグカップ』を毎日愛用し、完全に「魔法耐性(神話級)」のバフを受け切っている彼らに、神の魔法は一切のダメージを与えられない。


「ぬるい!! まるでマスターの淹れてくれる白湯さゆのような攻撃だな!!」

マオが、神の雷を素手で引き裂きながら、武神の懐へと潜り込む。

「さあ、神界への帰還の準備おそうじの時間ですわよ!!」

シャルロットの魔法とアイリスの剣閃が、秩序の神の防壁を紙屑のように切り裂いていく。


「……ふふっ、いい匂いだ。もうすぐプリンが蒸し上がるぞ」

地上では、タクミが外の歴史的な大激突(神狩り)など露知らず、呑気にタイマーを見つめて微笑んでいた。

ただ美味い飯を食うために。ただ穏やかな時間を守るために。

最強の『止まり木防衛連合軍』による神への反逆は、いよいよクライマックスへと突入していくのだった。

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