表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔の森の隠れ家カフェ ~元社畜の錬金術師、最強の素材で最高の一杯を淹れる~  作者: 藍沢エイジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/50

第20話:世界樹の露天風呂と、神話級の湯けむり女子会

「はぁー、美味しかった。でも、魚の匂いがちょっと体に付いちゃったな」


水竜リヴァイアサン・トラウトのお刺身定食を完食し、満腹でくつろぐタクミは、自分のエプロンをクンクンと嗅いで呟いた。

ログハウスである喫茶『止まり木』には、タクミが【生活魔法】で作った簡易的なシャワー室しかない。


「よし、せっかく裏庭も広いし、みんなで入れる大きな『露天風呂』を作ろう」

「「「「……はい?」」」」


食後のコーヒーを飲んでいたアイリス、セラフィナ、リカルド、リリス、そして皿洗いを終えたゼノの五人は、タクミの唐突な提案に目を瞬かせた。


「マスター、お風呂を作るって……穴を掘って、お湯を沸かす設備から作るのですか?」

アイリスが首を傾げる。

「うん。ちょうど裏庭の奥に、見晴らしのいい崖っぷちがあるからね。ちょっと工事してくるよ」


タクミは麦わら帽子を被り直すと、スコップを片手に裏庭の奥へと向かった。

見習いウェイトレスのリリスが、こっそりとその後を追う。


(……人間のDIYなんて、たかが知れてるわ。どうせ泥だらけになって、浅い水たまりを作るのがオチ――)


ドドォォォォォォンッ!!!!!


「ひっ!?」

リリスが覗き込んだ瞬間、裏庭の地面が【空間掌握】によってサイコロ状に綺麗にえぐり取られ、巨大なクレーターが形成された。


さらにタクミは、スコップを地面に突き立てる。

「この辺り、地熱が高かった気がするんだよな。温泉、出ないかなー」


ゴゴゴゴゴォォォ……ッ! プシャァァァァァッ!!!


スコップが岩盤を貫いた瞬間、黄金色に輝く熱湯が、間欠泉のように数十メートルの高さまで噴き上がった。

それはただのお湯ではない。奈落の森の地下深くを流れる強大な魔力の河、『龍脈ドラゴン・ヴェイン』が、地下水と混ざり合って噴出した「液状化した純度100%の魔力エリクサー」であった。


「わあ、一発で出た! いいお湯だなあ」


タクミは黄金の温泉を頭からかぶりながら、呑気に笑っている。

【絶対水耐性】と【無自覚な威圧】のおかげで火傷一つしていない。


「よし、湯船と建屋を作ろう」


タクミは無限収納インベントリから、薪として拾い集めていた『世界樹の枝』を大量に取り出した。

【万能錬金術】を発動し、枝を瞬時に製材。組み合わせて、巨大な「総檜ひのき造り」ならぬ「総世界樹造り」の豪華絢爛な露天風呂を組み上げていく。

湯船の底には、保温効果を高めるために『炎竜のウロコ』を敷き詰め、屋根は『ヒノキ・トレント』の葉で風流に葺いた。


「よし、完成だ! 【世界樹の露天風呂】!」


時間にして、わずか10分。

タクミの常識外れなDIYにより、世界で最も贅沢で、世界で最も魔力濃度の高い「神話級の温泉施設」が誕生したのである。


「みんなー! お風呂できたから、女の子たちから先に入っておいでー!」


数分後。

タクミに促されるまま、脱衣所で服を脱いだアイリス、セラフィナ、リリスの三人は、恐る恐る黄金に輝く湯船へと足を踏み入れた。


「こ、これは……なんという濃密な魔力だ。肌に触れた瞬間、古傷が完全に消え去ったぞ……!?」

人類最強の騎士アイリスは、自分の白い肌から一切の傷跡が消え、陶器のようになめらかになっていくのを見て戦慄した。


「あぁ……っ、ダメだ……。世界樹の香りと、龍脈の魔力が……私の精霊核を極限まで満たしていく……溶ける……」

森の守護者セラフィナは、湯船の縁に頭を乗せ、完全にだらしない顔で「ほへぇ」と魂を抜かれていた。


「嘘でしょ……ただのお湯なのに、魔界の秘湯『不老不死の泉』の何千倍も効能があるじゃない……っ! 肌が……肌が水を弾いて、究極のアンチエイジングが強制的に……!!」

魔王の娘リリスは、自分の肌が赤ちゃんのようにもちもちに若返っていくのを感じて、お湯をパチャパチャと顔にかけまくっている。


「「「……極楽だ(極楽である/極楽ね)」」」


種族も立場も違う三人の美少女(?)たちは、黄金の温泉の中で肩まで浸かり、完全に一致したため息を漏らした。

美味しいご飯を食べ、世界樹と龍脈の温泉に浸かる。

もはや彼女たちにとって、王都の権力闘争も、魔王軍の世界征服も、どうでもいい些末な問題になりつつあった。


「……ねえ、アイリス。このお湯、持って帰って騎士団で売れば、国の予算が倍になるんじゃない?」

「馬鹿なことを言うなリリス。そんなことをすれば、世界中の国がこの温泉を巡って大戦争を起こす。ここは……私たちだけの秘密だ」

「ふふっ。人間と魔族が、裸で秘密の共有とはな。面白いではないか」


セラフィナが笑い、三人は湯けむりの中で静かに乾杯(持参したフルーツ牛乳で)した。

こうして、女性陣の絆(と、異常なまでのステータスバフ)は、温泉によってさらに強固なものとなったのである。


一方、男湯(という名の順番待ち)では――


「マスター殿……! 私のような薄汚れた商人が、このような神の湯に入ってもよろしいのでしょうか……!」

「俺も、土にまみれた身体をここで清められるとは……圧倒的感謝……!」


リカルドとゼノが、タクミの前で土下座しながら順番を待っていた。


「いや、ただの露天風呂だから。そんなに畏まらなくてもいいよ」


タクミは二人の大げさな反応に苦笑しながら、ポチの背中をタワシでゴシゴシと洗ってやるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ