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歩いていくと突き当たる場所に共に舟を降りた乗客達が集まっている。ここの名物を皆で楽しんでいるのだろう。誰もが思いっきり腕を振りかぶっている。
『皆腕を振って、何をやっておるのだ?』
雄真の肩に乗ったユエが聞いてきた。
「あれが うん玉 だよ」
「自分の上げたい運が印された石を選んで対岸の岩の穴目掛けて投げるのよ。見事入ればその運が上がるの」
『運が上がる?なぜだ?』
神様であるユエになぜと問われると複雑だった。思わず苦笑いを浮かべる私に変わって雄真が答える。
「願掛けって言って、人は望む事を得るために誓いを立てたりするんだ。禁酒するとか、早起きするとか。それを達成できた時に望みが叶うって信じて打ち込むんだ。困難に立ち向かうための拠り所があると頑張れたりする。この運玉も入ればその拠り所の一つになるんだろうさ」
『入らなかったら拠り所を失う、いや、得られないとなるだろう?そもそもそんな事しても仕方あるまいに』
そんな事しても仕方ないとかズバリ言っちゃってるし。
「自分次第ってのは誰でも本当は分かってるんだよ。やるもやらないも自分が決めて進むしかない。でもさ、迷ったり挫けそうになった時に何かに縋りたくもなる。運玉が入れば先に進む小さな勇気になるかもしれないし、入らなかったとしたら逆に立ち止まり振り返る勇気になるかもしれない」
運玉の並ぶ場所に歩きつき雄真はユエを肩から降ろした。あらゆる運を網羅した石の数々は百円で三個まで選び投石にチャレンジ出来るらしい。全て違う運玉を選んでも良いし、一つの運に絞っても良いようだ。投げずに持ち帰る人もいる。
「入っても入らなくても自分なりに受け止めて、その先に進む勇気にすれば良いんだ」
『ふむ、なるほどの』
「ねえ、そんな小難しく考えないでただ楽しいからで良いんじゃない?」
雄真はたまに理屈っぽいというか哲学的な所があると思う。答えなんて出ない事の理論を考えるのが好きな奴だ。そんな雄真に比べれば私は短絡的だと見られても確かに仕方がないのだろうが、ただ流れに身を任せてしまえば良い時はそうしてしまえば良いと思う。
「ね、ユエはどれにする?」
不服そうな顔をする雄真は気にせずユエに問いかける。
『我のこの体ではどのみち対岸になど届かんからやらずともよいよ』
「ユエ、郷に入っては郷に従えって教えたでしょ?私たちはこれを楽しむ、だからユエも一緒に楽しみましょうよ。それとも入らなきゃ運が落ちるとか、神様のくせに恐いのかしら?」
『そんなはずなかろう』
「なら早く選べよ。ちょうど三個選べるんだ、一人一投ずつやろうぜ」
『まったく仕方ないの。では我はこれにしよう』
ユエの小さな手は【縁】と刻まれた石を握った。
『届くから叶う、届かぬから叶わぬということはない。我が我の命と共にこの先大事にすべきものを投げて胸に刻むかの』
「良いんじゃないか。じゃあ俺もユエ達の良縁を願うか」
「じゃあ私もそうしよう」
『これ!己らの望むものを選ぶものなのだろ?自分の願うものを選べ』
不毛な事と言ったくせに、ユエは自分の望みを選ばない私達の事を気にするのが少しおかしかった。
「ユエと出会えたのは縁があったからだと思うの。この出会いが、ユエ達にも私たちにも素晴らしい縁の繋がりをこの先ももたらすと信じたいからこれが良いの!」
「ユエのためって投げれば外した時何ともないからな」
『まったく仕方のない、優しい子らよ』
ユエは雄真の言葉には一瞬ジト目を向けたが、すぐに笑顔を作った。




