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雄真との約束の時間に合わせてユエを連れて家を出ると、金の入ったキーホルダーも鈴の隣に付け足した鍵を取り出し、しっかりと施錠した。雄真は自身の店がテナントとして入る、うちの隣のマンションに住んでいて待ち合わせの駐車場まではすぐに到着する。車の後部座席に乗り込むと既に冷房が効き快適な状態だった。三日続けて乗り込んでいるわけだが、三日ともこうして雄真は時間よりも早くエンジンを掛け待っていてくれて、やっぱり気遣いの出来るいい奴だと思う。
「おはよう雄真。今日もよろしくお願いします」
「おう、じゃあ行くか」
車はスムーズに走り出し軽快に進んでいく。今日、私達は休みだが世の中は長いお盆休みを終え今日から仕事という人が多いはずだ。車の進行に問題は無いが、交通量は多いような感じがした。
「流石に連休明けだけあって、車が多いわね」
「だな。まあ渋滞の心配は無いだろうと思うが…」
その時、掛かっているラジオがちょうど良く交通情報を始めたので自然と会話が止まって耳がそちらに集中する。ラジオによるところでも渋滞の心配はないようだ。
「本当、大丈夫そうね。ユエはもうすっかり車での移動は慣れた?長距離で車酔いとかしないの?」
昨日も一昨日も車での移動だったが、そう言う話は聞いていない。特別の心配はいらないのだろうけど雑談の種に話を振ってみた。
『千歳、何度も言うが我に肉体的な不調は生じぬよ』
「分かってるんだけど、見た目が子供なだけに心配になっちゃうのよ。それに、ねえ雄真、リオンの時は酷かったんでしょ?」
ユエの返答は予想どうりだったが、同じ転移者であるリオンが始めて車に乗った時の様子を聞いたことを思い出し雄真に問いかける。ああ、そういえばと雄真も思い出したようで苦笑いを浮かべた。
「近場のカフェまで豆の納品で同行させたんだが、滅茶苦茶緊張してたっけな。あの日本一車線が多いって噂の交差点なんかじゃ目を回しちまって、右折の時は対向車が向かってくるのが怖かったのか下を向いちまってさ。うちの店に着く頃にはすっかり酔って青ざめてたな」
「ふふ、想像出来るわね。新幹線に乗せた時も流れる風景に目を回していたもの」
車も新幹線も彼の世界にはまだ存在しない速度を出すのだから仕方がないが、常に毅然としたリオンがたまに狼狽えて見せるのが、彼には悪いが楽しかった。
「ここの技術に目を丸くするリオンには楽しませてもらったわよね。でも、これって転移者からしたら現代マウントを取られてる感じで、気を悪くさせてしまうかしら?これからは気をつけないとね!」
「お前な、今後も転移者が来て当たり前みたいに言うなよ」
大真面目に反省する私に雄真は呆れ顔だ。
『千歳達はリオンという者の思い出をよう語るの。我が帰った後は、我の事もこのように思い出してくれるか?』
「なあに?感傷的になっちゃって。当たり前でしょ、こんなに可愛い神様忘れる訳がないわよ」
「可愛い?!おしゃべり好きな中身爺さんだぞ?小憎たらしくて忘れるもんかよ」
『ふん!我も生意気な物言いの雄真は忘れたくても忘れんよ。我を毛玉などと呼んだ千歳の事もの』
太陽の光を受けて眩しく輝くユエの髪に手を伸ばす。
『こうして遠慮なく撫でられた事も、二人がユエと呼んでくれた事もの』
「うん」
「おーい、まだ泣くなよ?」
「泣いてないわよ!」
ユエはやっぱりやれやれと肩をすくめるが、その顔は優しい笑顔だった。




