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俺は焦っていた。非常にまずい。
『雄真は金を採る才能がないのう』
(うるせー!そもそもユエが採り尽くしちまったんじゃないのか!?)
俺の傍で眺めながら無神経な思考を投げてくるユエが今は憎たらしかった。残り時間が迫っているが一向に金が見つからない。職員さんも俺の状況に憐れみを込めた視線を送っていた。くそっ!
時間的にこれが最後の一すくい、慎重に砂を追い出す。二度、三度と皿を回し見える面積が増えた皿の底を凝視した。俺の必死の様子を職員さんも固唾を飲んで見守ってくれている。
残った砂を指の腹で慎重にどかしていくと、砂とは明らかに様子の違う粒が見えた。
「…あった!」
「やった!よかったですね!」
良い年した大人が恥ずかしいが、思わず大きな声をあげていた。職員さんもホッとしたように肩の力を抜いて拍手で祝福してくれている。きっと俺が採れなかった時は何て言って励まそうかと気を揉ませていたことだろう。
「はは、ありがとうございます」
「良かったら、その金を使ってアクセサリー作りはいかがですか?」
「アクセサリー?」
「はい。ネックレスやキーホルダー、ストラップなども出来ますよ」
ネックレスにすればユエが真の姿に戻ってもその首や、回らなければ脚にでもつけて持って帰れるかもしれない。
「時間は結構かかりますか?」
「いえ、五分程で加工出来ます」
後日受け取りや発送となるとユエの帰還に間に合わないかもしれないと思い作成期間を確認したが、ほんの少し待てば出来ると言う。
「常に持っていられるし、作ってみないか?」
ユエに声をかけるとしっかりと頷いた。
「よし、じゃあお願いします」
お願いすると職員さんが案内を始めてくれた。数種類のデザインから好きな物を選ぶようだ。ネックレスかキーホルダーかストラップに出来て、金を収めるガラス部分のチャームのデザインはただの球状か筒状、六芒星型と言った凝った物からも選べる。それぞれチェーンなどの金具の部分は金かシルバーの二色が用意されていた。
「ユエのはどうしたい?形状はネックレスが良いと思うが、チャーム部分は好きに選んで良いぞ」
ユエはデザインを前にしても何も指し示さず、俺に視線を向けてきた。
「どうした?好きなの指させよ」
『我は決まっておる。雄真はどれが良いのだ?』
何でまず俺の希望を聞くんだ?お揃いにでもしたいのか?だが俺の採った金は一つきりで、約束した以上はこれを千歳用にするつもりだった。ユエの声が聞こえない職員さんの前でユエに言葉を返すことができず、俺たちはただ視線を交わすだけになってしまった。動きのない俺たちに「な、悩みますよねー」と職員さんは困ったように言っている。
『雄真はたった一粒しか採っておらんだろ。約束しておったのだからそれは千歳にやるつもりだろうて、我のを分けてやるから雄真も選べ。我はこの金の丸で頼む』
ユエはそう言って自分のを指さすとふいとその場を離れて行ってしまった。
「お子さんの採った分はこちらに加工で宜しいですか?」
やっと指さしたデザインがユエの希望と判断して職員さんが聞いてくる。
「はい、あ、いや。一粒だけこのキーホルダーにして下さい。俺の採ったやつはそれと色違いで、あとは全部あの子の選んだネックレスの計三つに加工してもらえますか」
「かしこまりました」
注文を終えユエの後を追った。すぐに追いつき、職員に声の届かない距離だと確認して声をかける。
「お言葉に甘えて一粒貰ったぞ。ありがとな」
『構わんよ』
子供の見た目にそぐわない穏やかな笑みを浮かべるユエの髪が、差し込む光にキラキラと輝いていた。
来訪地【わくや万葉の里 天平ろまん館】
冬季は砂金採り体験はお休みのようですので、ご注意下さい<(_ _)>




