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千歳のおにぎりも食べ終え、ユエとの会話にも多分決着がついたため俺は再び車を走らせ始めた。
『しかしのう雄真、お前達は少し他者を尊重しすぎておるようにも思うぞ』
決着がついたと思ったのに、またユエが何か言い始めた。勘弁してくれ、もう一日分以上の思考をした気分だってのに。 神は多くを語らないとか言ってなかったか?
「まったく、おしゃべり好きな爺さんだな」
『また爺さんなどと言いおって。世界の歩みの長さで言えばここの方が遥かに長い。と言う事は雄真は我よりももっと爺さんなのだぞ』
「なら敬いたまえよ、ユエ君?」
『調子に乗るでない若造が』
「なら、やっぱりユエが爺様って事で良いな?で?何が言いたかったんだよ?」
舌戦に負けて悔しそうなユエが鼻を鳴らしてから話の続きを始めた。
『他者を尊重しすぎるな、と言っておるのだ。いや、複雑な思考をするがゆえに他者の望むものを誤って認識する事があるようだから気をつけろと言いたかったのだよ』
「自分勝手は良くないだろ?ユエだって、命達の自分勝手に手を焼いてるんじゃないか。早く俺たちみたいに他者を見れる様になって欲しいんだろ?」
自分を大事にするべきだが、自分本位で他者を蔑ろにするのは良くないと思う。
『そうなのだが、我の命達のように純粋に欲しいと手を伸ばす事も時には必要だ。他者よりも前に出て、もしくは他者よりも上に立つ。それが他の命を守る事もあると知っておれば悪い事ではないだろう?他者が欲しいと手を伸ばす物を恵んでやれるのならそれもして良いが、手を伸ばさぬから不要だろうと他人が勝手に判断するものでもない。それどころか、コレはその者が望む物だと勝手に判断し、行動する事は愚かだと言っておるのだ』
「もしかして、俺や千歳がユエのためと思ってやっている事が迷惑だったか?」
ユエの力の回復を助けてやりたいと千歳は行動して、俺もそれを助けてやりたいと思ったから今も昨日もこうしてる。だが、ユエが本当に求めてる事は違くて俺たちは自分勝手を押し付けていたのだろうかとユエの言葉に不安になる。
『迷惑などと思うか!尽くしてくれて感謝しておるよ。だが、そこなのよ。複雑な思考は素晴らしいがの、見当違いな物の見方をする。他を重んじるあまりにな』
「はあ、ユエの物言いは要領を得ないと言うか小難しくて訳がわからん」
千歳じゃないがユエは確かに言葉が足りないと言うか回りくどいと言うか、もっと簡単に話してくれれば良いのにと俺はため息をつく。
『分かっておるのに分からんふりもお前達は得意よな、まったく。例えばな千歳の事だが、千歳は雄真には休みが必要と勝手に思っておる。だから我と行動をさせるのが悪いと思っておるようだが、雄真自身は休みなど必要としておらんよな?何度そう言っても千歳は分かろうとしないのは愚かだと思わんか?』
「愚かって。言い方はアレだが、まあ、そうだな」
『して、雄真もよ。千歳は雄真を喜ばせようとしてるだけなのに気を遣わせた事を雄真は気に病む。ただ素直に受け取れば良いものを』
「…」
『お前達に限らず、他者を思う事が行き過ぎてしまい過ちを犯している者もおるようだ。この世でも他者を簡単に踏み躙る者もおるな?自分勝手がそうさせる事が多いようだが、中には他者が望むからと勘違いで他の者に手を伸ばす者もおる」
人を傷つける事は良くない。なのに、自分の大事なものを踏み躙られたり傷つけられればそいつを許せない。どうしようもなく、同じくらい傷つけば良いのにと望んでしまう事がある。悲しいがそれが感情を持つ人間なんだ。自分の感情である事を忘れて、その大事なもののために傷つけた相手に復讐するのは誰のためでもなくなってる事に気づけない。その大事なものが、復讐を望んでいるか分からないのに分かろうとしない。
『複雑な思考や感情は尊いよ。他者を重んじるのも素晴らしい事だ。だがな、他者が望むものを勝手に判断するな。欲しいものにも本来ちゃんと自分で手を伸ばせたはずだ。雄真も千歳も相手のためと勝手に遠慮などしてないで手を伸ばせ。居なくなると思って焦る前にの』
居なくなると思って焦る、言われて昨日の嫌な幻を思い出す。
「…お前、昨日の幻を見てやがったな?」
『はて、何のことかの?ちと雄真とのおしゃべりにも飽いたわ、着くまで寝る』
俺はこめかみに青筋を浮かべるが、ユエは何食わぬ顔で狸寝入りを始めた。
このクソジジイめ!




