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近くにもう一箇所有名な神社がある事を知っていた俺はそこにも訪れようと考えていた。なぜ三と言う数字に拘るのかは分からないが、日本三大とうたわれる神社の一つだ。到着すると朱塗りの鳥居を潜り清めを済ませて本殿へと参拝に向かう。
『少し不思議な気がおるの』
「気が居る?」
『気配と言うべきか。神もおるが姿が見えぬ。代わりにちと騒がしい気が人の子らにちょっかいを掛けておるような』
俺には何も感じないが。ユエは警戒するように眉を顰めて視線を巡らせている。商売繁盛のご利益があるからよく来る神社で普段から親しんでいる分、ユエが警戒するのが不思議だった。
「嫌な気でもあるのか?ここは来ない方が良かったか?」
『いや、良き気に溢れておるよ。我の力にもなっておる。だがどうも騒がしくて気が散るのよ。まあ害は無いと思うが、、』
「そうか?でも集中出来ないようじゃ何だし、参拝を済ませたらすぐ出よう」
時間も夕方に差しかかってる。晩飯の準備を考えればそう長く居るつもりもなかったから問題ない。立派な本殿の前に立ち賽銭を納め、作法に則り祈りを終えると礼をして目を開けた。
たがその目に映る光景は閉じる前のものではなくて、俺は一瞬何が起きているのか分からなかった。
屋外の境内で参拝をしていたはずなのに、そこは少し前に初めて入った千歳の部屋に変わっていた。目には眩しい光が届いている。窓を背にして立つ長身の良い男、リオンから放たれている光だ。リオンの正面には千歳が俺に背を向けて、リオンと向き合うように立っていた。窓の外からは絶え間ない花火の音が響いてきていて、その音の勢いが終わりの近い事を教えていた。
「さあ、リオン。お別れの握手でもしましょう?」
そう言って千歳はリオンに右手を差し出した。そうだ、少し前にこの部屋でこうやってリオンを見送ったのだった。この後リオンも手を差し出して二人は握手を交わすとリオンは消えちまう。あの時見守った光景がなぜだか今また目の前で繰り返されていた。
「今までありがとう、チトセ」
言いながらリオンは千歳の手を握る。
「こちらこそ楽しかったわ、ありがとう」
千歳が答えて手を離した瞬間、花火の最後の一発の、一際でかい音と共にリオンは忽然と消えるんだ。あの時はそうだったのに…
瞬間俺の方を見たかと思うと、リオンは「悪いな」と口を動かして千歳の手を強く自分の方へと引いた。つんのめる千歳をリオンが抱き止める。
「ばか!よせ!」
このままでは千歳が連れて行かれてしまう、そんな事実はないのに目の前の光景は俺を焦らせた。手を伸ばした瞬間、花火が鳴り響き眩しかった光が霧散した。
出した手は空を切り、音の止んだ暗い室内には俺一人だけが残されていた。




