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千歳を店に下ろすと山の方へ俺は車を走らせた。神社に行く前に水の気が溢れていそうな場所にユエを連れて行こうと思っていたからだ。
「少し長く走るから寝ててもいいぞ」
『うむ、だがこの箱から流れる景色を眺めるのも愉快だからの。寝るのは惜しい』
「ふっ、まあ好きにしたら良い」
『神社は遠いのか?』
「いや、そんな事はないがせっかくだから車じゃなきゃ行けない所に連れてってやろうと思ってな。まあ、楽しみにしててくれ」
そう言ってしばらく車を走らせ着いた先は、山肌から遥か下方に水が吸い出されるような見事な滝の前だ。日本三名瀑の一つとも言われ緑の生い茂るこの季節は特に良い眺めなのだ。平地よりも高いこの場所は滝からの水飛沫もあってか真夏の昼間だと言うのに清々しい。
「どうだ?」
ユエは直接触れずともその『気』とか言うのを自身に取り込めると千歳は言っていた。日本では滝も信仰の対象になったりするからただの水より良い気が取り込めるんじゃないかと思って連れて来たのだが、結果やいかに。
『実に心地良い!』
目を閉じ全身で何かを浴びるようにするその顔は生き生きとして見える。連れて来て正解だったのだろう。
「そうか、よっと」
『何だ?!』
突然体が浮いてユエは驚いていたが気にせずその短い足を俺の肩に跨がせて座らせた。いわゆる肩車をしてやったのだ。
「こうやって歩いてやるから、ユエは存分にここの気を取り込めよ」
『うむ、悪くないの』
見た目ガキのくせに偉そうなんだよな、まったく。俺は苦笑うが、ユエが気を良くするならまあ良いかと思う事にした。
俺はユエを肩に乗せたまま駐車場から伸びる遊歩道へと足を向けた。ここを進むと滝壺まで降りて行けるのだ。どうせならまさに浴びれる程の距離で気を吸わせてやろうと思ったのだが、山道を歩き出してすぐサンダルと肩にユエを担いだままで踏み込んだ事を少し後悔した。何度か滑りかけてヒヤリとしながら、だいぶ慎重に歩みを進めて滝壺へと到着出来たのだが、通常よりもだいぶ時間を掛ける事となった。
『おお、見事だの』
「まったくだ」
轟々と豪快に叩きつける水の勢いは凄まじく圧巻だった。普通の人間である俺でもその力強い水の有り様には圧が感じられ、自然の持つエネルギーに圧倒されたが、ユエは臆する様子もなく静かに滝に対峙していた。
「そろそろ車に戻るぞ」
いつまででもここを動かずにいられそうな様子のユエに、心苦しくはあったが俺は声をかけた。
『そうか、ではまた頼む』
「マジかよ、、」
俺を見上げて手を伸ばすユエに頬が引き攣る。滝壺に到着して下ろしてやったがまさか帰り道まで肩車をする羽目になるとは。転ばぬように気を張るのは疲れるんだがな。まあ、その方が移動中も「気」を取り込むのに集中出来るのかもしれないから仕方がないか。ため息をつくも俺はユエを再び担いで慎重に歩き出した。
『今度はあまり揺れぬように頼むぞ』
滝壺に投げ込んでくれようか。。
来訪地【秋保大滝】
日本三名瀑の一つで日本の滝百選にも選ばれています!




