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翌日も私はユエを連れて出勤した。この日は早めの時間に来店予約が集中していたため、出勤時の寄り道は出来ないが、夕方より前には店を締められそうだったため、それから少し足を伸ばしてみようと考えていた。最後の客を見送りレジ締めを済ませ、ユエの眠るバックヤードへと迎えにいく。
「お待たせ、ユエ。起きられる?」
『仕事とやらは終わったのか?』
私の問いかけにすぐ反応しユエは目を開けた。やはり姿はそうであっても寝起きにぐずる子供とは違いスッと体を起き上がらせる。分かってはいても子供の容姿なだけに違和感がありすぎる。毛玉の頃のように虚ろ気に微睡んだり、子供の様にボーッとしながら眠そうに目を擦ってくれても良いのだが。
「ええ。それで今日は海の近くまで足を伸ばそうかと思っているの。すぐに出られそうかしら?」
『海か、それは良い。我は問題ないぞ』
「海水も好きなの?」
『水だからの。それに浄化を助ける塩の源だ。我にとってはそのどちらも不可欠だからの』
「それなら行かない手はないわね。まさに塩作りの神様を祀る神社に行くつもりだったのよ」
私はユエの話を聞いてこれから行く神社をピックアップして正解だったと安堵した。荷物を纏めてユエと共に早速向かうとする。
JRを利用してその神社の最寄り駅に到着すると最初の目的地を目指す。正月には参拝者の数がニュースで報道される程大きな神社だが、敷地外に末社も有していて、そこが駅からも近いためまずはその末社に向かうつもりだ。食事処やお茶屋などの並ぶ風情ある街並みを五分ほど歩くとすぐに到着する。
ここは日本三奇の一つに数えられ、神秘の力を秘める釜が祀られている。その釜は四つあり常に海水が湛えられていて溢れる事も干上がることもないらしい。日本に何かが起こる時その水が変色し吉事や危機を教えるのだという。
参拝料を納め早速その神秘の釜を見学させてもらった。写真撮影は禁止との事で残念だったがしっかりと目に焼き付ける。静かにただそこにある物というだけなのに、何だが威圧感と言うか唯ならぬ気のようなものを感じた。実際に水の色が変わるのかは分からないが、長い歴史を持つ物にはそれだけでパワーがあると思う。
付喪神という存在も古くから日本人と共にあった。長く大事に受け継がれる物には魂が宿るとされる。この釜がそうだと言いたいわけではないが、この釜そのものがとても尊い物に私は感じられたのだ。
「どうだった?」
次の目的地へと向かいながら私はユエに問いかけた。
『何とも強い気であったな』
「うん。私でさえ何か普通じゃないって感じたわ。藻塩焼神事っていう儀式にも使われる、言ってしまえば道具なのでしょうけど、時に水の色を変えて何事かを知らせるって不思議よね。それが良い前触れの時もあれば悪い前触れの時もある。何だか優しいだけじゃなくて、ちょっと恐いような感じがしたわ」
『それを分かっておるのが大事よな』
「どう言うこと?」
私は何気なく今見た物に対する素直な感想を告げただけなのだが、何かの気づきを得でもしていただろうか。
来訪地【御釜神社】
この境内で日本で最初の塩作りが行われたと言われています




