第73話 編集しておいてください
突然こんなことを言う同郷の同僚は如何?
ウィンディは市役所で働いていた。
ダンジョン調査課は暇とは言え、やること多い。
他県や他の地域から送られてくる共通のダンジョンに関する情報。
それらを一つ一つまとめるだけではなく、対策会議などもある。
もしもの場合が来る場合。
そのためにできることを考えておく。
正直な話、ダンジョンは自然災害と同じようなもの。
いつ、何処で、誰が遭遇するのかも、何故産まれるのかもあやふや。
もちろん魔力が昂っている。すなわち、生命エネルギーが乱舞しているからなのだが、それだけではないのが奥深くて厄介な所でもあった。
とは言え常に張り詰めていてはいけない。
そんな訳でコーヒーを飲みながらゆっくりとしていると、ふと思い出す。
さっきのダンジョンのデータ、アレを上手く有効活用できないかどうか模索する。
「ダンジョン内の映像。如何しましょうか?」
千世と師走は映像データを残して行ってくれた。
もちろんSDカード自体は返却しているが、データ自体は既に調査課にある。
一応情報証拠として利用させて貰う許可は取ってあるが、いかんせん如何扱うべきか迷う。
「何悩んでるのよ」
ウィンディはふと顔を上げた。
そこにいたのは同僚。しかも同郷出身者。
同じく異世界からこちら側の世界にやって来た種族の一人で、その末裔に当たる。
「レネードさん」
「ウィンディ先輩。顔が怖いですよ」
「そうですか?」
「はい。せっかくのエルフ族なんですから、もっと可愛く振る舞いましょうよ。その方が人生得ですよ」
レナードはウィンディを揶揄う。
しかしウィンディはエルフジョークをみせる。
「ふん。既に何とも経験済みです。私はエルフですからね、長生きなんです。そう言うことは、また後でもゆったり楽しめます」
「あー、そうですか。その頃には私は生きてませんね」
「でしょうね。それで、何仕事サボっているんですか?」
「サボってないですよ。ちょっと休憩です。良い仕事をコンパクトに収める。それが今の社会ですよ?」
「ですね」
ウィンディとレナードはお互いに仲が程よく良い。
ウィンディが先輩でレナードが後輩。
それぞれがエルフ族、それから山羊の獣人のハーフ。二人はそんな関係で、今は能力は使えないが、ダンジョンでは一線級に戦える実力者だった。
「何観てるんですか?」
「ダンジョンで撮影された映像です。如何活用しようか悩んでいたんですよ」
「ふーん。あっ、でもですよ先輩。個人情報がもろに出るのはマズくないですか?」
「でしょうね。音声はとりあえず分けましょうか」
とは言えウィンディにとって、こう言った映像素材案件はあまり得意な分野ではない。
そんなこんなで、ウィンディは悩んでいたが、レネードをふと見る。
するとピコン! と頭の中で電球が灯り、「そうでした」と口を開く。
「ん? 何ですか」
「レネードさん、編集って得意でしたよね?」
「はい?」
「動画の編集です。貴女が個人的にダンジョンへと向かい、腕を磨いていることはこの市役所にいる職員にとっては周知の事実です。そして撮影してきた映像を動画にし、自分の腕と成果を確かめる休日を送っている。そうですよね?」
ウィンディは早口だった。
しかしレネードは「何で知ってるんですか?」と喉を詰まらせた。
「知っていますよ。ですが今は如何でも良い話です」
「如何でも良くはないですよね?」
ウィンディに素直なツッコミを入れるレネード。
しかしウィンディは聞く耳を持たない。もちろん聞いてはいたが、そんなことはさておきと、レネードに頼む。
「この動画の音声を極力カット、および彼女達の姿が映っていない映像のみで、カベトカゲの脅威を知らせるような動画を作ってください」
「はい?」
「頼めますか?」
ウィンディの無茶振りを当然レネードも受けるはずがない。
全力の抗議を入れる。
「嫌ですよ。残業じゃないですか」
「残業ではなく、業務としてやってください。貴女の分は私が代わりに受け持ちますので」
「本当ですか!」
「その代わり、本気で取り組んでくださいね」
「うわぁ、パワハラだー」
「いいえ、これは適材適所を利用した分担作業です。もとい痛み分けです」
「どっちも被ってるじゃないですか」
ウィンディとレネードの会話が響く。
しかしながらもう逃げる余地はない。
何故ならウィンディが圧を掛け、レネードの肩をポンと叩いて労う。
「私はレナードさんの腕を見込んでいます。頼めますか?」
「うーん……はぁ、分かりましたよ。それで、何処にアップしたら良いんですか?」
「それはですね」
パソコンを操作して、とあるチャンネルを開く。
そこにはダンジョンアーカイブという名前がある。
ダンジョン調査課、およびダンジョン関連の映像を素材を動画にまとめここにアップロードする。
ダンジョンをきっかけに新しくできた異戒省が使った公式のチャンネルだ。
「ここにアップロードしてください」
「ここですか!? で、でもここのチャンネルのパスワードは特別な人達にしか……」
「私は知っているので大丈夫です。それと、あの子達のチャンネルのURLも記載しておいてくださいね。提供がなければ無断で使用したことになるので」
「わ、分かりました。はぁ? ウィンディ先輩ってやっぱり凄い人ですよね」
レネードは呆気に取られた。
それくらいウィンディの凄さが伝わってきた。
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