第71話 受け取り辛い報酬
人が○○してるのに……
「さてと、それではそろそろ報酬の話に移りましょうか」
ウィンディはそう切り出す。
しかし千世と師走はドン引き。だってあまりにも早すぎる方向転換に、急ブレーキを掛けてしまう。
「えっ、ウィンディさん!?」
「はい、何ですか?」
「突然話を切り上げて、金の話題に入るのー?」
「はい、入りますよ」
凄い太い神経をしていた。
千世達は目を疑ったが、如何やらウィンディにとってはコレも日常らしい。
「こほん。まずは今回の調査、お疲れ様でした」
「「お疲れ様でした」」
「これだけ素晴らしい映像証拠を撮ってきて頂けた上、カベトカゲも見事に討伐されてしまうとは、大変恐れ入りました」
「あれ、その言い方ってことは、私達が無事に帰ってくるの信じてなかったってこと?」
師走がウィンディの話し言葉の矛盾を突いた。
確かにそんな風に聴こえてしまうけれど、ウィンディは否定をしない。
「討伐できるとは思っていましたが、まさか本当にしてしまうとは思いませんでしたよ。正直、初心者探索者には厳しい相手のはずです。っと、これは先程話しましたね」
「ウィンディさんがくれた、閃光球のおかげです」
千世は閃光球が少なくなっていることを証拠にした。
無事に使って貰って嬉しそうだ。
「とは言え、討伐が完了したと言うことは、あのダンジョンにもしばしの平和が訪れたことになります。モンスターが再度リポップするまでには時間を要しますからね」
「ゲームみたいなこと言わないでよー」
「生死を賭けた命懸けの冒険とでも、フレーズを付け足して方が面白ですか?」
「面白いかもしれませんけど、面白くないです! 本気で怖かってんですから!」
千世はウィンディのジョークを一蹴する。
コツンと蹴り飛ばされたのでウィンディは無表情に戻ると、「まあそれは置いておくとしましょうか」と少し名残惜しそうにする。
しかしウィンディは早々に話を戻す。
それから明細書と小切手を渡される。
「こちらが今回の報酬です。ニュースにもなってしまった案件でしたので、少々難儀でしたが、雑費を込みで四十五万円です」
「「はぁ!?」」
千世と師走は声を上げた。
一体何が起きているのかわからない。
ダンジョンで取れるものはかなりの確率で大金になる。
それは場合によるけれど、無心でやっているおかげか、千世達はかなり高価なものにあり付けている。
しかしそれはこの世界を良くするために使われるものだ。
ダンジョンで取れるもの。それらはこの世界ではすでに新しい産業物として使われている。
端的に答えれば、無限の可能性を持つ石油みたいなもの。その認識を前にウィンディに教わった二人だけど、今回は少し違う。
あくまでも今回は何かを持ち帰った訳じゃない。
ダンジョンの調査という名目に加え、映像証拠込みで持ち帰っただけ。
意味が無いとは思わないけれど、何故こんな額に? 二人は驚愕する。
「えっと、ウィンディさん、毎回思うんですけど、今回は如何してこんな金額になっちゃってんですか?」
千世が恐る恐る尋ねる。
するとウィンディは首を傾ける。
「はい?」と、遠回しに言っているように見えた。
「当然の金額だと思いますよ。ダンジョンと言うのは危険な場所です。そこから何かを得てくると言うことは、それだけで素晴らしい功績です。また、今回の場合はこちら側が依頼をした調査も含まれています」
「そうなんですか?」
「はい。それから先程でに入れたと思しき魔石ですが……本日はお持ちでしょうか?」
「は、はい」
千世は鞄の中から魔石を取り出した。
ウィンディは受け取ると、早速鑑定と買取りを始める。
なかなか良い代物らしく、「なるほど」と口走る。
「コレはかなり良い魔石ですね。たくさんの命を頂いた後が見えます。特別なタイプのものではないので、+十万円ですね」
「「うっ!」」
ドンドン金額が積み重なる。
流石にここまでくるとドン引きのレベルを通り越す。
「不満ですか?」
「い、いえいえいえいえ。不満なんてないです! だ、だけど、その……」
「何かありましたか?」
ウィンディは呆然と聞き返す。
千世は言い難いが、それでも答えた。
「やっぱり受け取れないです」
「何故でしょうか?」
当然の疑問だった。
ウィンディは千世の言葉の意味を理解できない。
「だって、コレじゃあ亡くなった人が可哀想ですよ。あんな何にもないダンジョンで、一方的に殺されるなんて……非情です」
「それがダンジョンですよ。人を簡単に喰い殺す。それこそがダンジョン、変え難い事実です」
「だけど!」
「それに……」
千世の必死の訴えも聴かない。
むしろウィンディは千世の心を丸め込む。
「何も残していないわけではありませんよ。確かに本人や遺族方々にとっては悲惨な事故による結末ではありますが、より多くの人にダンジョンと言う存在についての認知が深まると言うわけです。そんな残されてしまった忘れ形見をお二人はこうして持ち帰ってこられた。それは、とっても名誉あることですよ。誇って良いはずです。それが亡くなった方々の最後のメッセージなのだから」
とっても上手いことを言われてしまった。
だけど確かにそうでもある。ウィンディの言い分は説得力があった。
しかし千世はまだ足りない。
本当にこれで良かったのかと悩む中、ウィンディの手から小切手が押し込まれてしまう。
本当に受けたら辛かった。
しかしウィンディはそれ以上のことは言わずに去って行く。業務に戻って行ってしまい、しばしの間千世と師走は二人きりで部屋の中で黙っていた。
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