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【悲報】ダンジョンで撮影したら、間違って誤配信してました〜回避特化な私が、何故かバズってしまった件  作者: 水定ゆう


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第55話 助けて、カメラドローン!

百聞は一見にしかずとも言う。

 千世と師走はしばしの間固まった。

 いわゆる放心状態と言うものだが、それも致し方ない。これが配信じゃなくて良かったと、改めて思う。


 ここが事件現場。

 そしてこの滑りは……人の血だ。


 全身を悪寒が駆け抜ける。

 さっきからその状態で、顔色が青ざめてしまった千世。流石に言葉を失う師走。

 そんな構造ができてしまった。


「マジかー。ここかー」

「本当に見つけちゃった……ねっ」


 千世の返事は依然として弱々しい。

 メンタルにグッと来るものがあり、目を細める。


 しかしシーカーアバターが消えていない。

 ダンジョンから強制的に吐き出されない辺り、二人とも人が目で見て判るレベルでは、精神力は尋常ではない。


「と、とりあえず手を合わせておこう!」


 千世はここで亡くなった人に手を合わせる。

 可哀想と思う気持ちが先行し、それでもこうはなりたくない、ならないように気を付けないとと、命失くした人達に誓う。


「にしてもさ、こんな狭いスペースで、そんなことってある?」

「ど、如何かな?」


 師走が疑問に思うのも無理はない。

 この場所に立ち止まって約五分。

 実際、壁や天井。あらゆる面は調べていた。

 しかしめぼしいものはなく、唯一見つかったのは、壁の形が一部変形している程度に留まる。


 あまりにも情報がない。だってこの程度だったら、洞窟内の未知の環境下では、普通にあり得そうだった。


 だからこそ、千世も師走も腕を組む。

 如何したものかと思い、先を見つめた。

 まだ暗闇は続く。この先に行くべきか、行かざるべきか、選択が迫られる。


(行った方が良いのかな? それとも帰るべき……だよね)


 千世の中では答えが出ていた。

 これ以上の探索は必要ない。

 後ろ向きかもだけど、千世の意見は大いに正しい。いくらシーカーアバターがあったとしても、ダメージがフィードバックする例もある。

 それを考慮して、ここで一旦引き返すのは誰にも責めることのできない、命を優先する選択の一つだった。


「師走!」

「分かってる。引き返すんでしょー。流石に今回は私にもヤバさが伝わるよー」


 師走が珍しく後ろ向きだった。

 頭の側頭部を掻きながら、事態の深刻さを受け止める。


「ちな、ここまでで何か映ってないかとか、確認できないかな?」

「何かって?」

「カメラドローン」


 師走はカメラドローンを指差す。

 ここまで歩いて来て、何か一つでも敵モンスターの痕跡を見つけることができていたら万々歳。

 それ次第で、この先が変わると言っても良い。


「とりあえずこの辺を見てみない?」

「この辺を見てみるって?」


 何を言っているのか千世には微妙に伝わらない。

 しかし驚くことに、師走はカメラドローンを捕まえると、そのままグルグルと回転し始める。まさかの手動。カメラドローンはホバー機能を止め、クルクル回された。


「なにしてるの?」

「なにって、映像を撮ってるの。このカメラって暗闇でも映せるんでしょ? だっならこうすれば全体が映るよ」


 確かにそうだ。暗闇の中でも、ライトがほぼない状態で光源に頼らず映像を綺麗に収めることができた。

 この方法で敵を索敵するのはナイスアイデア。

 とは言えあまりにも原始的なやり方だった。


「とりあえず撮れてると思うから、確認するよー」

「あっ、待って待って」


 二人は映像を確認する。

 鮮明に映ってはいたものの、冷たい岩肌があるだね。

 モンスターの影も形も見当たらず、二人は眉根を寄せる。


「何にもないかー。残念」

「残念って、そんな師走……」


 二人は少しだけ落ち込む。

 ここが事件現場であることから、ここがモンスターの縄張りだと思ったからだ。


 見つからないと言うことは今は居ない。

 ホッと胸を撫で下ろすのは良いが、同時に危険と隣り合わせが継続。

 いつ、何処から襲って来るかも未知数のまま時間と冷や汗がゆっくり流れる。


「まあ、このまま引き返せるなら良いんだけどねー」


 師走がポツリと呟く。

 しかしそれがフラグになってしまった。


「はっ!」


 師走は顔を上げた。

 あまりのスピード感に千世は目を奪われるが、ほんの一瞬。一瞬だけ、脳内に警告が示す。


[背後から来るよ!]


 その瞬間、脚が竦む。

 あまりにも突然だったからだけど、それよりも先に千世の感覚が気が付いていた。


「師走!」


 千世は高らかに叫ぶ。

 洞窟内を声が反響した。


「分かってるよ!」


 師走は一気に走り出す。

 千世の手を握ったまま、千世の意識が理解する前に走り出していた。


(えっ、走ってる?)


 千世は心の中で唱えた。

 しかし口には出せない。だって師走は脇目も振らず、ただ一心不乱に駆けていた。


 たけど分からないのはその方向。

 咄嗟の行動だからではなく、少し考えれば分かるのだが、洞窟の奥へと逃げていた。


 もちろん理由はある。

 背後にモンスターがいて、そのことに気配だけで気が付いたから、咄嗟の人間の行動が、師走の脳を掻き立ててそうさせていたのだから、誰も悪くはないのだ。

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