第54話 例の事件現場に来てしまった
やっぱり重めの話はないと話が単調になっちゃう。
千世と師走は更に一本道を進む。
左右の壁が少し狭くなっている気がしたが、天井だけはやけに高い。
「にしてもさ、このダンジョン何処までも一本道でしょ?」
「うん」
「何処で襲われたんだろうね?」
師走はふと気になっていたことを口走る。
確かに千世もそれは気になっていた。
このダンジョンは今の所、何処まで行っても真っ直ぐ。
一本道が続いていて、迷うこともない。
モンスターと鉢合わせでもしたら、確実に戦闘になり、逃げるにしても逃げられなかった。
そんな状況下に置かれているにもかかわらず、ここまで一切モンスターに出遭っていない。
本当、いつまで続くのか。
千世と師走の緊張感も長引く。
「わ、分かんないけど、でもね。こんな所で襲われたら、逃げられないよ」
あえてフラグを言ってみる。
しかし何にも起こらない。なんで何にも起こらないのか。
そんなの決まっていた。千世が居たからだ。
「私の【危険予知】も反応しないもん。モンスターが近くにいないのかも」
「あっ、逆に見向きもされてないのかー。ふーん、ちょっと舐められてるね」
「そんなことはないと思うけど。ただ、ねっ。もしかしたら、モンスターもすぐ近くにいて、私達を襲いたくても襲えないのかも?」
千世はなんとなくそんな予感がした。
もちろん確証はないけれど、気配? のようなものは、薄っすら感じ取れた。
師走もピリピリ違和感を感じていて、結構近くでヌメッと、気配を殺して近付いて来ている気がしてならない。
「あはは、流石に不気味だねー」
「こ、怖いよ」
千世と師走は少しだけ足早になった。
すると余計に道が狭くなり、壁に手を付いて進む。
天井からは水滴が滴り、首筋に触れた。
足元も湿っているせいか滑ってしまい、転びそうになる。が、変なことがあった。
「あれ?」
「如何したの、千世?」
少しだけ周りが開けた。
円形に広がっていて、少しくらいならしゃがめそうだ。
そんな中、千世は足元を凝視する。
スマホのライトを使って地面を確認すると、師走は疑問を抱く。何かあったのか、とっても気になって仕方ない。
「千世、地面に何かあるの?」
「うーん。分からないけど、この辺だけ妙にぬかるんでるんだよね」
「ぬかるみ? あっ、確かにこの辺だけグニョグニョするねー」
師走は靴の裏でぬかるみの辺りをグリグリする。
地面がこの辺りだけ妙な滑り具合があり、師走は気色悪そうにした。
加えれば、千世も苦い表情を浮かべ、嫌な予感がプンプンする。
「そうだ、カメラドローン!」
千世は思いつく。
カメラドローンを近付けてこの辺りを良く見てみる。
「一応撮影のために用意しておいて良かったよねー」
「う、うん」
流石に配信はできない。
とは言え情報をかき集めるためにも、映像証拠は重要。そう思って、密かにここまでを撮影していた。
「そう言えば、そのカメラドローンって、普段のとは違うんだよね?」
「うん。お母さんに頼んで借りてきたんだ」
今回使っているものは高性能のカメラドローン。
普段使っているもののかなり良い作りだけど、今回は一味違う。
見た目はシックな黒を基調してしているけれど、それよりも風景に溶け込む率が強い。
おまけにホバーしてはいるが、如何やって飛んでいるのかも不明。
ましてや強力なライトを搭載していなくても、暗闇の中をはっきりと鮮明にクッキリ映し出せる凄技。それが今、千世達の周りを静かに飛んでいるAI搭載カメラドローンだった。
「凄い。普通に私達の顔も映ってるよ」
「そうだねー。でもその分お値段も?」
「う、うん……お母さん、一括で買っちゃったみたいだけど、凄いよね」
実際ローンなんて組んでいないらしい。
家も一括だったから分かるが、今回のカメラドローン、市販されているものよりも、ゼロが何個も多かった。
聞いただけで気を失いそうになってしまい、保険にも入っていないことから、怖さが倍増する。正直気が気でない。
「え、えっと、気を取り直して……えっ」
千世は言葉を失う。
カメラドローンのレンズが映し出した地面はぬかるんでいたが、少し赤くなっていた。
師走は千世の表情が固まったので首を捻る。
明らかに様子がおかしく、冷や汗を掻いていたので、自分も映像を覗き観る。
「私にも見せてー」
師走も映像を観る。
確かに映像では地面はぬかるみ、若干赤い。
しかもドロッとしていて、絶句した。
「師走、もしかしてコレって……そんなことないよね?」
「えっ、もしかして千世。アレを想像してるの? まさか……ね?」
二人は言葉を選んだ。
流石に信じたくないのだ。
しかしながら、フツフツと心の内側に焦りが見える。
((ここがもしかして……))
お互いに同じことを考える。
同時に冷や汗が、顳顬や額からも溢れ出る。
血の気が引くとはまさにこのことで、吐き気がないだけ精神が強かった。
二人は事態の深刻さを実感した。
この場所は踏み込んじゃ駄目だった。踏み荒らしちゃ駄目だった。
何故かって? そんなの決まっている。
ここは例の事件現場。今、千世達が踏んでいるのは、ここで失われた命の断片だからだ。
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