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【悲報】ダンジョンで撮影したら、間違って誤配信してました〜回避特化な私が、何故かバズってしまった件  作者: 水定ゆう


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第50話 「えっ、昨日のニュースでやってたダンジョンに?」

とんでもない一言。これ言われたら、たいていの人は固まるはず。

 千世は朝から憂鬱だった。

 だって昨日はあんな電話が来るとは思っていなかった。とは言えない。何となく自分で電話に出る前、そんな気がしていた。


「なんで取っちゃったんだろ」


 そのせいで千世の気持ちはブルー寄り。

 家を出る足もやけに重く、溜息が溢れる。


「大体、なんで私ならできるって思ったのかな?」


 千世はそこが不思議でならない。

 自分はお母さんとは違うし、お母さんよりも行動力は全然ない。

 そんな自分が? 何故? あまりにも突拍子が無さすぎて、逆にハイになってるんじゃないかと思う。


「私はそんな危険なことはしないよ。安心安全、それ以外に答えはないよ」


 あのニュースを観た後だとそうなる。

 ダンジョンでの死亡例は多いが、あんな風にニュースの速報として出るのはよっぽどの大事だと、直感していた。


「あっ、この曲がり角……」


 何となく嫌な予感がする。

 きっと師走が出てくるのは確定で、抱き付かれるのも確定。だけど千世はそんな方は考えていない。

 きっと言ってくる。話してくる。何となくが確信に変わる。


「ま、まさかね?」


 千世は曲がり角を曲がる。

 すると背後から誰かが駆けてくる音がした。


 軽快な足取り。弾むようにリズムを刻む。

 それからスルリと腕が伸び、千世の体をギュッとする。


「おっはよー、千世」

「あっ、おはよう師走」


 案の定師走が居た。

 今日は朝練がないらしく、ゆとりがある。

 そんなゆとりがあるせいか、師走は早速本題を切り出す。逃げられる前に捕まえる。


「そうだ、千世! 昨日のニュース観た?」

「ニュースって?」

「テレビでもμTubeでもやってたでしょ? ダンジョンでの死亡事故。アレって絶対モンスターの仕業でしょ? しかもまだ(おおやけ)にされてない新ダンジョン!」

「そ、そうなんだ」


 師走のテンションが高い。

 これは予感的中の合図だ。


「ねえ今度行ってみようよ!」

「行ってみるって、何処に?」

「決まってるでしょ、ダンジョンだよダンジョン。新ダンジョン」


 師走は千世の思っていた通りのことを平然と口にした。

 目がキラキラしている。少年のような目で、千世は少し引いてしまう。


「えっ、昨日のニュースでやってダンジョンに行くの?」

「うん」

「何かの間違いじゃないの?」

「ううん、間違ってないよ」

「えーっと……」

「頭の回転早い千世なら分かるでしょ?」


 師走の圧を感じた。

 この好奇心の衝動を抑えられないのは師走の良い癖だけど悪い癖でもあった。


「えーっと、楽しそうだから?」

「まあ、それもあるかな」

「それもあるって、それ以外に師走を動かすものって何?」


 千世は首を捻る。眉根を寄せてしまう。

 それから少しの溜めがあり、師走は答える。

 だけど何にも面白くない。


「衝動だよ!」

「衝動? 楽しそうと同じじゃないのかな」

「うーん、まあそうかも」

「同じなんだね」


 結局何にも変わらない。師走は師走のままだった。

 楽しい=衝動。衝動=楽しそうで釣り合っている。

 だからこそなのだが、千世はこう思う。


(そんなの危ないよ。危険に飛び込むようなものだよ!)


 千世の脳が先行してその意識を掻き立てる。

 人を飲み込むような危険なダンジョン、これ以上踏み込んじゃ駄目だと思った。


 ましてや千世がここまで警戒するのはよっぽど。

 何となくこの話題に踏み込むと、良くないことありそうでならない。絶対大変な目に遭うので、強く師走に当たる。


「で、でも危険だよ! 今回はやめた方がいいよ!」

「なんで!?」

「なんでも何もないよ。人が死んでるんだよ。そんなとこ、私達みたいな初心者が行っちゃ駄目だよ!」


 千世は強く抗議を入れた。

 もちろん千世の意見は正しい。正しいからこそ反論の余地が無くなる。

 師走の顔色が悪くなり、これ以上は無理と判断。


「そっか、それじゃあ仕方ないね」

「師走?」


 師走はつまらなそうにしていた。

 踵を返して振り返り、目が正眼を向くと、トボトボ歩く。

 明らかにテンションダウンしていた。


(師走、つまらなそう)


 誰が見ても分かる。

 もちろん千世の目には一発で、足捌きが悪い。


「如何にかしないと……いやいや、私が考えることじゃない……はぁ」


 千世は色々考えた。

 考えたらパニックになる頭で必死に考えた。

 その結果、口の方が先に動いていて、千世は自分の言うことに困惑する。


「と、とりあえず行くにしても情報を集めないと!」

「えっ、行ってくれるの?」

「あっ……」


 千世はやってはいけない墓穴を掘った。

 自分からこれを言ってしまうと、後が怖いことになるのは明白。

 面倒臭い道に直行してしまい、千世は顔が青ざめる。


 対して、クルンと振り返った師走の顔はパッと晴れていた。

 目がキラキラしていて怖い。

 千世はそう思いたじろいだが、もう時すでに遅し。


「そっか、情報だねー。それじゃあ明日市役所に行って、ウィンディさんに情報貰おっかー!」

「えっ、まだ私は行くなんて一言も」

「よーし。元気出て来たし、学校行くぞぉ!」


 師走は拳を振り上げた。

 自分の感情を振り上げて、元気を取り戻している。


 しかし千世の顔は優れなかった。

 「なんでこんなことに」と、指先が弱々しく師走の方に向けられていた。

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