第49話 お母さんからの電話2
情報社会は伝達も早いのだ。
スマホがピカッと光った。
ブルブル震え、バイブレーションを上げる。
テーブルの上でカタカタ動く。
千世は何か嫌な予感を感じ取ったものの、仕方なく手を伸ばす。
「だ、誰から?」
恐る恐る手を伸ばして、スマホを手に取った。画面を見てみると、そこには決まってあの名前が浮かぶ。
「なんでお母さんから?」
あまりにもタイミングが良すぎて不気味。
千世は身震いをして、冷や汗がダクダク出そうになる。
「な、なんだろう?」
千世は仕方なく電話に出る。
するとスマホの向こうから、千世のお母さん、千里の声が聞こえてくる。
『あっ、やっと出た!』
「あ、お母さん。如何したのこんな時間に?」
千世は嫌な予感が脳内に警報サイレンを鳴らしていた。
しかし気にしちゃ駄目だと振り払うも、千里は伝える。
『今、μTubeでそっちに関するニュースがやってたけど……』
「うっ!」
脳内に流れるサイレンが更に爆発する。
胸の奥を突き上げるような衝動が、嫌な方へと向かい始める。「これ、絶対に言われる」そう思った瞬間、千世のお母さん千里の声が聞こえた。
『やってたわよね? 鳴雷市の方で……』
「あっ、やっぱり」
この言葉が出た瞬間、「やっぱり」と千世は思う。
もうこうなったら止まらない。
大きな溜息が出そうになる中、千世はグッと押し殺す。
『やっぱり? ふーん』
「分かってたんでしょ、お母さん? 私がそう言うって……」
『そうかしら?』
「そうでしょ。お母さんは、いつもそうでしょ?」
千世はちょっと唇を尖らせる。
すると千里は更に続けた。
『まあいいわよ。それで千世、鳴雷市の方で男性が二人遺体で発見されたらしいわね』
「う、うん」
別に言わなくてもいいのにと、千世は思ってしまう。
しかしそんなことは全く気にしない。
千里は千世に話し出す。
『やっぱり。ってことは、ダンジョンで襲われたって言うのもよね?』
「まあ、そうかもね」
『そうかもね? あれ、千世は興味ないの?』
「きょ、興味は持ちたくないよ」
千世は千里とは真逆の性格。
何で楽しそうなのか、千世には理解できない。理解できないからこそ怖い。変に警戒してしまい、全身が震えた。
『あっ、千世ったらビビってるでしょ?』
「び、ビビってるよ」
『ふふっ。千世は相変わらず千世なのね。千世らしいけど』
何でか笑われてしまった。
千世はムッとした表情を浮かべるものの、今度は別の溜息が出る。何だか如何でも良くなった。そんな徒労感が出た。
「なんだか褒められてない気がする」
『褒めてるわよ。何処まで行っても、千世は千世ってこと。それだけ自分の意思が強い子って珍しいのよ? 流石は私の愛娘ね』
千世はそう言われて嬉しい。
とは言え未だに本題が見えてこないので、そろそろ話して欲しかった。
「それでお母さん、急に電話していたのって……」
『もちろんその件よ。まさかそっちでもあるなんてね。最近は少なかったのにね』
「やっぱり……ってことは」
『だからね千世、私の代わりに調査して来てくれないかしら?』
「嫌だ!」
千世は即答した。
すると千里は『まあそうよね』と分かりきっていたらしい。
『でもね千世』
「でもなんてないよ! 人が死んでるんだよ? そんな所にわざわざ行きたくないよ!」
千世の反論はもっともだった。
最近はダンジョンに行くのも悪くないと思っていたけど、恐怖の方が先行していた。そのせいで体がすくみ、千世は萎縮する。
まあ、誰だってそうだろうが。
「そもそもなんで私が行かないと駄目なの?」
『だって千世は探索者でしょ?』
「探索者だからって、私には無理だよ!」
『如何して?』
「だって、私はお母さんとは違うもん。怖いもん」
千世はそう答える。
当たり前のことだけど、千世と千里は性格が違う。真逆のタイプで、危険に飛び込む千里と危険に飛び込まない千世なのだ。
『うーん、千世なら行けると思ってんだけどね』
「如何してそんな結論が出たの?」
『だって私の愛娘よ? 本当はこの手のことは私の出番かもしれないけど、今回はそっちに居ないから千世に任せようと思って……ねっ?』
「分かんないよ」
千世は話を完全スルー。
通話を切ろうとするが、千里の寂しそうな声が聞こえた。
『ダンジョンで一度人の味を知ってしまったモンスターは強くなる』
「えっ?」
『成長促進効果も増大して、外に出てくるかもしれない。そうなった時が本当に一巻の終わりなの』
モンスターが外に出る? そんなフィクションが本当に起こるの?
そう言えば世界ではダンジョンの外に出たモンスターが縄張りを広げるために街中に侵入して暴れ回り、たくさんの人を殺したって事例もある。
アメリカの方でもヨーロッパの方でも確認されていた。
今、日本で起きていないのが奇跡な程で、県や地域の再統制を行なっただけで済んでいた。
だけどもしもモンスターが外に出て来たら。そうなったら私の安全安心も何処かに消えて無くなるかもしれない。千世はそんな気がした。
「嫌だな、そんなの」
『千世?』
「私の安全安心もだけど、私のごくごく小さな周りが傷付くのなんて、嫌だよ」
千世の口からポツリと出た。
もう考えていない。頭のキャパシティは残っていない。
「お母さん、私にはできるのかな?」
ふと尋ねていた。まだやるとは決めていない。
怖いの方が強く出ていた。萎縮が解けてはいなかった。
すると千里は千世にこう言った。
『できるわよ。なんたって、私の実子で愛娘。冒険スピリットの血が流れているんだからね』
そう言われて何だか怖くなる。
あんな無謀な性格にだけはなりたくなかった。
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