第47話 忍び寄る影
この世界の悲しい真実です。
だけど、どんな世界もこんな感じで舐めたら……ね。
ダンジョンとは楽しいところではない。
ダンジョンとは命のやり取りを行う場所だ。
興奮や感動とは裏腹に同時にたくさんの命が潰えていく。
そんな恐ろしい場所だからこそ、人々は呼応してダンジョンに集まる。
時に何かを得、時に何かを失う。
体の一部や命すらモンスターにとってはただの餌でしかなく、奪って行くのだ。
だからこそ、得られたものには全て価値がある。
ただのエンタメや欲求を解消してくれるものではないことを、戒めとしてこの世界にも記録する。
「けっ、ここジメジメしてんな」
痩せ男はボヤいた。
すると続け様に禿げ男は苦言を呈する。
「冷たぇ。俺の頭が禿げてんの、分かってやってんのか?」
ポタポタとダンジョンの天井から滴り落ちる水滴が、露出した頭皮に付着する。
冷たい上にちょっとネバネバしている。
気持ち悪くて仕方ない。
「仕方ないだろ。ここは洞窟だぞ?」
無精髭を生やした男が腕組みをしたまま答えた。
ダンジョンに何度も潜ったことがあるので、男は達観していた。
おまけに格好も少し違う。そのことを二人の男達は怪しく思う。
「にしてもよ、アンタ何でそんな格好なんだ?」
「そうだぜ。洞窟に入る前はそんな格好じゃなかっただろ」
そう尋ねると、無精髭の男は答える。
「これがダンジョンにおける正装だ。大体俺はお前達みたいな無謀な奴を連れ戻すために付いて来たんだぞ」
「「はぁっ?」」
二人は全く分かっていない。
自分達がどれだけ無謀なことをしているのか、何か間違っているのかと、頭を抱えた。
「何か変なのか、おっさん?」
「当たり前だ。シーカーアバターも無しでダンジョンの中に入る奴は、鼻っから死にたい奴かダンジョンを甘く見た若輩者のどちらかだ」
無精髭の男は厳しく突きつける。
すると痩せ男と禿げ男はムカついた。
何様のつもりだと無精髭の男を睨み付ける。
「何だよおっさん。ここまで来て説教か?」
「説教じゃない。本当のことを言っているだけだ。念のため聞くが、ダンジョン調査課で正式なライセンスは取ったのか?」
「そんなもん必要ねぇよ。俺達はダンジョンで一発ぶち当てて、大金持ちになるんだよ!」
如何やらマズいことになった。
許可証=ライセンスをとっていないのに、こんなところに来たとなると、とんでもないことになる。
もちろん勝手に行くのは構わない。
が、何の対策も無しに来たのと同義。
シーカーアバターも無い奴が来ても良いところではないのだ。
「今すぐ引き返せ。これは忠告ではなく命令だ」
「はっ? 何様」
「俺はダンジョン探索者として言っている。お前達には無理だ。シーカーアバターも作れない、心の弱い奴にここに居る資格はない」
無精髭の男はそう突きつける。
しかし二人は全く聞き耳を持たず、無精髭の男の忠告を無視して先に行ってしまう。
「うるせぇな。おい、行こうぜ!」
「おう!」
「馬鹿か、お前達! チッ」
無精髭の男は舌打ちをする。
すると二人の男は洞窟の先に立ってしまう。
無精髭の男は追いかけるが、その直後に変な声が聞こえた。
「だから言ったろう。おい、何があった!」
無精髭の男はすぐさま向かった。
そう距離は離れていないはずだ。
しかし行った時にはすでに手遅れなムードが流れがれていた。
「お、おいおい、さっきからなんだよ」
「ピチャピチャって、気色悪いな」
男達はモンスターに囲まれていた。
しかし何が居るのかは分からなかった。
「チッ、【暁光】!」
無精髭の男は拳を振り上げる。すると光が昇り、洞窟の中を一瞬照らし上げる。
暗闇の中により濃い黒い影が一つ伸びる。
如何やらモンスターは一匹。何処に居るのかと、視線を右往左往させる。しかし見つけることができず、モンスターは無精髭の男には目もくれず何もできない二人に襲い掛かる。
シュパン!
「うっ!」
痩せ男は倒れた。
胸を一突きされ、心臓が抉り取られる。そのまま男の体は動くことはなくなり、パタリと倒れた。
「お、おい、大丈夫か!」
禿げ男は声を掛けた。
しかし既に手遅れで、シーカーアバターを持っていないので残念ながら即死。
それから今度は禿げ男に攻撃が入る。
無精髭の男はそれを見越して助言したが、時既に遅し。
「おい、俺が行くまで待て!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! うっ!」
禿げ男の皮膚が蕩けた。
嗚咽を漏らしながら生き絶え、そのまま帰らぬ人になる。
無精髭の男はその光景を見て選択を迫られる。
このままでは駄目だ。ここで仕留めるしかない。そう思ったものの、無精髭の男は見えない死角からの攻撃を突きつけられる。
シュパン!
「甘いな!」
背後からの攻撃。狭い通路での攻撃を受け止めるが、手が溶け出した。
無精髭の男は慌てて手を離したが、その隙に体を絡め取られ、そのまま地面に叩きつけられる。このままだとマズい。そう悟った瞬間、再び能力を発動した。
「【暁光】!」
眩い発光が苦手なのか、モンスターは無精髭の男を離す。
その隙を素早く突き、見えない所に攻撃を加えた。一発入った感触がして、そのまま逃走する。
「逃げるしかないな!」
無精髭の男はそのまま振り返ることなく逃げ帰る。
残念な勝てない。相性も悪く、準備も足りない。
そう思った無精髭の男は犠牲になった男達のことを置いて帰り、急いでダンジョンの外へ向かうべく、光を目指すのだった。
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