第44話 こんなに小人が居たなんて
たくさんの小人に囲まれたら、みんなはどうする?
「ううっ」
「あー」
千世と師走は地面に横たわっていた。
嗚咽を漏らしてはいたものの、怪我は一つもしていない。
上手く受け身を取ったおかげもあるけれど、倒れ方が見事だった。
これも師走のおかげだった。
「師走、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。だけど、ちょっと痛いかもねー」
千世と師走は体を起こした。
とりあえずお互いに無事なことを確認すると、一体何が起きたのか、目の前のものを見て想像する。
「えーっと、アレは何?」
「わ、分かんない」
目の前には大量の赤いリンゴが転がっていた。
推定百個は確実に積み重なっていて、一本の木からアレだけのリンゴが落ちてくるなんてダンジョンじゃないとありえない。
ビックリを通り越して、もはや千世達にとっては危険物だった。
危うく窒息死させられる所だったと、心身共に安堵する。
「まあとりあえず助かったねー」
「う、うん。ごめんね、師走。突然逃げてって叫んで」
「いいよいいよ。どうせ【危険予知】の結果でしょ? それにしても肩車をしたまま【加速】を使うのは駄目だねー。アレは死ぬ」
確かにアレは首が終わっていた。
千世は師走の身を案じていなかったことを辛く思ったが、本人がポンポンと肩を叩いてくれてホッとする。
「それよりさ、アレは何?」
「そうだよね。アレ何かな?」
千世と師走は大量のリンゴの周りを見た。
そこには小さな小人がいる。
もちろん危害を加える気も、加えられる気もなかった。
その証拠もある。
千世と師走が倒れている間、他のモンスターに襲われていないのは、小人にも守ってもらったから。
だけど千世達はおかしなものを見た。だって最初は一人だったのに、目の前にはたくさんの小人がリンゴを囲んでいた。
「こんなに小人って居たんだね」
「そうだねー。しかも全部同種だよ」
「うん。頭の帽子の色が違うのかな?」
千世と師走の目の前には、ここに連れて来てくれた小人と同じ種族の小人が群れをなしていた。
しかもリンゴをチラチラ見ていて、体をクネクネさせている。
「もしかしてさっきの小人って、本当はこのために私達をここに連れて来たかったのかな?」
「そうかもねー。また出汁に使われちゃったかも」
「あはは。そうかもね」
千世と師走はちょっと可愛くて笑ってしまった。
それにしても如何して囲んだまま取ろうとしないのか不思議に感じた。
「師走、如何して小人達は取らないのかな?」
「うーん? もしかして警戒してるとか?」
「そうなのかな? そんなことしなくても、何もしないのに……あっ」
ふと小人達を見てみると、リンゴを囲んで手を伸ばす。
恐る恐る手にすると、ギュッと抱き寄せていた。
その反動で積み重なっていたリンゴが崩れる。
コロコロと転がって、金色のリンゴが千世の目の前にやって来た。
「あっ、さっきの金色のリンゴだ」
「良かったぁー。傷とか入ったないっぽいなー」
「うん。でも、なんで金色なのかな?」
そんなの千世にも師走にも分からない。
けれど金色で綺麗。光沢感があって、置物にも使えそうだった。
「飾ったら高級感あるよねー」
「う、うん。でも、食べれるのかな?」
問題はそこ。リンゴの木に生っていたは良いものの、食べれないと意味がない。
コンコンと傷を付けないようにして軽く叩く。奥には芯があって、密度も極めて高い。
おまけに手に馴染む大きさと、ずっしりとした感触に確信を持つ。
「やっぱり食べれるのかも?」
「そこは疑問なきじゃなくても良いでしょー。まあそれは置いておくとして、良かったねー」
「う、うん」
こんなにたくさんのリンゴを手に入れることができたのは幸運以外の何物でもない。
千世と師走はそれを実感すると、未だにリンゴを一つしか抱きかかえない小人達を注視した。
「取りに行き辛いよね」
「そうだねー。ズカズカ踏み込んだら、多分警戒されるだろうし、少し待とっか」
千世と師走は急いでいた。
リンゴラゴンがいつやって来るか分からないからだ。
もしもここにやって来られたら、今持っている金色のリンゴだけを死守することになる。
そんな苦行は背負いたくない。
安心安全を望む千世にとっては最悪だった。
だけど小人達はまだ吟味している。
千世達の存在なんて全く気にせず、背中を見せていた。
しかしながらようやくリンゴを選び終えて満足したのか、小人達は動き始める。
だけど面白いことになった。小人達が道を開けてくれた。
「嘘っ!」
「凄い。私達が倒れるように、大きな道を作ってくれたよ。これって、私達にってことかな?」
意思疎通ができたのかはやっぱり不明。
でも小人達がやってくれたことは、間違いなく何年の存在を把握してのこと。今度は貴女達の番だと、言ってくれているようで、何となく興奮してしまった。
だってこんな体験、初めてしたんだから、千世と師走は仕方なかった。
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