第41話 リンゴラゴンは攻撃的じゃないの?
意外に凶暴そうな見た目で大人しい生き物って多いよね。
巨大なドラゴン。まさかこんな所で出会うことになるとは思わなかった。
千世と師走は木の幹の裏に隠れたまま、のっそのっそと首を伸ばす姿を見守る。
「リンゴラゴン、何してるのかな?」
「さあねー。でも、こっちには気付いたないみたいだよー」
さっきからリンゴを食べていた。
スマホで名前を調べるついでに生態を調べてみたけれど、リンゴを食べて成長するのは確定。おかげでさっきよりもリンゴの香りが強く出る。
「甘い香りがするよね」
「うん。もしかしてさー、コレってリンゴ飴?」
「確かにそうかもね。でも、このままリンゴを食べ尽くされちゃったら……」
ちょっぴり不安がよぎる。
もしかしたらこの周囲のリンゴは全部食べ尽くされてしまったのかもと、千世は怖くなる。
その感情のベクトルが師走にも言葉なく伝わり、少し前に出ることにする。
「それじゃあ叩いてみよっかー?」
「た、叩いてみるって?」
師走は立ち上がると、能力を使いそうになる。
一体何をするのかな? と、考えることもない。だって、師走が“叩く”と言ったら、正面に立って相手をするだけだった。
「ふぅ。【加速】!」
師走の姿が消えた。
目で追うことはできず、何処に消えたのかな?
千世はキョロキョロ視線を配ると、拳を握ってリンゴラゴンに叩き込む。
「せーのっ! ありゃ?」
師走は目を丸くする。リンゴラゴンに拳を叩き込んだのは良いのだが、まさか硬くもなく、むしろ柔らかい体にびっくり。
拳が叩き込まれ、リンゴラゴンも異変を感じた。
体の一部が損傷していて、さらに気が付くや素早く再生した。
「はあっ!? 急に再生して、ちょっと抜けないんだけどー!」
「師走、逃げて!」
「げっ!?」
リンゴラゴンは長い首を使った。
キリンがネッキングをするみたいに首を振り子のように使って、動けない師走に頭を叩き付ける。
しかし師走も覚悟を決める。【加速】を使って素早く退避すると、ネッキングの強烈な一撃を躱した。
とは言え腕には痛みが走り、流石にまともに攻撃するのは難しくなる。
「痛てて。なんとか抜け出せたよー」
師走は腕が繋がっていることを改めて実感。
安堵して胸を撫で下ろすと、千世は声を掛ける。
「師走、大丈夫!」
「うん、大丈夫大丈夫ー。って言いたいけど、リンゴラゴンは流石にドラゴンだけあるよ。再生力半端ないしさー、腕を取られそうになっちゃったー」
恐ろしいことを平然と口にする。
千世は怖くなって木の裏に隠れた。
「ど、ど、ど、如何しよう! このままじゃ、えっと、倒せないけど……【危険予知】が反応しない?」
千世は変に思う。
視界に捉えられているのに攻撃してこない。
おまけに【危険予知】が発動しないので、危険に遭う心配がない。これは一体なぜ? そう思った矢先、答えは一発で分かった。
「ねぇ千世、リンゴラゴンが攻撃して来ないんだけどー」
「えっ!? こっちは攻撃したのに、反撃してこないの?」
「うん。体も再生しきっちゃってるし、もしかして興味を持たれたないのかな? クンクン……手が甘い匂いする」
師走は自分の右手の匂いを嗅ぐ。
ベタベタした液が纏わり付いていて、おまけに甘い香りがした。
「コレ、リンゴ飴だよ。水飴の匂いとリンゴの甘い香りがする。それ以外害が全くないよー」
「それじゃあ安全ってこと?」
「今の所はね。でもさー、如何して攻撃して来ないのかな?」
師走の疑問は確かにそう。
リンゴラゴンは千世と師走には全く興味を抱くことなく、リンゴをとにかく食べまくる。
しかもあんなに体は大きいのに、頭が小さい。そのせいで口も小さい。
一つのリンゴを何口にも分けて食べていた。
「もしかしてこれって……」
「うん。完全に無視されてる。ってことは、さっき攻撃されそうになったの、私が攻撃したから?」
「多分そうだよ。でも良かった。これで一安心だね」
千世は安心して胸を撫で下ろす。
しかし師走はつまらなそうで、頭の上で腕を組む。
「まあいっかー」
「もしかして師走、戦いたかった?」
「うん。まあねー、だってドラゴンだよー? 強いでしょ」
「わ、私は戦いたくないけどね」
千世は戦いたくない派なので、師走の言うことは分からない。
だけど確かにドラゴンならきっと凶暴だと思ったたけど、そんなことはなかった。
「グゥォォォォォォォォォォォォォォォ!」
しかし、急にリンゴラゴンは鳴き声を上げる。喉の奥を締め付けるみたいな声を出すと、千世と師走は警戒した。
さっきまでの静寂が嘘みたいになり、臨戦体制を取る。でも、全くの無駄に終わった。
「な、なになになになに!? えっ」
「急にリンゴラゴンが鳴き始めて……あれ?」
リンゴラゴンは一目散に走って行った。
一体何が起きたのか分からない。
もしかすると、次のリンゴを食べに向かったのかも。と、推測はできたけど、一体何が起きたのかさっぱりになる。
「えーっと? 如何する?」
「うーんと、如何しよう?」
二人は急な展開に脳が追いつかない。
とりあえず一旦冷静になって考えることにするが、あまりの出来事に放心状態になってしまうのでした。
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