第39話 林檎森林
凡ミスです。投稿する小説を間違えました。
千世と師走は今日もダンジョンにやって来た。
今回は風見原と雨降の間にあるダンジョンで、最寄り駅から降りてバスに乗り換えてようやく来ることができる。
少し面倒な感じがするけれど、その方がちょっぴり楽しい。
今日の千世はいつも以上に穏やかで、不安が微塵も感じられなかった。
「千世、何だか楽しそうだねー」
「う、うん。今日は危険が少ないダンジョンらしいから」
「そうだよねー。でも、味気なくない?」
「味気なくないよ」
千世は師走の言うことを否定する。
何故なら安全第一がモットーなので、師走の言うことを否定してもおかしくなかった。
「まあいいけどさー。それで、さっきからバスで三十分くらい揺られているけど」
「そうだよね。思った以上に遠いかも」
「遠いかも? うーん、遠いかも?」
正直田舎の方に来ていた。
最寄り駅の名前も黄林と言って、あまり聞いたことがなかった。
「でもさー、景色はめっちゃ良いよねー」
「うん。これから行くダンジョンも楽しみだよね」
「楽しみ楽しみー。だって、上手くいけば私達も食べれるんでしょ?」
今回ダンジョンに行く理由は単純だった。
ウィンディさんに勧められたのもそうだけど、一つお願いをされてしまった。
それを果たすため、休日を利用して二人はバスに乗って行く。目指すのは森。しかしただの森じゃなかった。
「着いたね」
「着いたねー。結構歩いたよー」
「うん、ちょっと疲れちゃった」
バス停からしばらく歩いた。
最初はなんてことなかったけれど、その後アップダウンの激しい林道に入ると、有刺鉄線で雑に囲われた森を見つけた。
ここまで大体二十分。ようやくダンジョンが見えて嬉しくなる。
「ここが林檎森林」
「正確には天気市の中でもかなり特別な林檎森林らしいけどね。何が特別なのか、分からないけど」
千世はポツポツ呟いた。
ウィンディ曰く、この森は名前の通りリンゴがたくさんなっているらしい。
しかもダンジョン産は収穫が危険な分、栄養価もかなり高くて重宝するそうだ。いわゆる、貴重な産業資源になるらしい。
「でもさ、これって依頼だよね?」
「い、依頼?」
千世は首を捻る。師走はポカンとする中、「えっ?」と声を出した。
千世はもっと「えっ?」となってしまい、何が何だか分からなくなる。
「依頼じゃないの?」
「依頼じゃないよ。それより依頼ってなに?」
逆に聞き返す。
すると師走は腕を組んでしまい、空を見上げた。
何か考えるような仕草をすると、ポツポツ話す。
「ほら、たまにダンジョン調査課の方で、有力な探索者には正式に依頼が出るって話、聞いたことない?」
「えーっと、聞いたことあるような? ないような?」
千世は覚えていなかった。
ここまではダンジョンには行くだけ行ったけど、そんな専門的なことまでは考えて来なかった。
だからだろうか。師走とのズレが発生する。
「てっきりここのリンゴを採取するから依頼かと思ってたけど、まさか普通に来たんだね」
「駄目だった?」
「駄目じゃないよー。それより、依頼が貰えるようになったら、もっと面白そうだよねー」
師走は依頼が欲しそうにしていた。
曰く、依頼を貰うとそれだけでダンジョン調査課の人達に知られていることになり、これからの活動の幅も広がる。
千世は考えても見なかったが、師走はニコニコワクワクしていた。
「それにコレも増えるっぽいよ」
「そ、そうなの?」
「うん。依頼料と達成料が加算されて、パンパンに膨らむんだって」
「パ、パンパン?」
千世は師走の言い回しに怪訝を呈した。
しかしそれなら確かに頑張れるかもと、千世の中にも不安は混じるがちょっぴり気持ちが昂る。
「それじゃあ頑張ってみよっか!」
「そうだねー。まあ、この活躍を記録できればもっと良かったかもだけどさー」
師走は遠い目をしていた。
目の前の有刺鉄線を機械にスマホをかざして開閉する。
この先は撮影禁止エリア。
だから配信にも乗せることができない。
結果的に千世と師走はそのまま、シーカーアバターの姿に切り替えると、特に警戒することなく林檎森林の中に入る。
「「おお!」」
林檎森林の中はたくさんの木が生えていた。
外から見ても分かったが、かなり光が入り難い。
葉の量が本来の林檎の木よりも多く見えて、おまけに背も高く感じる。これがもし、てっぺん近くだったら如何しよう。
なんて、まだ見つかってもいないのに不安に駆られてしまう千世。そんな千世の背中を押して、師走は励ます。
「それじゃあ行ってみよー!」
「う、うん。って、ちょっと待ってよ。まあ私が先頭なの!」
師走は千世を前にして歩かせた。
【危険予知】は未だ反応無しなので、安心し切っても良いのかもしれない。
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