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【悲報】ダンジョンで撮影したら、間違って誤配信してました〜回避特化な私が、何故かバズってしまった件  作者: 水定ゆう


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第37話 突風に吹かれて、気を失って。

とんでもない風です。

ヤバめです。

 少しの間千鳥とシュヴァルは休むことにした。

 池というには大きくて、しかも水も透き通っている。


 さっき魔石を落とした時には水面に波紋が広がったが、その域は凄まじかった。

 まさかこんなに綺麗な円形の波紋を連続して見ることになるとは想像していない。


「何か居ても面白いのにね」

「そうかな?」


 さっきまでは視線を奪われていた。完全に釘付けだった。

 とは言え調和が終わると、静けさが立ち込めた。そのギャップがシュヴァルのことを撫でる。


「そうだよー。せっかくここまで来たのに何も無しって、実はもう配信終わってたりして」

「えっ、いつの間に!?」


 確かにカメラドローンは動いていない。

 おまけにシュヴァルは足のブレードも外している。完全にオフ状態に入ると、ダラーんとし始めた。


 千鳥もてっきり配信中だと思っていた。

 とは言え魔石を池の中に落として波紋が広がった以外に見せ場もなく、そこで終わっておいて正解だと思う。


「配信終わってるんだよね?」

「うん。ほれ」


 スマホを見せてれた。

 確かにアーカイブが残っている程度で、配信は完全に終了。千鳥は千世に戻ると、師走に尋ねる。


「師走、何だか今日は変だったよね」

「えっ、私が!?」

「ううん。私。何だか調子が良かった、のかな? 心が弾んだっていうのかな? 私らしくないみたい」


 千世は今日一日が不思議だと感じた。

 心の奥底を掻き立てるような熱い風が吹いて、今まで臆病だった気持ちを、ほんの少しだけ楽しいと思わせてくれた。

 これがダンジョンマジック。

 もしかしたらそう呼ばれる現象なのかもと思うけれど、やっぱり実際に体感すると不思議に感じる。


「私ね、別に何か変わったわけじゃないんだけど、ダンジョンが楽しいって思ったの。もちろん一人だと怖いし、危ないし、危険なことはしたくないよ。だけど、誰かと一緒だからとか、目的があるからとか、そのおかげで少しは頑張ってみたいなって思ったんだ」

「へぇー」

「あはは、変だよね?」


 師走は感嘆とした。

 何だか馬鹿らしくなった千世だったけど、師走はたった一言だけ伝える。


「良いんじゃない? 楽しいことの方が。千世は変わったないし、ダンジョンマジック? で、少しだけポジティブになれる瞬間があるなら万々歳でしょ!」


 師走は嬉しいことを言ってくれる。

 それを受けて千世も笑みを溢すと、不意に師走は立ち上がる。


「それじゃあ帰ろっか」

「うん」


 ここに来て本当に良かった。そう思った。

 だけど瞬間、目の前に何か飛び出す。


「は、蜂!?」

「ちょ、こっち来るよー!」


 帰ろうとした途端に草むらの中から飛び出した。

 たくさんの蜂の群れが頃合いを見計らったみたいに襲い掛かってくる。突然の出来事だったのもあるが、何故かお互いに能力を発動できず動きが鈍る。


「掻い潜って逃げるしかないかもねー」

「そ、そんな……うわぁ!」

「千世!? ぬあっ!」


 師走は千世に手を伸ばす。

 しかしお互いが地面のぬかるみに嵌ってしまい滑ってしまう。

 蜂からは避けられたけど、このままじゃ深い池の中に落っこちる。走馬灯のように時間がゆっくりに感じた直後、何故か背中を突き動かされた。


「「えっ?」」


 当然後ろには誰もいない。

 なのに手で押し出されたみたいに感じた。

 気が付けばとんでもない風圧の風が吹き荒れ、千世と師走のことを吹き飛ばすが、同時に二人の意識も掻き消された。


(あれ、風が止まない? えっ、あれ? 地面が近くに……木の幹が目の前に? あれ……うっ、あ、ヤバっ……)


 千世と師走は意識が無くなる。

 頭が痛いとか、気持ち悪いじゃなくて、目の前が真っ暗にフェードアウトしてしまった。




 どれだけの時間が経ったのか。

 硬い地面の感触が全身に伝わると、柔らかい風が頬を撫でる。


「うっ、あ、あれ?」


 目が覚めた千世は寝ぼけ眼で周囲を見回す。

 ここは何処? そう思った千世はたくさんの木の幹が目の前に見える。

 おまけに近くには看板が立っていて、千世は首を捻る。


「ここって、ダンジョンの入り口? えっ、い、入り口なの!」


 千世は頭が回った。異常性を瞬時に理解すると、同じく近くで倒れていた師走を起こす。

 肩を揺すってでも起きて欲しかった。


「し、師走! 起きてよ、師走!」

「あっ、な、な、もう、走れな……ん?」

「師走!」


 師走はゆっくりと瞼を押し上げた。

 目の前には焦る千世。何事かと思ったが、とりあえずはいつものテンション。


「ふぁー、おはようー、千世ー」

「お、おはよう。って、そんなこと言っては場合じゃないんだよ! 周りを見て」

「周り? おや」


 師走は目を見開く。

 何故かダンジョンの入り口に戻されていたのだ。しかもここまでの記憶がすっぽり抜けている。

 さっきの突風までは記憶しているのに、その先が全く思い出せない。


「もしかして気を失ってた?」

「私も」

「そっかー。えーっと、これは何?」

「分からないよ。でも、ダンジョンから弾き出されちゃったのかな」


 何か良くないことでもしたのかと不安に思う。

 けれどそのおかげで助かったのは事実で、千世と師走は困惑。

 ダンジョンの入り口で立ち尽くしてしまうのだった。

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