第36話 風を呼ぶ池
この池は大事な場所です。
いわゆる、霊的なあれかも?(イメージ)
千鳥とシュヴァルは像に手を合わせると、祠を後にした。
何だかとっても気分が良い。
千鳥はにこやかな笑みを浮かべると、心がスッキリした。
「ふふっ。なんだろう、心が軽い……それに」
「力がみなぎってくるよね? 不思議だよー」
千鳥とシュヴァルは何だか心だけではなく体も軽い。
不思議な感覚に包まれて祠を後にすると、また少し雰囲気が変わる。
木々が生い茂っていたのは変わらないが、かなり木の幹が太い。もしかして、成長速度が違うのかな? と、思った千鳥は葉っぱに視線を移す。
「変だよ」
「何が変なの? ってか、何処見てるの?」
「葉っぱだよ。葉っぱ! お母さんがね、周りを観察すれば見えないものも見えてくるからって、ダンジョン心得を教えてくれたんだ」
ダンジョン配信者、並びに探索者としてちょっぴり活動報告をした。
その際お母さんに教えてもらったのは、千鳥の性格にかなり合ったもの。
「千世は考えられる子だけど、考えすぎても駄目だから、とりあえず周りを観察して情報を集めてみてもいいと思うよ。そこから安全策を見つければいいの」
と言われた。それを思い出した千鳥は葉っぱが重なり合っているのに木の成長が著しく激しいことを疑う。
だってこれだけ葉っぱが重なったら木は競争し合って光合成が行えなるからだ。
「千鳥、中学の理科で習ったでしょ? 木は光合成で成長するから、周りに他の木があると栄養を奪い合うから、お互いに邪魔をし合って、こんなに成長しないんだよ!」
「でもそれはダンジョン外で……」
「ダンジョンの内と外で片付けられるんだったら、そもそも成長過程なんて必要ないでしょ? ダンジョンは生き物みたいなものだった言われてるみたいだから、外の常識が通用する可能性は十分あるよ!」
モンスターだって、魔石を砕かれなくても頭をやられたら死んでしまう。
それと同じだと千鳥は思い、シュヴァルを納得させる。
理由は分からないけれど、[正解です]と聞こえた気がした。多分気のせいだ。
「うーん、まあそうかもね。それもあるかもね。それじゃあこの先に原因があると見てもいいかもねー」
「うん。行ってみよう」
千鳥はシュヴァルと一緒にダンジョンの奥へと目指す。
何だか今日はやけに楽しい。千鳥は心が弾んでいて、安全が確保されているからだと思った。だからこそ、ここまで伸び伸び過ごせている。自分でも確信を持つと、足取りもより軽くなった。
「あっ、見えて来た!」
千鳥は指を指す。カメラドローンもズーム機能を使って、上からの画角で情報を届ける。
そこに広がっていたのは大きな水。
風抜きの森の奥に広がる、巨大な池だった。
「凄い。こんな所に池があったんだね」
「しかも眩しいねー。光が反射してる的なー?」
確かに池の表面は太陽の陽射しを受けて、眩しく反射する。
顔の一部を覆いながら近づいて見ると、ふと足を取られた。
「うわぁ!」
突然のことで滑りそうになる。
あまりにも意識の外側すぎて能力が発動してくれなかったが、その心配も要らないくらい浅く、怪我をすることすらなかった。
「大丈夫千鳥? 余所見したたら危ないよ?」
「うーん、余所見したた覚えはないんだけど」
「あははー。何言って、うわぁ!」
シュヴァルも転んだ。とは言え流石はシュヴァル。転ぶ瞬間にバク転をして上手く受け身を取った。自分には到底真似できないと、千鳥は感じる。
「ナイス着地、だね」
「ありがと。でもこの辺の地面、すっごく柔らかいねー。簡単に崩れちゃったよー」
「風化してるのかな?」
「侵食されちゃってたりしてー」
千鳥とシュヴァルはお互いに言い合った。
とは言え多分おんなじようなことだと思い、池の方に近づく。
とっても綺麗な池で、近づいて見るとかなり深い。
浅瀬はなく、いきなり深くなっているのが、透明度が高いおかげで底が見えるから判った。
「綺麗は水だね。それにとっても涼しい」
「本当だねー。って、もしかしてここがゴール?」
「かも」
ここまでほとんどモンスターに出会うこともなかった。
まともな戦闘はまるでなく、祠を掃除して手を合わせて池に辿り着いただけ。シュヴァルからしてみれば拍子抜けだけど、千鳥はこれくらいが丁度良かった。
「ふーん。何だろ、息抜き?」
「そう言う日もあって良いんじゃないかな? まあ、この魔石は……あっ!」
ふとポーチの中から魔石の欠片を取り出す。
コロコロ転がしていると指の隙間を縫って落っこちてしまい、池の中に沈んでしまう。
「あっ、えっ、如何しよう?」
「もしかしてさっきの欠片落としちゃった?」
「う、うん。如何しよう、地面に埋めようとしたら間違えて……あれ?
急に池の水面に波紋が浮かんだ。
しかも一つじゃない。二個、三個とたくさんの重奏が重なり合う。
もちろん何もしていない。さっき魔石の欠片を落とした途端、急に波紋が浮かんだ。
目を奪われてしまう千鳥とシュヴァルだったけど、突然暖かくて優しい風が吹き抜ける。
「「な、何で急に風が?」」
二人はハモった。突然のことで言葉を失う。
隣り合う二人の肩越しを抜けて行く風と幻想的な風情に心を浸した二人は、しばしの間視線を奪われ考えることを止めてしまった。
だってこんな不思議体験滅多にできない。
風のメロディーと波紋のタクトが調和した瞬間だった。
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