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【悲報】ダンジョンで撮影したら、間違って誤配信してました〜回避特化な私が、何故かバズってしまった件  作者: 水定ゆう


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第34話 音羽トンボも避けられるよ

音羽トンボは超高速で飛ぶトンボです。

秋になると田舎にはトンボがたくさん飛ぶんですよねー。

 超高速で接近して来たトンボ。

 千鳥は素早く攻撃を回避すると、シュヴァル目掛けて飛んで行く。


「シュヴァル!」


 千鳥がしゃがんで回避すると、トンボはシュヴァルを襲う。

 羽をバサバサとさせながら、振動を生み出していた。

 流石にシュヴァルの能力を駆使すればなくらい余裕で躱せる。


「甘い甘い!」


 シュヴァルはギリギリを狙って躱す。

 【加速】を使って右に避けたのだが、何故かシュヴァルのシーカーアバターの服の袖が一部裂けた。


「ありゃ?」


 シュヴァルは目を丸くする。まさか袖が裂かれるとは思わなかった。

 もちろん触れてなんていない。それじゃあ如何して? と思ったシュヴァルだったけど、千鳥は何となくで呟いた。


「もしかして、振動?」

「し、振動?」


 さっきからあのトンボは超高速で羽を動かしている。

 音にもならない音を奏でながら、尋常じゃない勢いで羽を上下させていた。

 まるで羽が動いていないみたいに見える。だけど実際は動いていて、空中でホバリングしていた。


「振動って、そんな訳ないでしょ?」

「分からないけど、それしかないよ」

「うーん……うわぁ!」


 またしてもトンボは飛んできた。

 千鳥を狙ったものの、[真っ直ぐ、すぐ来るよ!]と教えてくれたので、慌てることなく避けた。


 その瞬間、ふとスマホを見た。

 コメントがズラッと流れていて、千鳥は驚愕する。何と千鳥の予感は当たっていた。



“音羽トンボですね。強いですよ”


“振動って、ソニックブーム的な?”


“よく避けれるなぁ”


“ホバリングって、トンボって最強なんだよな”


“参考になれば。音羽トンボは羽を超高速で動かすことで衝撃波を生み出すことができます。近くにいるだけで攻撃されます。気を付けてください。応援しています!”(2,000円)



 ありがたいコメントがたくさん来ていた。

 それを見た千鳥は急いでシュヴァルに伝える。

 しかしその頃にはもう、音羽トンボはシュヴァルを捉え、流石の動体視力を武器に襲い掛かった。


「くっ、ちょこまか動かないでよー!」


 シュヴァルは躱しながらも拳を突き出す。

 しかし音羽トンボには掠りもせず、プクッの頬を膨らましていた。


「もう、近付いたら振動で攻撃されるから厄介だよー」

「振動で攻撃してくる……だったら」


 千鳥はふと思い付いた。

 落ちていた小石を拾い上げると、思いっきり投げてみた。


 緩い小石が放物線を描きながら、飛んでいる音羽トンボへと落ちていく。

 当然当たるわけもない。

 とは言えそんなこと百も承知だった。本当にやりたかったのはそこではない。


「今だよシュヴァル」

「ありがと。それじゃあ行ってみよー!」


 音羽トンボの動きが一瞬だけ止まる。

 その隙を突いて【加速】したシュヴァルは、瞬く間に音羽トンボへと近付くと、蹴りを一発入れる。

 音羽トンボも躱そうとするも、流石にシュヴァルの【加速】には敵わず原型が無くなった。


 パラパラと細かいものが飛び散る。

 シュヴァルは落ちてきた小さな石ころを手に取ると、それが魔石だと知る。

 けれど薄っすら罅が入ってしまい、手に取った衝撃でパリン! と言った。


「あっ!?」

「やっちゃった!?」


 千鳥もシュヴァルも視聴者でさえ目を奪われた。まさかこんなことになるなんて思わない。

 しばしの間フリーズする。脳の機能が完全停止。

 とりあえず散りになった魔石の欠片をシュヴァルは眺めると、千鳥の顔を見た。


「ど、如何しよう?」

「如何しようって言われても……如何しよう」

 

 こんな展開は知らない。だって魔石が砕けるなんてそんなことある訳ないと思っていた。

 だけど実際に砕けてしまって、欠片が残されていた。

 流石に買取なんてしてもらえない。だけど捨てるなんてとてもできない。

 困ったシュヴァルは考えて頭を悩ませると、千鳥はふと手に取った。


「後でごめんなさいって言って、奥の方で埋めてあげよ。ダンジョンの中心に近い方が、魔石の残った魔力を吸ってまた蘇るかも」


 ダンジョンは常に変化し、成長している。

 どんな原理かは分からないが、倒したモンスターも時間経過で再び復活する。

 だからとにかく戦闘が有効打じゃない。


「それでいいのかなー?」

「良いと思うしかないよ。えっと、駄目なのかな?」


 千鳥は自分で言っておいて不安になる。

 本当はこんな瑣末な真似をしたくはなかった。

 だけどこれくらいしかできることはなくて、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 シュヴァルも千鳥の発想を肯定する。

 今更考えてもそれしか手段はない。

 だったらそれを実践してみるのが手っ取り早いと思うのと同時に、止まるのなんて自分らしくないと突っ走った。


「そうだねー。それじゃあそうしよう!」

「えっ、急に変わった?」


 シュヴァルは意識を変えた。

 もうアクセル全開で、迷っていない目をする。


「ほらほら千鳥も、早く行こ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 シュヴァルは駆け出した。あまりの速さに千鳥は慌てて追いかける。

 さっきまでのしんみりは何処に消えたのか。

 それは本人達も知らず、ダンジョンの闇に消えた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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