第26話 ダンジョン調査課
こういう機関がちゃんとあるんですよ。
後日、千世と師走は市役所にやって来た。
風見原の市役所は街の中心から少し逸れた所あるけれど、その理由は至ってシンプルだった。
「うわぁ、か、風が!」
師走は顔を腕で覆った。
とんでもない勢いで風が吹き荒れて、目がすぐに乾いてしまった。
「この街って住みやすのに……」
「風が毎日吹くから……しかも強風が多いからー」
二人は困ってしまった。
それでも毎日この風の中を過ごしているので、今日は少し強い日だったけど何とか耐え抜き、建物を背にして市役所に向かった。
「千世、こっちこっち」
路地を上手く使って市役所までやって来た。
特殊な形状をしていて、風を受け流せるようになっている。
おまけに上部には大きな風車が付いていて、風を受けてクルクル回る。これで発電をしているのが驚きで、何が驚きかと言われればこの風車一つで、市役所全体の電力を賄っていた。
「いつ来ても凄いよね」
「ねー。って、早く入ろ入ろ。今日はやけに風が強いから」
千世と師走は市役所の中に入った。
案の定いうか、市役所の中にほとんど人はいなかった。
もちろん職員は人数が揃っていたけれど、利用者の数は少ない。だけど不思議でも何でもない。この時期、市役所が忙しさのあまりパニックになることはまずなかった。
「えーっと、ダンジョン調査課は……あっ、誰もいない」
千世はダンジョン調査課のプレートを探した。
端っこの方に設置されていて、誰も座っていなかった。
目の前には呼び出しベルが置かれていて、コレを鳴らして知らせることになっている。それだけ探索者の数が少ないことを意味していた。
「探索者は命懸けだけど、この世界で生き抜くためには必要なことなのに……こんな扱いなんだね」
「仕方ないよ。みんな怖いもん」
師走は不服そうな顔をするが、どちらかというと千世はこれが普通だと思っている。
とは言え呼び出しベルを鳴らしてしばらくすると、専属の職員さんらしき人がやって来た。
耳が尖っていて日本人離れしていた。
「あっ、ウィンディさん」
「こんにちわー」
千世と師走は挨拶した。
すると金髪に碧眼を持った耳長の女性は丁寧に挨拶を交わした。
「こんにちは。えーっと、千世さんと師走さんですよね?」
「「はい! 覚えてくれていたんですか?」」
二人は揃って同じことを聞いた。
するとウィンディはにこやかに微笑む。
「もちろんですよ。この風見原の探索者数はそこまで多くありませんし、私がメインに担当している学生の探索者は極めて珍しいですからね」
普通に真っ当な理由だった。
千世と師走も「なるほど」と納得し、早速ウィンディと言葉を交えた。
とは言え先に聞いたのは、テンプレの文言を話すウィンディ。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」
ここダンジョン調査課ではダンジョンに関するあらゆることを任されている。
例えばダンジョンに関する最新情報は大抵ここに集まるし、相談なども請け負ってくれた。
まさにダンジョン探索者にとっては必要不可欠な場所なのだが、何より大事なのはここがやってくれるサービスだ。
「あの、実は買取をして欲しくて……お願いできますか?」
千世はポーチの中から袋を取り出した。
家で昨日詰め替えたものだけど、中には師走が倒したモンスターの魔石が入っている。
今回はそこまで大きくはない。
大量にモンスターを倒した訳でも、魔鉱石を採掘した訳でもないので仕方がない。
それでも苦労したのは本当で、ウィンディは何も言わずにそれを理解した。
耳がピクピクしていて、何かを感じとる。
まるで袋の中に入っている魔石の声を聴くみたいで、「そうですか……」と達観した。
「かしこまりました。それでは少々お待ちください」
ウィンディはそう言うとトレイを取りに行く。
ウィンディが戻ってくるまでしばし待つが、やっぱり気になった。
「ねぇ千世。あの耳ってやっぱりエルフだよね?」
「う、うん。私も詳しくないけど、多分そうだよ。ゲームとかでも出てくるもん」
「だよねだよねー。やっぱりそうだよねー。ってことは、あの人達が……」
「本当の|ダンジョンを知っている《・・・・・・・・・・》人達何だよね」
千世は深々と思った。
よくは分かっていないけれど、ウィンディみたいな人はこの世界にはたくさんいる。
それはダンジョンがこの世界に現れたことをきっかけにしているそうで、謎は深まるばかりだ。
「でもさ、本当にダンジョンと一緒にやって来たのかな?」
「そうだよねー。まずはそこだよねー」
「疑われても無理はありませんよね。ですが確かに私も私の同胞達もダンジョンと共にやって来たエルフなんですよ」
そこに居たのはウィンディ。
如何やら話を聞いていたようで、本人の口からツッコミを入れられた。
まさかとは思っていたけれど、やっぱりエルフなんだ。
千世と師走はそう思ってしまった。
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