第25話 赤い宝石が魔石らしい
イワガラヘビを倒した余韻。
「はぁはぁ」
「ぜーぜー」
千鳥とシュヴァルの荒い息遣いが広い部屋の中に響いた。
そこにモンスターの影はなく、一応警戒はしたもののその必要もなさそう。
「倒せたのかな?」
「倒せたでしょ! ほら見てよ!」
シュヴァルはイワガラヘビの姿がないことを訴えた。
確かにイワガラヘビは居なくなっていて、少し安心した。
「本当だね。イワガラヘビ……倒せたんだ」
ホッと胸を撫で下ろした。
一方でシュヴァルはポケットからスマホを取り出していて、ディスプレイをスライド操作をしていた。
スマホをチラチラ見てみると、たくさんのプロコメントが溢れていた。
「見てよ千鳥!」
スマホを千鳥の顔に近づけた。
たくさんのコメントが流れていて、超高速瞬きを千鳥はしてしまう。
“カッコよかった!”
“何だよ今の連携技!”
“ほぼ見えなかったけどスゲェ”
“消えた?”
“回避特化とスピード特化の合わせ技とか神ってるだろw”
“おめでとうございます。少しですが、投がさせてください”(10,000円)
「ぜ、全然少しじゃないよ!」
千鳥は腹の奥から声を上げた。
するとシュヴァルはニコニコ笑顔でVサインを千鳥に見せつけた。
「イェーイ! やったね千鳥。私達って最高のコンビだね!」
「し、親友だもん」
「ふふっ。そう言ってくれるだけで嬉しいよ。さーて、うわぁ!」
シュヴァルは立ち上がろうとした。
だけど脚が震えてしまって上手く立ち上がることができず、すぐに転んでしまった。
尻餅をつくシュヴァルなんて珍しくて、千鳥はついつい目を奪われた。
「大丈夫、シュヴァル? もしかして脚がもう……」
「限界っぽいねー。千鳥、帰り道はよろしくね」
如何やら肩を貸すことは決定した。
千鳥は快く頷くものの、上手く支えられるか不安。とは言え一旦手を伸ばしてシュヴァルを立て直させると、千鳥は落ちている剣を回収しに向かった。
「ちょっと剣を回収してくるね」
「ついでに魔石も頼むよー」
「任せて、でも落ちてたらね」
千鳥はイワガラヘビを倒した辺りに向かう。
案の定剣が一本落ちていた。
何と今回は折れていない。おまけに凄まじい強度を見せてくれた。この子がなかったら、イワガラヘビは倒せなかったと千鳥はつくづく思った。
「ありがとう」
千鳥はそっと剣を回収し、鞘に納めた。
もしかしたら剣も久々に活躍できて喜んでいるのか、何となく震えていた。
多分気のせいだと思うことにして、魔石を探し始める。
アレを回収しないとまた同じことの繰り返しだからだ。
千鳥は地面に目を凝らしてみたが、魔石らしき塊は落ちていない。代わりに落ちていたのは、赤い宝石だった。
「なんだろコレ?」
千鳥は赤い宝石を拾った。
魔石のようだけど正直千鳥にはさっぱりと言っていい程分からない。
なのでとりあえず回収だけはしておく。
「分からないけど綺麗だから良いよね?」
千鳥は赤い宝石を回収してポーチの中に詰めた。
他にも何か落ちていないかキョロキョロ見回してみる。
だけど目ぼしいものはほとんどなくて……と言うよりも、何も落ちていなかった。
「これだけかな?」
「千鳥、何か見つかったの?」
シュヴァルが千鳥に声を掛ける。
千鳥は「ちょっとだけ」と答えると、再びシュヴァルの元に戻る。
とりあえずこれ以上ここにいてもやるかとがない。そう確信したので、シュヴァルと一緒に外に出ることにした。
「立てる、シュヴァル?」
「ありがと」
シュヴァルに手を差し伸ばし、肩を貸した。
シュヴァルの体重が千鳥を襲うが、それでも何とか耐え抜く。体幹を鍛えて良かった、お母さんに感謝した。
「ゆっくり行くよ。一、二、一、二」
「二人三脚みたいだねー」
「あはは。そうかも」
和やかな雰囲気には思えないくらい死闘をした。その後の笑いなのでいつもよりも低い。
千鳥とシュヴァルはのっそのっそと一歩を深く踏み締め、ダンジョンの入り口へと戻る最中、ついでにエンディングを始めた。
「みんな、今日はこんな感じでお終いだから。また配信する時は観にきてくれると嬉しいなー。後々、ダンジョン以外にも挑戦しようと思うんだけど、その時はよろしくねー。それじゃあー」
「……えっ?」
「千鳥も何か言ってよ」
「何かって何を言ったらいいの? えーっも、あ、ありがとうございました!」
千鳥はそう言うと配信を終了させた。
最後の方はコメントがスラスラ流れる程度だったけど、今日一日だけでかなりの人が観に来てくれていた。
「凄かったね千鳥」
「凄かった?」
「まさか初日でこんなに観に来てくれるなんて……あっ、出口だよ」
そうそうしている内に、ダンジョンの出口を見つけた。
入ってきた入り口と全く同じ所にあって、おまけに言えばモンスターの妨害もなくて一安心。
千鳥とシュヴァルはダンジョンの外へと出ると、突然の眩しい陽射しに目を奪われた。
「「うわぁ、眩しい!」」
二人は目を腕で隠した。
太陽光の直射を避けると体がフワリとなる。
気が付けば元の姿に戻っていた。
不思議なことの連続だったけど、師走は膝を使って軽快にジャンプしていた。体も元通りになってみたいで安心した。
「師走、体は大丈夫?」
「うん、問題ないみたい。ダンジョンの外に出たからかな?」
「そ、そうかも?」
怪我をしていないから分からない。
千世は首を捻ると、突然師走に笑顔を向けられた。
「千世、ダンジョンまた行こ!」
「えっ!?」
「楽しかったでしょ? 私、また千世と行きたいな。だからそれまでには【加速】もものにできるようにしておくから、その時はよろしくね!」
あまりにも一方的。千世は言葉に迷う。
だけど今は保留でもいい。
とりあえずは今日の探索に一区切りをつけ、ホッと胸を撫で下ろすことだけに安堵した。
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