36.双子を探せ⑤
総勢12人の男衆が雄叫びを響かせて村の中を行進する。
荷車を改造した即席の神輿台を担ぎ、その上にはフォンファが仁王立ちしていた。咆哮と熱気に引き寄せられた村人たちを次々と後方に取り込み、その勢力を拡大し続けている。
「フェンリーをさがせえーっ!」
「おおおおいっ! フェンリイイイ!」
従順な担ぎ手の冒険者たちは本来の目的も忘れてはいない。
先頭で音頭をとる麗央に導かれながら、周囲の確認も怠らなかった。
「後ろのみんなも声出してえぇええ! いくよおぉぉおお! ソイヤ! ソイヤァッ!!」
「ソイヤ! ソイヤ!」
「声が小さあぁああい!」
「ソイヤッ!! ソイヤァ!!」
だいぶ声も出てきた。麗央が満足そうに頷いていると、突然後方の村人たちがなにやら慌て始める。そのうちの一人がモンスターの襲来を告げるような口ぶりで叫びだした。
「後ろから何か来てるぞおーーー!」
「ええええ?!」
麗央や神輿、その他大勢が一斉に背後を振り返る。
通りのずっと奥の方に、こちらに向かってくる集団が確かにいた。
「なんか俺たちと似たような塊だな!?」
「こっちに来る気だぞ」
「やっちまいましょうレオさん!」
担ぎ手たちは麗央の返事を待たずにUターンを始めている。村人たちも邪魔にならないよう素早く移動し、神輿を先頭に誘導した。
「レオさん! 合図を!」
「レオ頼む!」
「みんな……」
もう引き下がるわけにはいかない。
麗央は思い切り息を吸い、一気に吐き出した。
「全員!! とつげきいぃいい!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
◇
総勢12人の男衆が雄叫びを響かせて村の中を行進する。
荷車を改造した即席の神輿台を担ぎ、その上にはフェンリーが仁王立ちしていた。咆哮と熱気に引き寄せられた村人たちを次々と後方に取り込み、その勢力を拡大し続けている。
「フォンファをさがせえーっ!」
「おおおおいっ! フォンファアアア!」
従順な担ぎ手の冒険者たちは本来の目的も忘れてはいない。
先頭で目を光らせるセレスティナに導かれながら、周囲の確認も怠らなかった。
「セイヤ! セイヤ!」
「聞こえない!」
「セイヤ! セイヤァ!」
「がなれ!!」
「セイヤッ!! セイヤッ!!」
だいぶ声も出てきた。セレスティナが満足そうに頷いていると、突然担ぎ手たちがなにやらざわつき始める。そのうちの一人がモンスターの襲来を告げるような口ぶりで叫びだした。
「前から何か来てるぞおーーー!」
「はぁ?」
セレスティナや神輿、その他大勢が一斉に前方を注視する。
通りのずっと先の方から、こちらに向かってくる集団が確かにいた。
「なんか俺たちと似たような塊だな!?」
「こっちに来る気だぞ」
「やっちまいましょうセレスティナさん!」
担ぎ手たちはセレスティナの返事を待たずに足を止め、腰を落として両脚に力を込める。村人たちもクラウチングスタートの構えで後れを取らぬよう準備した。
「セレスティナさん! 合図を!」
「セレスティナ頼む!」
「お前ら……負けたら正座じゃすまないからな。空気椅子だ」
もう引き下がるわけにはいかない。
セレスティナは思い切り息を吸い、一気に吐き出した。
「いけっっ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
◇
全力疾走の両軍はあっという間にその距離を縮めていく。
「先生ー! なんでそこにいるんだよー!」
「三毛さん! 例えあなたが相手でもっ!
かつての仲間の姿に戸惑う生徒や女神たち。しかし不条理こそが戦い。引き下がるわけにはいかない。
両軍の担ぎ手たちは全く怯むことなく走り続け、むしろ相手との距離を詰めるごとに速度を増しているようだった。
正面から衝突する寸前、互いの先頭が急ブレーキで踏み止まり、後方の担ぎ手が一気に横へ流れていく。その勢いのまま神輿の側面を一気に叩きこんでいった。
木製の神輿同士、担ぎ手の肉体同士が激しくぶつかり合う。それでも担ぎ手たちは神輿を落とすまいと絶対に手を離さなかった。
神輿台に乗ったフェンリー、フォンファも獣人族特有の身のこなしで平然と立ち続けている。
そして、ついに目前の相手が誰なのかを認識する。
「フェンリー!」
「フォンファ!」
とうとう出会えた。それでも喜びの感情は不思議と湧かなかった。
「フェンリー……こんな形で会うなんて」
「手加減しないからね、フォンファ」
神輿がゆっくりと離れていく。担ぎ手たちはもう次の突撃準備に取り掛かっている。
フェンリーは烈火に、フォンファは三毛に、相手の神輿に乗った人物こそが探し人だと伝えた。烈火たちはすぐさま自軍に情報を連携し、戦意を一層高めていく。
「フェンリーを取り返せー! ソイヤ! ソイヤ!!」
「フォンファを取り戻せー! セイヤ! セイヤ!!」
神輿は二度三度真っ向勝負を繰り返すが、物理的にも精神的にも屈強な男たちはダメージを受けるたびにより逞しさを増していく。
村人たちは声を枯らした後も鼓舞をやめようとはせず、教会の司祭は講壇を外に引っ張り出して半裸で叩き続けている。ロペスはここぞとばかりにギターを弾きながら歌っていた。
そうして8度目のぶつけ合いを演じた時、両軍の神輿台は砕け散った。
地上に降り立ったフェンリーとフォンファは抱き合って再開を喜び、居合わせた全ての人々は拍手で姉妹と、そして互いの健闘に祝福を送るのだった。
美しいエンディングの余韻に浸った後は、全員仲良く散らばった神輿の後始末を行った。
それも一区切りついた頃、烈火が「おなかすいた」と呟く。その言葉でセレスティナも思い出した。鹿肉のジャーキーをつまんでいたせいで忘れていたが、まだお昼ごはんを食べていないのだ。
「だったら食べてきなよ。残りはやっとくから」
三毛の言葉に麗央や緩太がウンウンと頷く。
「じゃ、行くか」
セレスティナは目くばせで烈火とゼニスを呼び、参考として三毛に昼食をとった店を聞いてみた。カディフ亭で食べた、と三毛は言う。
「おすすめある?」
「んー。さっぱりあっさりシチューかな」
言われた通りに注文すると、クラムチャウダーが出てきた。




