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追放された仲間を庇ったら、いつの間にか結婚してた  作者: 豚肉の加工品
運命覚醒 Ⅳ
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運命覚醒  4

前回と長さはあんまり変わらないかも……

大気を震わせた咆哮の矛先、それはとても記憶に新しい戦場であった。

……自分にとっても、自分(・・)にとってもだ。

魔力が混じり魔獣へとなり果てた獣たちを斬っては生臭くどろりとした粘つくような血が体に飛び散る。斬り伏せては次から次へと襲い掛かってくる魔獣たちを修羅の如く全て斬り伏せた。


それは……自分の記憶――――


自分(・・)にとっては少しだけ違う。

膝をついて目の前のことを全て諦めたかのような者たち。

多勢に対して逃げて行った者たち。

恐怖に支配されたのかいつも通りの力を発揮できていないように見えた者たち。

とてもじゃないが、戦場とは言えるものではなかった。

軍勢に対して一本の矛を向けて挑む。


もしも、(バルファ)がいなければ今頃この場所は地獄と化していたことだろう。


友や恩人を守るべく盾となり、自分の(かかと)から先へは一歩たりとも進ませることはなかった。

自分の命を投げ売ってまで守りたいものがある。

そんな強い意思がバルファ自身になければ、自分は目覚めることはなかっただろう。


「『……何で俺は魔力が空っぽなんだ? そしてなんでこんなに全身が痛ぇ……?』」


久々の体の感覚は最悪な状態である。

筋肉繊維は修復しきっていない。これは『闘気解放』の影響ではないと言える。

そもそも『闘気解放』は魔力が存在すれば体に害は一切ないというに……

可能性があるのは――――二つ。


「『無意識に掴んだか? いや、でも記憶はねぇはずだしな……』」


完全な状態で力を解放した歴戦武具アーティファクト感覚(・・)を、一度の使用で体に覚えさせたのかもしれない。

だが、


「『いやいや……可能性としては低いだろうなぁ。あれは人間の状態じゃ使えないはずだし』」


歴戦武具アーティファクト――――真名の解放。

武具に記憶された神々の戦いを呼び起こし、現実でそれを模倣する。

いわば、神の業を扱うのだ。

もしただの人間が使用すれば…………どうなるか。


「『流石に、俺の運命体(・・・)でもそれは無理だろ…………二つ目は――――まぁ、ありえるはずがないか』」


いらないことを考えて足が数秒止まってしまう。

だが、今はそんなことはどうでもいい。

この鳴り止まない獣の慟哭を――――止めなくてはいけない。

それが自分の願いであり、やらなければならない使命のようなものだから。


駆けろ。

大地を蹴り上げて、最前線まで走り抜け。

ここには――――この場所には、守らなければならないものがあり過ぎる。

俺の運命以外では守り抜くことが出来ない運命を…………覆せ。


「『――――と、考えてる暇はなさそうだな』」


既に押し寄せて来ている異形の群れ目掛けて、更に足を加速させる。

既に近づいていた異形をすれ違い様に斬り伏せながら、魔力での身体強化が無い状態で大地を駆け抜ける。

だが、想像以上に体が限界を迎えていることで悠長なことをしている暇はなかった。

ただ無心で決して残心など残さない、異常なまでに斬ることに特化した剣技。

最小限で体を動かしては、相対する様々な生命体が混じり合って造られた異形の弱点だけを刈り取っていくのだ。

その姿は――――まさに嵐であった。


「『時間がねぇ……このままだと――――』」


抜けようとする力に喝を入れるように、強く柄を握って……

バルファの足が更に加速した。




「次は、儂が守り抜かねばならないようだな……」


龍人であるジャバウォックの視界には収まり切らない黒い影に、懐かしむように瞼を閉じた。

だが、もちろんそれは止まることなく、そして躊躇うことなく全速力でこちらに近づいてくる。

大地が無数に斬られた後の残る荒地…………その過去の産物を塗り替えるように、轟々と迫り来るのは感じ取ろうするだけで怖気が走るような異形のそれであった。


「一体どんな者がこれほどまでに歪んだ化け物を――――いや、今は関係ないかのぉ……」


蓄えた黒髭を撫でながら、背中から伝わる愛娘の意識に思わず微笑んだ。


「すまんな、メイガス。お前の父はどうも華々しく散ることが出来んらしい。百鬼羅刹の化身と成りて、ただただ力を振りまく〝龍〟である運命(さだめ)には逆らえん」


空を翔けることが出来なくなっても

誰からも畏怖の感情を向けられなくても


圧倒的な力を失ったわけではない。


どうしようもないほどの破壊の化身――――それが(自分)だとよく知っている。


「最後くらいは間抜けに死にたかったもんだ。皆から笑われるような、誰にでも訪れる平等な死の道を辿っていたつもりだったんだがなぁ……」


視界にとらえた数えきれないほどの異形の姿。

何とも悍ましく、それでいてどこか神々しさすら感じさせてくれる。

とうとう……戦いが始まるのだ。


「主が――――この群の長か……」


悍ましい魔力を濃縮しているのだろうか……?

周りの異形とはまるで違う形をしている。

見ているだけで眉間に皺がよるほどの不快感を溢れさせる魔力を吸った貴金属を身に纏い、二回りも他の異形よりも大きい。

一番先頭を圧倒的な加速で猛進するそれは、異形ながら他よりも輝いて見えた。


最古から続く長い生(・・・・・・・・・)に終わりを告げる時が来たのだろう。これが何千何万という時を生きた儂の最後じゃ…………せめて守るべきものは、守らせてもうッ!!」


人の手を大きく振りかぶり、力を腕の全てに収束させる。

その力は前方の大群に向けられた。

人である呪いを受けた――――〝龍〟

永遠を感じるような人生を生きた者の、圧倒的な〝強者〟の一撃…………


「『永龍(えいりゅう)――――」


ブオォッとジャバウォックの周囲に砂埃が空へと舞い上がろうとする勢いだ。

それほどの力を込めて振り抜かれた腕には、幻想か現実か……龍の爪が見えたような気がした。


「逆鱗の(かいな)ッ!!!!」


人型特有の五本の指から放たれる五つの爪撃(・・・・・)が収束していき次第に一つへとなり、目の前を覆いつくさんとする異形の軍勢を広範囲に渡って一瞬にして一掃して見せた。

その威力たるや否や…………風で揺らされた服を整えるジャバウォックの背中には〝龍〟を模した刻印が浮かび上がっていた。


「……足を止めるだけかぁ。儂、わりとドン引き」


しかし、一つの個体だけは違った。

地に四足をめり込ませ、その高防御と重さを利用して佇んでいたのだ。

――――これは冗談では済まされない。


唯一、天を優雅に舞える資格を持ち……

例え神であっても、その姿を止めることは許されない。

この世界で唯一無二であり種の頂点に君臨する〝龍〟の一撃を直撃してなお、体の欠損が見られないのだ。


「フォォォォンッ!!」


それは怒りなのか、それとも興奮なのか。

どちらかなんてのは誰も分からないことだろう。

だが、少なくとも悲しんだりしている様子はない。

自らの雄叫びに呼応するように大地を抉りながら、徐々に速度を上げて突進する姿を見据える。


「今更気合を入れおってからに……とんでもないやつじゃのぉ」


久しく全力というものを出していなかった故の出来事。

何千と生きて来た体だからこそ気が付くことの出来なかった、身体の変化――――それは老化。

人の体(・・・)で〝龍〟の力を解き放つことの反動など何百年前ならば感じることはなかったことだろうと、ジャバウォックは大きく息を吐いた。


「ま、仕方ない。気張るとするかな」


荒野の果てから無限とも思えるほどに沸き続ける異形の姿。

今吹き飛ばしたのは第一波ですらないのだ。


「永龍―――逆鱗闘気」


仕方なし。

手段を選んでいられるほどの余裕は自分にも現状にもありはしない。

この呪いを力づくで上回って……〝龍〟になれ。

人の肉体でありながら、〝龍〟そのものへと生命を変化させていく。ジャバウォックだけが辿り着いた人族の頂点にして限界の力。

〝龍〟という存在の中ですら更に特殊――――それこそこの世界で唯一無二の存在。


「真っ向勝負と行こうじゃぁねぇかァァァ!!!!」


金色の覇気を纏い、ジャバウォックが地面を蹴り上げる。

双方が猛進しぶつかり合ったことによって周囲へと衝撃が反響した!

大地が捲りあがり、すぐ後ろまで迫っていた他の異形が塵と化すほどの衝撃波。当然お互いが無事では済まない威力。


〈鎧の異形〉の頭部とジャバウォックの拳――――相手を後方へと吹き飛ばしたのは…………

この戦いが終われば後日談を書こうと思ってる。

その時が楽しみで仕方ないんだよなぁ…………当分は先になるかもだけど

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