運命覚醒 1
前回投稿した話しに脱字が目立ったので直しておきました。
あと、付け足した文も結構あります。
魔力障壁というものには種類が無数に存在する。
初歩的なもので言えば〈四辺障壁〉と呼ばれるものだ。
四つの魔力点を四つの魔力辺で結びつけてあらゆる衝撃から身を守る防御魔法で言う所の基礎中の基礎の部分。強度は魔力の多さで決まるものの、子供から習得可能な魔法だ。
そして、やはり基礎というものは更なる進化を遂げるものであった。
魔力点の数を増やし、魔力点自体に意味を持たせる。
耐火、耐水、耐雷、耐風といった基本的な魔力種の元素。
土魔法や体が資本な者たちが放つ体術による特殊な衝撃を防がんとする構築され人為的に構造された魔力種の元素。
当然、闇魔法の対処法を確立させている者も存在する。
――――その一人が勇者パーティであり人族最高峰の魔法使いであるイヤリスという少女である。
魔法に対して疑問を持つ者は、等しくその魔法の素となる魔力を追求する探求者であり研究者だ。
考えては結び付けて、悩んでは解を探す。
そして彼女――――イヤリスはその中でも異例な存在であることは王都に知れ渡っている。
十五……つまり成人したばかりの年齢から、既に歴史に残るような研究結果を残した者だからだ。
それが、
「あぁ……いいわ。最っ高! 思い描いた魔法を使えるって、まさに神になった気分だわ!!」
選んだ対象から魔力を吸収する力。
厳密に言えば、選んだ対象と魔力での繋がりがある場合強制的に魔力を強奪する能力だ。
「まだまだ吸収できるッ! やっぱり魔族ってのは実験にもってこいね!」
狂気を孕み、高揚を隠し切れていない。
これが探し求めていた存在を見つけた魔法師の本来の姿。
「そいつは魔族じゃねぇ……よ!!」
隠し切れない感情の昂りの隙間に潜り込むように、バルファはイヤリスの首元に刀を振るう。
だが、
「見えてるよ? バル」
フリートはいとも簡単に弾いて見せた。
その弾き合った剣戟の圧が周囲にある木々を大きく揺らす。
「なぁ……もう止めないか?」
「ふざけんな」
「このまま続けて君が勝てる未来はないよ。この後ろにいる獣人と魔族は直に死ぬ、君の後ろにいる役立たずの女だってゴーンが動いていれば死んでいる。そして君は僕たちに歯が立たないじゃないか、どうしてここまで戦おうとするのか分からないよ」
「戦う理由……?」
「そうだ。僕たちは魔王を殺す義務がある、だけど今の君には何もないじゃないか。僕たちといた時は同じ目標を掲げていた、だから強かった…………でも、今の君は弱いよ」
掲げられた勇者の象徴とも言える希少な歴戦武具は、夜を反転させてしまえるような強い輝きを放つ。
「まぁ、僕たちが強くなったのもあるけどね。その力を今――――見せてあげるよ」
無造作に、ただ腕を払うようにして振られた剣はバルファの目の前で軌跡を描いた。
その瞬間――――天と地を引き裂かんとする斬撃が亜人国家に向かって放たれた。
「…………ッ!!」
ヤバい! 一歩で遅れたッ!!
木々を押し退けるように大地と並行に走り続ける斬撃に向かって、バルファはたった一歩遅れて地面を蹴った。
「良いのかい!? 君がここを動けば……全員死んじゃうよ?」
そのフリートの言葉で、更に一歩遅れる。
破壊が広がる大地、威力が弱まることのない力。
それは例えユーリシスの魔力障壁であろうと、ジャバウォックが放つブレスだろうと弱まりはしても止まることはない。もしくは、無事では済まないだろう。
「…………」
ふと、入り口で待機しているアレフィティナを見る。
ふと、拘束魔法で繋がれた二人の家族を見る。
考えがまとまらない。
それなのに思考は止まらない。
未だに、『どちらも救えるだろう?』と訴えかけてくる。
何か方法はないか?
そう考え始めれば余計に思考の闇へと誘われていく感覚…………
「(何かないかッ? 何か……ッ)」
呼吸がしにくい。
何から何まで狭くなって、いずれかは逃げるように意識が落ちる。
そんな感覚を――――知っている。
どうすればいい……どうすれば――――両方を救える?
「〈解放〉」
バルファが歴戦武具から引き出せる、たった一つの力。
――――霊剣アマノハバキリ。
「――――させるわけないでしょ!!」
王都を真っ二つにしたと言っても過言ではないその一撃を放つために爆発的に闘気が収束していく様子に、イヤリスが即座に反応を示して拘束魔法をバルファに放つ。
当然魔力を持たないバルファには魔法というものを防ぐ術はない、あまりにもあっけなく拘束魔法によって体の動きが止まってしまう。
「…………ッ!!」
「終わりだね」
フリートの呟きと同時に放たれた斬撃が亜人国家に直撃――――
「『全く……――――あれほど私の■■■を幸せにしなさいって言ったでしょう?』」
する、直前に放たれたはずの斬撃は霧散する。
いや……まるで、元々そんなことが無かったかのように消滅したのだ。
「何者だ?」
怪訝そうにつぶやくフリートを無視して、彼女はバルファの方を向いて……
「『ほら、起きなさい。■■には私を幸せにする義務があるの』」
脳を直接刺激してくるほどの透き通った誰かの声に反応したバルファは、ただ茫然とアレフィティナである者を見つめていた。
「『起きて……君が泣かせた私を、笑顔にするために』」
◆
「待機しててくれ」
そう言われてしまえば、私はそうするかないのだろう。
だって私は何も出来やしないから。
ただ見ているだけ。
後ろで、守られながら、ただ一人を見ていることしか出来ない。
激しい戦いをしているわけではないのに息が上がっていく背中を、徐々に潰されていく選択肢の中で最善を選び続けて戦う勇姿を…………
生まれてからこれまでの人生に、良いことなど一つもなかった。
誰もいない場所でなら、私は独りで生きて来たと言えるだろう。
「そんなわけない」などと綺麗事を言う者たちとは、まるでかけ離れた場所で生きてきたのだから。
だけど、辛い、苦しいなんて一度も思ったことはなかった。
いくら貧しくても食べる物はあった。住む場所もあった。着る服もあった。やることがあった。
大変ではあったが心が痛むような窮屈なものではなかったと言える。
それは偏に独りでも生きていけたからだろうと、今になって強く思う。
でも――――彼の背中を見ているだけというのは酷く胸が痛い。
どれだけのことをしても結局は普通。
戦うこと以外のことしか出来ない私は、戦う者がいる場所にはいてはいけない。
〝聖女〟などと崇められようが、私のような〝弱者〟は〝強者〟の隣にはいてはいけないのだ。
支える。
そんなことを言っても、私如き〝弱者〟では〝強者〟である彼を支えることなど出来やしない。
この何とも言えない寂しさに、
この果てしない解放感に、
この閉じることのない心の空白に、
名前を付けるのなら、これを無力と言うのだろう。
「(私はやっぱり……置いて行かれれば良かったんだぁ)」
心で呟いた言葉に胸が苦しくなる。
視界が潤む資格も、無力さを嘆く資格も、こみ上げる悔しさに歯を食いしばる資格もないのに……体は勝手に反応してしまう。
気を抜いてしまえば意識を手放してしまうほどの喪失感。
止まらない涙をふき取ることもせずに…………ただ彼の背中を見つめ両手を合わせる。
あぁ……神様、お願いします。
彼に、私を救ってくれた彼に、幸運をお運び下さい。
私の身がどうなろうと構いません。
彼の代わりになるのなら、いくらでも代わりになりましょう。
もう私は幸せです。きっとこれ以上の幸運は、これから先に訪れることはないでしょう。
『そんなわけがないでしょう?』
「…………ぇ?」
どうしてだろう? 溢れていた涙を、体が勝手に止めた。
『彼にはね、私と貴方を幸せにする義務があるの。そういう運命にあるの』
何でだろう? 貴方は誰ですかと聞くまでもないこの不思議な感覚は……。
『だから貴方は諦めてはダメよ。彼を信じる、彼を信じ続けるの……でも、今回は力を上げる。毎回のことだけど、彼は寝坊助さんだから』
困ったなぁ、と言いながらも嬉しそうに笑う誰かが脳裏に浮かんだ。
『少し借りるね?』
ゆっくりと染み込むように広がる温かさが心地いい。
焦る気持ちをゆっくりと静めていく安心感が、自然と表情に笑顔を作っているのか…………
「『さて、まずはちょっと場を落ち着かせないとね』」
彼女はフリートが放った斬撃を視界にいれると、まるで煙を吹き飛ばすような感覚で払いのけた。
誤字・脱字かもなぁって思ったら教えて貰えたら嬉しいです。
あと久しぶりにアクセス解析みたいなやつみたら意外と見て貰えてて嬉しい。
どっかのカードゲーム実況者のようにやる気が出ました




