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追放された仲間を庇ったら、いつの間にか結婚してた  作者: 豚肉の加工品
運命覚醒 Ⅲ
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大嘘結婚  5

気合!!


誤字あったらすまぬっ!!

潮風が運ぶ錆びた鉄のような香りが広がる大海原。

どこを見ても青で覆われている光景を眺めること三日間――――ようやく目的の場所に到着した。


「さぁ、これから大変だ」


独り言のように呟くユーリシスの背には二人の人族が笑顔で会話を弾ませていた。

亜人国家ファランクスの英雄……そして、その花嫁。

バルファとアレフィティナである。


「……相変わらずの能天気さ。どれだけ冒険しても変わらないな」


このヴァーテクスには亜人たちの中でも選りすぐりの戦士が乗り込んでいる。対処不可能とされる〝龍〟と呼ばれる存在以外ならば、簡単ではないものの切り抜けられるだろう。

それほどまでに戦闘することに長けた者たちばかりなのだ。

だが、それでもバルファは抜けている。もはや天と地と言っても良いほどに別格だ。

言ってしまえば、バルファの場合は〝龍〟でなければ歯牙にかけることすらないだろう。


「なぁ、ユーリー!」


「ん?」


そんな彼が未だにここまで純粋な笑顔を持っていると考えると、未だに時が止まっているようにも感じてしまうのは年のせいにしてしまいそうになる。


「みんないるかな?」


「ふふ、全員はいないだろうな。ただこちらに向かって来るかもしれないが」


「向かってくんのか? なら会いたいなぁ」


「(未だに自覚なし…………いや、自覚していない方がいいか)」


彼の長所は良く知っている。短所だっていくらでも知っている。

今まで数々の人族を見てきた。

誰しも大人になるまでに心の成長を整える、子供心というものをどこかに隠して目の前に現実に立ち向かうために靴を履き替えるのだ。

冷静沈着という言葉が子供に当てはまらないように、天真爛漫という言葉を大人が使うには言葉からも少し落ち着きがないように見える。

生きるということは変化し続けるということ。

だが――――


「……変わらないな、お前は」


バルファの成長が早いと感じるのは自身が長寿の種族だからということを差し引いても早いものだった。それでも昔から変わらない。


「ほら、行くぞ。積み荷は心配しなくてもいいが全員がお前の帰還を待ち望んでいる」


「それは俺も同じだよ」




波に揺られる旅は、懐かしい匂いと共に幕を閉じた。

たった一歩扉から出れば記憶に響いた。

一度は見たことのある船着き場、ヴァーテクス専用に改築されているそれは人族の場所とは比較にならないほど広い。

常に誰かが動き、常に機械が動作し、常に積み荷が入れ替わる。延々とまで思える止まらない人の動き。

唯一その時間を止められるとするのならばヴァーテクスの帰港時のみ。

整列まではしなくとも手は止めて舩を見る。

仕事をしながら誰しもがいつも通りを繰り返していた瞬間――――


「あれ?」


鼻が利く獣人の誰かがそんな言葉を船へと向けた。

それは船に近ければ近いほど、船へ振り返る者が増えていく。

強く、それは何事よりも深く刻まれた記憶。

思い出すだけでそこに戻ったかのように錯覚し、身体が小刻みに震え恐怖する感覚。

だがその恐怖を綺麗に払拭した一人の人物がいた。

その匂いは獣人にとって忘れられないものになっている。もちろん記憶能力が極めて良いエルフも同じく、記憶に体に残る安心感のようなものを感じ取った者たちは手を止める。


「いやいやぁ、そんな……まさか」


「だよな? 今頃は勇者と一緒に魔王討伐に向かって――――――」



「皆、ただいま」



誰しもが疑問符を思い浮かべていると、ヴァーテクスからはいつものメンバーが顔を出した。

「なんだ、やっぱりいつも通りじゃないか」

「お疲れさん」

「おかえりなさい。無事で何よりです」

誰しもが、というより海に近い者ほど感じ取っていた懐かしい空気はユーリシスの帰還によってかき消されていく。

やっぱりいつも通りの日常だ。

そうだ、あいつが帰ってくるわけがない。

そう全員が確信してしまいそうになった瞬間、このヴァーテクスを操る者たちの筆頭であるユーリシスの背後から人影が現れた。


「おぉーい!! ただいま!!」


真っ黒な鞘を腰に差し、長い髪を頭の後ろで結い上げた青年が全力で手を振っていた。

亜人で……というよりも亜人国家ファランクスでは知らない者はいないほどの有名人。今も尚語り継がれる彼の伝説は〝力〟というものを称賛する獣人の王が直々に語るほどのもの。

それを信じ付ける戦場の跡地は、今では良い観光場所になっており亜人国家ファランクスに入国するために通る広大な平原の全体がそれである。

もちろん、ここにいる全員が知っている。

だが、だからこそ声が出なかった。


「お、おーい、どうしたんだよ! 何で全員俺のこと無視すんだよ!!」


バルファは恥ずかしさと悲しみが混ざり合ったモヤモヤする感情に支配され、思わずヴァーテクスの上番から港へ飛び降りる。


「そりゃ驚くだろ……」


「ねぇ?」


バルファに続いてハバンとユーリシスもヴァーテクスから降りると、乗務員が笑いながら続けざまに降りてくる。

前方には荷物を持ちながら茫然と立ち尽くしている獣人の目の前で手を振っているバルファの姿。

相手に至っては口をポカンと開きながら、ある人物を見つめていた。


「お、おい――――――」


「バルファァァ!!」


「うおっ!」


目の前で小賢しくも降られていた腕を無視し、突然大声で叫び出す獣人の男――――名はエイヴ。

白豹族と言われる白くサラサラとした毛が特徴的な種族であり、彼ら種族もバルファに救われた者たち。

バルファも彼らが経営している宿泊施設に寝泊まりしていたことから仲が良い。

たくさん会話を繰り返した。

長い時間バルファという人物を見て来た。

だからこそ(・・・・・)、エイヴは大声で叫んだのだ。


「お前……ッ、お前ぇ!!」


「な、なんだよ…………どうした?」



「いつガールフレンドなんて出来たんだぁ!!」


筋骨隆々な男たちは一斉にヴァーテクスから降りてきているアレフィティナを凝視する。


「…………?」


日常では、ぽわぽわとどこか抜けているような優しすぎる男。

戦いでは、殺伐とし味方すらも身震いしてしまうほどの強烈な恐怖をまき散らす男。

どこで何をしているのか? そんなことを考えながら観察してみれば常に剣を振るっているような修行馬鹿でもある。

故に――――女の気配なんて微塵も感じないような少年だったのだ。


「う……うぐぅ、おではぁ! おではうれじぃぞぉ!!」


そんな彼を知る者たちならば、そんな彼を見守っていた男たちならば涙を流さざる終えなかった。

ここにいる者たちだけに限らず、バルファが女を連れて帰って来たと伝えれば亜人国家ファランクス全体が歓喜するだろう。

夜の街に誘っても断られ、男を宛がえば逃げられ、自分の愛娘を紹介すれば「お前の娘なら良い奴そうだ」なんて言われて気が付かない。

この亜人国家ファランクスを収めている王ですらも、そんなバルファに頭を抱えていたのだ。


「お、おいおい……何がどうなってんだ?」


「はぁ…………少しは察したらどうだ」


「ユーリー?」


エイヴや他の者たちの喜びの絶叫の渦中にいたバルファは、いつの間にか積み荷を卸し始めている背後に一切気が付かずにいたようで、真後ろにはユーリシスが立っていた。


「それほどまでに今のお前が珍しいんだよ。これでもヴァーテクス内でも話題になっていたんぞ? お前はずっと外にいたがな」


「そ、そんなに以外か? 俺の隣に女の子いるのって」


「それはそうだろうよ。というより以外とかそんな問題じゃないんだよ、お前自身に自覚がなくともバルファという男は亜人の英雄であり救世主だ。そんな存在が隣に女を連れて帰って来たとなったら、嬉しいだろうさ。それにこれはお前自身にも問題があるんだぞ?」


「俺にも?」


「この国では修行しかしてなかっただろう? たった一本の剣を毎日のように振るって、水溜まりが出来るなんて日常茶飯事だった男が連れて来た女だぞ。そりゃ皆んな喜ぶだろ、あぁとうとうバルファも結婚かって」


ふと周りを眺めてみる。

女性陣は変わらずアレフィティナの下へと集まり始め、楽しそうに会話している。

男性陣は……特にエルフ族である彼らは契約召喚獣まで使って「バ、バルファが女性を連れて来たぞ!!」なんて報告している。

獣人たちはもう宴会の用意をしているし、ドワーフたちは記念の銅像を建てる会話を弾ませている。


「(あぁ…………そう言えば、忘れてたなぁ)」


郷にいては郷に従え。そんな言葉があるけれど、人間というものは結局のところ郷に入ってしまえば従わざる終えない状態に体を造り替えられていく。

今までは亜人という存在が周りにいて、毎日が自由に明るく暮らせていたというのに勇者パーティに入ってからは真逆のような暮らしをしていたことを思い返す。

そして、それに体が適応していき慣れてしまっていた。


〝忘れていた〟


そんな言葉が内心で呟けるほどに、自分の心が自由から程遠くなっていることに気が付いた。

獣人は明るく自由に暮らしている。

エルフは楽しそうに研究をし続ける。

ドワーフは酒を呑み笑いながら道具を鍛錬(つく)る。


「改めて、帰って来たなぁ……」


「――――あぁ、おかえり」


その小さな呟きにユーリシスは囁くように返事を返した。


「バ、バル!! ちょっと、助け――――――」


「……あははは!! あぁ、今行く!!」


質問攻めに会っているアレフィティナを助けるためにバルファは走った。

誰しもが楽しそうに、愉快に笑っている。


「(師匠、ディエラ、リル。俺は帰って来たぞ……)」


強く、そしてどこか不思議な雰囲気を醸す師匠ならもう知っていることかもしれない。

賢く、聡いグロディエラならもう待っているかもしれない。

快活で勘の良いリルフェンなら港を抜けた先まで向かって来ているかもしれない。

そう勘繰られていることが嬉しいと思えるようになったのは、ここが故郷だからか……。


「お前ら、僕はジャバウォック()に報告してくるからな。どうせすぐに街に呼ばれることになるだろうから二人を離しておいてくれよ」


そう言い残してユーリシスは亜人国家ファランクスへと転移していく。

これから始まる物語のあらすじのようなことを、この国の王に報告しに…………。


続きは来週にでも書けたら書きます、

ようやく、ほのぼのを書けるところまできたかもしれないかもしれないんだ……


勇者たちが勝手に行動しなければ、ね?

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