大嘘結婚 4
この頃はハプニングの連続で投稿が出来なく申し訳ない。
亜人国家へと到着まで残りも数十時間となった今、高らかな笑い声や喧騒とまでいかない騒がしさが船内では賑わっていた。
「そうだ! 飲め! もっとだぁ!!」
人族の街では見たこともない大きさのジョッキに並々と注がれたビールを一気に飲み干し、一体には歓声が沸き起こる。
「オラぁ!! オメエも飲むんだよぉ、バルファ」
「お、俺は酒は飲めないんだって! 何回言わせんだ、バロック」
ヴァーテクス船内に積まれた荷物の分別及び確認をしているエルフ族の中でも大柄な男、バロックは自分が飲み干したジョッキを隣に座るバルファの目の前に叩きつけるように置く。
「なぁーに言ってんだよ、こういう時に飲まなかったらいつ飲むんだよ!! シャロ!! もう一杯だ!!」
「飲みすぎだよ、父さん」
船員たちの衣食住の全てを管理している女性陣の中の一人、双子の姉を持つシャロルは厨房から顔を出すと腕をクロスさせて「もうダメです!」と主張する。
因みに、その背景に映る妹のシュルルは指先に魔力を収束させておりバロックの意識を飛ばす準備を完全に終えている状態だった。
「そ、そうか……」
二人の娘の圧力にあっけなくも屈したバロックはテーブルにあった食べ終わった食器を魔力操作によって浮かし上げると、
「悪いなバルファ。俺はこれ以上娘たちに怒られないように寝るとするわ」
そのまま食器と共に厨房に向かって非常にゆっくりとした足取りで向かって行った。
まるで戦いが終わった後のような静けさと共に、バルファは一息心を休ませる。
それから間髪入れずに席に座ったのは、ヴァーテクスの中でも権力を持った二人……
「大変だったね」
「…………肉、持ってきた」
ユーリシスとハバンだった。
「意外だな、お前らは酒飲んでないのか」
長寿であるエルフは長年培ってきた酒への耐性があるために非常に酒に強い、また獣人は体が強いために酒豪と言われる種族でもある。
その二人が素面の状態でいることに少し驚いた。
「当然……と言っても、伝わらないか。これは僕が勝手に考えていただけのことだからな」
「俺も…………聞きたいことがあった」
「……奇遇だなぁ。俺もちょっと分からないことがあってよ、聞きたいことがあったんだ」
偶然にもここにいる三人が疑問に思っていることがあったようで、すんなりと席に座った。
「バルファ、ハバン。まずは僕から話すことを許してくれ」
「「いいぞ」」
「聞きたいのはバルファ、君についてだ」
「俺?」
「僕の記憶と今の君との不一致なことが多すぎてね、聞きたいことが山ほどあるというものだよ。まずは……そうだな、君は暑いのが苦手じゃなかったか? 平和大陸を出港してから四六時中、炎天下に晒されていたけど体に異変はないか」
「…………確かに」
肉を頬張りながらユーリシスの言葉に頷くハバン。
それもそうだろう。彼の記憶の中では暑さにやられて一歩も動けなくなっている過去の自分が脳裏を過ぎっているはずだ。
「いやぁ、それがさ。ティナと一緒に王都から出たって言ったろ? それからずっとティナとは一緒に行動してたんだけど、それからまるで暑さを感じないんだよな。何て言えばいいんだろうなぁ……暑いは暑いんだけど体が怠くなったりとかはしなくなった」
「……そうか。なら、バルファとアレフィティナを繋いでいるものに関してだが、気が付いていたか?」
「繋いでるもの?」
それって精神的なもの?
なんて野暮なことを聞くのも憚られることなので、グッと口を紡ぐバルファ。その様子に対してユーリシスは少し首を傾げるものの会話を続けた。
「そうだ。強い思いで繋がれた者たち、正しく相思相愛の繋がり……それは前世や自らの起源の時から繋がっている決して解けぬ〝運命の鎖〟。エルフ族に伝わる神々の文献では『赤縛の生鎖』と呼ばれるもの。ようは運命の赤い糸の真実だ」
「なんだそれ、そんなのあったのか?」
「僕も初めて見た、バルファたちの姿を見なかったら思い出すこともなかったようなものだ。詳細は簡潔、〝二人は繋がっている〟という過去進行形の事実のみ。だからこそバルファの結婚を疑わなかった」
「……つまり、バルとティナが繋がっているから暑さに耐性が出来たってことか?」
ようやく皿の上にあった大量の肉を胃袋に収めたハバンが突拍子もないことを呟くと、いつもなら事実を訂正しがちなユーリシスが渋々と言った感じで返事をした。
「まぁ、不可解で謎に包まれてはいるがそういうこと……という解答以外はないだろうな」
あまりにも少なすぎる情報量に蟀谷を抑えるユーリシスのその姿は、知識への追求を励むエルフそのものの姿であった。
だが、その様子に探求心は感じられない。
この赤縛の生鎖という事実は珍しい、貴重、特殊、そういった類の問題ではない。
そこにないものが、突然現れた。語られていた伝説が目の前に突然存在した。
そんな事実だけが情報としてそこにあるだけなのだ。
いくら記憶能力の高いエルフといっても、理解しようにも出来ないことが起きれば呆れ果てるというものだ。人間なら考えるのを止めるだろう。
「…………まぁいい。とにかくだ、今日中に亜人国家に到着するんだ。師であるウォーレイと、共に暮らしている者たちにしっかりと報告するんだぞ?」
「そ、ソレハ……モチロン」
本当は結婚していないんだよ。
ただ平和大陸から抜け出すために協力してもらってるだけなんだ。
ヴァーテクスを出たら真っ先に家に戻って状況説明だけするんだ。
皆の間で結婚した事実を広められると、止めるはずだったものが止められなくなるかもしれない……。
「ん?」
「あぁ……いや、ちゃんとするよ」
特に――――――――
「俺の妹には絶対だぞ? あいつはお前を番にしようとしてるんだからな」
「あ、あぁ…………」
ハバンには二人の妹がいる。
一人はこのヴァーテクスで女性陣の頂点に立ち、野郎共の全てを支えているジュエリー。
もう一人は今頃亜人国家の自宅でゴロゴロと寝転んでいるであろう者。
「リルフェンにはちゃんと説明するし、全員にちゃんと言うって。特に(結婚をしたと)勘違いしそうな奴らにはな」
「頼むぞ、バル。今は俺の家族とお前らだけがリルの居場所だからさ……」
「任せろ。ハバンたちと約束したことはしっかりと守る」
それから、夜が過ぎるのは早かった。
本来ならばティナとこれからの対策を練る予定だったのだが、珍しいことに飲酒したアレフティナは先に女性陣に連れられて部屋を出て行ったようでバルファは即座に部屋に戻って眠りについた。
その日は…………懐かしい夢を見た。
◆
草の香りが鼻を通り抜ける。
それと同時に口の中は鉄の味がした……。
視界に映ったのは一本の刀身。
一目で切れ味が伝わるようなギラギラとした刃の矛先は、自分に向かっているようにも見える。
『心、技、体。それだけじゃ足りねぇよ……』
心では支えきれない情がある。
技では補えない力がある。
力では防げない技がある。
そう言われ、口内にある血の噛み締めるように飲み込んだ。
『柔よく剛を制す? 極みの頂点は言葉じゃぁ語れねぇ。――――ん? 俺が手に入れた答えはって?』
それは……〝無〟だ。
心を殺す。
有無を言われない技で殺す。
理不尽を覆す力で圧し潰す。
柔なんていらん、剛もいらん。
そんなことを思っている時点で、手前はそこにしか立ってねぇんだ。
『これからお前は間違いなく強くなる、世界でもお前を止められる奴なんていないくらいに強くな。そのためにゃぁ…………まずは何をする?』
答えは————————
少しでも「早く投稿しろや」って思った方がいたのなら、感想欄にでも叩きつけてくれ。
ドМだから頑張るかも……




