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第4話

 話が少なからず戻りかねないが、米内松江は、1957年春に東京女子医科大学に入学したのだが。

 此れはそれなり以上の代償を、松江にしてみれば、支払った上でのことになった。


 今の松江の両親の米内仁や米内藤子が、松江の進学希望に決して冷たかった訳では無いのだが。

 更に言えば、松江の進学希望に、実の両親の米内洋六や米内久子は、それなり以上のことをするつもりがあったのだが。


 第二次世界大戦時の経緯から、松江は洋六や久子からの援助を、出来る限りは受けたくなかった。

(この辺り、松江にしてみれば、意地になっていたのも、否定できないことだった。

 それこそ自分が乳幼児といえた頃に、自分の異母姉にして、今の養母になっている藤子に、自らの実父母は面倒を押し付けることになったとは。

 幾ら戦時だから、仕方ないと言いつくろわれても、松江にしてみれば、実の両親が自分は捨てられて、異母姉が面倒を看てくれたのだ、と考えざるを得ない事態だったのだ)


 その一方、第二次スペイン内戦終結に伴って日本に帰国した後も、仁は戦場経験のある海兵隊士官として、重宝される事態が起きていた。

 更には、この頃から深刻化しつつあったアジア及び旧ソ連各地での民族、宗教間の紛争、及び独立戦争に、それなりの対処を日本政府や軍、特に海兵隊は強いられていた状況から。


 徐々に仁のアルコール依存症は深刻化しつつあり、藤子や松江、洋一は出来る限りは、戦場から帰還する度に仁にアルコールを飲ませないように努めつつあるのが、現実の話だった。

 そして、仁が完全に重度のアルコール依存症患者になって、入院を余儀なくされる事態にまで、何れは至るでは、と藤子や松江らは懸念しつつあるのが現実だった。


 そんなことから、そういった事態に突入しても、養父の仁を救えるようになりたい、と松江は医学部への進学希望を前にして、色々と調べた末に。

 東京女子医科大学の予備役軍医士官養成課程を志願して、松江は合格する事態が起きたのだ。


 だが、これはそれなり以上の代償を伴う代物だった。

 予備役軍医士官養成課程ということにはなっていたが、実際には御礼奉公として、軍医士官の資格を得た直後に応召されて、外国の戦場に派遣されるのが、卒業生の通例といっても過言では無かった。


 それなのに、予備役軍医士官養成課程が人気があった背景だが。

 まずは軍医士官養成課程ということから、授業料が完全免除されているというのがあった。

 更には小遣い程度に過ぎなかったが、将来の軍医士官が少しでも勉学に励めるように、ということで、給費制の奨学金が申請すれば貰えるようにもなっていた。

(尚、軍医士官に不合格になった場合、勉学に励まなかったとして、奨学金の返還を求められることにもなってはいた)


 そんなことから、副業、アルバイトをせずに勉学に励むことが出来る、として予備役軍医士官養成課程は(この世界では)それなり以上に人気があり、倍率も高い事態が起きていたのだ。


(更に言えば、所詮は軍医士官という側面もあった。

 軍医士官なので、余程の事が無ければ、後方勤務が約束されているからだ。

 実際に一般の兵や下士官、更には兵科士官と比較した場合、軍医士官の方が圧倒的に戦死傷率は低い現実があっては。

 軍医士官になった方が良い、と考える面々がそれなり以上に居たのだ)


 その一方、未だに戦場の過酷さを知らなかったのもあるが、松江にしてみれば、養父が赴いている戦場の臭いを現場で感じることで、養父の苦悩に自らが寄り添い、又、養父の治療に役立つのではないか、とも考えたのだ。


 そうしたことまでも考えあわせた上で、松江は東京女子医科大学の予備役軍医士官養成課程に合格したのだ。

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― 新着の感想 ―
 軍医が後方勤務で「勝ち組」めいた処世術ぽく松江さんに思われてるのは、このカナリス提督の改変世界で日本陸海軍が戦力を払底するほどの窮地=大敗北に陥っていないからでしょうね(´・ω・`)ひたすらに敗北の…
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