第2話
そんな経緯から、米内松江は、米内仁と藤子夫妻の養女になったのだが。
第二次世界大戦の後継戦争と言える第二次スペイン内戦、更に其れに触発されて起きたと言えるソ連を相手の第三次世界大戦の影響は、米内家に大嵐をもたらした、としか言いようが無かったのだ。
本当に皮肉極まりないことだが、松江の実母の米内久子は、第二次世界大戦勃発までは、完全に市井の民間人に過ぎなかった、と言われても過言ではなかったのだが。
第二次世界大戦勃発に伴って、実の娘の松江としては、幾ら何でも乳飲み子の実子を捨ててまで行うことではなく、実母の久子の行動は愛国心からの行動だと信じたいのだが。
養母の藤子や養父の仁の言葉を信じれば、今では元は日本海軍の軍人で、スペイン空軍の軍人になっているジュンイチ・メンデスの妻になっているカテリーナ・メンデスが、第二次世界大戦勃発前の頃は松江の実父になる米内洋六と肉体関係を持とうとしており、洋六は全くなびいていなかったのだが、久子は邪推して、カテリーナと洋六の関係を阻止しようと、当時は補助部隊だった海軍の女性部隊に志願したとのことだ。
(尚、久子に言わせれば、
「藤子や仁の邪推にも程があるわね。私は本当に祖国日本の為に、海軍に志願したのよ」
と弁明している一件なのだが。
松江が久子に問い質した際、久子は少なからず目を逸らす有様だったし。
洋六でさえ、
「実母(の久子)がそう言うのを、娘ならば素直に信じてやるべきだ」
と目を逸らしながら、自分にいう有様だから。
松江は真実は、養父母の言うことが正しい、実母の久子は、自分の母という立場よりも妻の立場を優先したのだ、と確信している案件で、それもあって、松江にしてみれば、自分を懸命に育ててくれた藤子が母であり、藤子が夫として選んだ仁を父とすることに、自分はしたのだ)
だが、久子は軍人として、というか、航空機の整備員としては秘めた才能の持ち主でもあった。
航空機の整備員になった久子は、年齢等から特進したというのは完全に否定できない話だったが。
そうは言っても、当時の海軍航空隊の整備兵としては、トップクラスの腕の持ち主として、出世していくことになったのだ。
それこそスペインで映画化されて、日欧米諸国で公開されて評判になった
「ヒトラー総統を暗殺せよー英領パレスチナ、ユダヤ人航空隊によるベルリン爆撃行」
に出て来る米倉寿子曹長のモデルになったのは、久子だったのだ。
映画ということで仮名処理等がされてはいるが。
(この世界の)史実で行われた1942年に行われたユダヤ人航空隊によるベルリンの総統官邸に対する爆撃、暗殺作戦において、ユダヤ人航空隊は日本海軍から提供された特殊爆弾、800キロ徹甲爆弾をP38に搭載して作戦を断行することになったのだが。
とはいえ、急きょ決まった作戦の為に、爆弾を搭載できるように改造するのも大問題になった。
それを短時間でやってのけたのが、米内久子(映画中では米倉寿子)達だったのだ。
第二次世界大戦終結後も、その腕が高く評価されたことから、退役するどころか、下士官から准士官に、更には正規の海軍士官にまで、久子は出世していくことになった。
実際、降伏後のドイツの軍用機の整備等を行うだけに止まらず、ドイツ等の技術を習得することで開発された日本初のジェット戦闘機「橘花」の初飛行時の整備等にも、久子は関わって、無事に成功に導いているのだから。
久子が所属していた女性から成る整備兵部隊について、とある作家が、
「飛べ、ジェット戦闘機。それを成功に導いた日本で生まれ育った魔女整備隊」
という表題の本を出版したのも当然としか、言いようが無い部隊だったのだ。
話中に出て来るジュンイチ・メンデスですが、言うまでもなく笹井醇一のことです。
二人は戦争終結後に結婚して、スペイン人に帰化し、スペインを二人の新たな祖国にしたのです。
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